Yの悲劇を130頁当たりまで読んだ。わりとスラスラ読める。冒頭は今まで読んだ中ではすぐれているようだ。ただ探偵ごっこの「もと」シェークスピア俳優が出てくるあたりから無味乾燥になる。
この本は新潮文庫で読んだ記憶があったので今度はハヤカワにした。ところが読んでみてまったく思い出さない。もしかしたら前に読んだのは「Xの悲劇」のほうだったかも知れない。
ところで江戸川乱歩10選も8冊目になるが、本格というのは警察の他にアマチュア探偵(もどき)が出てくるのが特徴である。作者達はどうだ、と胸を張って工夫しているつもりらしいが、むしろ逆効果が多いようだ。興味索然とすることが多い。
振り返ってみると(順不同);
Yの悲劇 引退俳優
ナイン・テイラーズ 貴族探偵(部屋住み貴族、すなわち次男)
赤い館の秘密 出来合い素人探偵
帽子蒐集狂事件 高等遊民、ディレッタント
僧正殺人事件 高等遊民、ディレッタント
黄色い部屋の秘密 記者
赤毛のレドメイン 引退探偵
樽 現役探偵
つまり、警察と独立に、そして警察と親善関係にあり、警察が御指南を仰ぐという恐ろしく非現実的な探偵を作らないと、本格ものは書きにくい宿命にあるらしい。元本職、本職の私立探偵は最後の二冊だけだ。
これは本格の宿命か特徴か。弱さか強さか。こう型にはまっていると宿命かな。クリスティ、ベントリー、も素人探偵じゃなかったかな。もっともクリスティは何人かの探偵を使い分けているから「もと」探偵もあったかな、ポワロがたしかそうだ。
Yの悲劇、もう一山くらい盛り上がってくれるといいがな。