半分くらいしか読めなかった。なぜかって、これから書く。「探偵」小説は小説である。もっとも「探偵」という変数はミステリー小説、推理小説、ハードボイルド小説、犯罪小説等と置き換えてもよい。
小説の最低条件は読ませるだけの文章力、展開のなめらかさ、中心人物(探偵小説の場合は探偵、場合によっては犯人)のキャラの印象的な創出(あえて魅力的とはいわない)などであろうか。
黄色い部屋の秘密はこれらの条件を満たしていない、とても最後まで読めない。
文章のつたなさは弁解のしようがない。これが原文のせいか、翻訳のせいか特定できないが、翻訳だけの責任ではないだろう。
長い時間をかけてやっと半分まで読んだがもう駄目である。一回に5頁、10頁読む。ほったらかしておいて時間をおいてまた取り上げて1頁読んで投げ出す、てな調子で200頁当たりまでたどりついた。
最初の1、2頁に次のような表現が出てくる。
「奇怪極まる事件
「もっとも不可思議な探偵事件
「不可思議にして残忍かつセンセーショナルな
「奇々怪々な事件
「全世界の人々が
「かってわが国の警察の慧眼な洞察力に委ねられ、また裁判官達の明識に訴えられた物のうちでもっとも難解な
「全世界の人々の目に映じた
等等、、
小説はこうした事柄を訴え、あるいは読者に印象づけるために、こうも芸のない露骨な表現を羅列して使うことをしてはならない。たくみな、そして平明な表現をもって読者にそのような印象を与える能力が小説家の技である。こういう小学生向けの直裁な表現をわずか1、2頁のうちに満載するなど問題外である。
創元文庫880円、読書に費やした時間(時給800円で計算しても大変な金額になる)のもとをとる(?)ために批評が厳しくなったことをお許しください。投下したコストに見合った批評の権利を行使したことをご理解ねがいます。