穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

村上春樹『1Q84』文庫版5

2012-05-29 09:57:24 | 村上春樹

単行本1、2はとっくに処分してしまった。内容もきれいに忘れた。しかし、文庫版5を読むのにどうという支障もない。そういう小説である。

一般小説家(つまりエンタメ作家より腕がたしか)が書いた一種のマンハント小説かな。

犯罪小説というのではない。犯罪小説『味』である。

ファンタジー小説ではない。ファンタジー小説『味』である。

SF小説ではない。SF小説『味』である。

一般小説家であるから、特定分野に特化したジャンル小説家より腕は確かだし、さして退屈もしないで読める。

以上は文庫本5の200ページ当たりのポジション・レポートである。

緊迫感はないが、長編であるからしょうがないかもね。

村上春樹氏はチャンドラーの翻訳なんかよかった。オイラはむしろ翻訳家として評価しているのだ。英米小説の翻訳家として翻訳するかどうかは別にして、いわゆるSF、スリラーの類は相当読んでいるようだし、その分野のテクニックも援用しているようだ。

ま、地の文がエンタメ特化作家よりはるかに腕が上なことは確かだ。あとは630円かける6冊の原価をどう評価するかだろう。