穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

へえ村上春樹ファンって

2013-10-19 09:59:18 | 書評

毎年ニュースでやるから目に入ってくるんだが、ノーベル文学賞発表の前夜バーだか、居酒屋にファンが集まって気勢をあげる。どうなんだろうね。奇異な感じがするだけだ。女性なんかオーバーサーティかミッドサーティの女性が和服なんか着こんでいる。

女性の和服姿というのはよほどTPOを考えないといい感じがしない。この女性ファンはそれほど嫌な印象をあたえないが、ちょっと妙だ。

それで思い出したんだが、日曜かな、TBSかな、朝のテレビの報道番組に大学教授とかいういい年をした女が毎回、白塗り、真っ赤な口紅、和服で出てくる。卑猥な感じがするだけだ。過激派がばあさんになったようなことを言うだけなんだがね。余計アンバランスがめだつ。

さてと、マクラが長くなりすぎた。村上受賞祈願前夜祭のニュース中継だ。ファンのひとりが村上春樹のおすすめベストスリーを発表していた。三位が「羊たちの冒険」だったかな。二位が「世界の終りとハードボイルドワンダーランド」でおやと思った。このブログで再三村上春樹でまあ評価できるのは「世界の終り」だと言っておいたので、おや、このファンはまともかも、と思った。

それで注意して聞いていると一位は「カンガルー日和」だというんだな。どうもまともなファンらしいから、それじゃ読んでみようと思った。未読なのでね。まだマクラだな。

ところが、この本は書店にまずない。よほど人気がないか、再版の間の端境期なのかな。ところがある書店で見かけたので120ページくらい、半分くらいまで読んだ。

初期の短編というか、むしろショートショートなんだが、たしかに悪くない。初期の短編の「風の歌を聴け」よりいい。なるほど、このファンの評価はまともである。

どうも村上春樹は俳句屋だな。短ければ短いほどいい。長編「世界の終り」はたしかに力作だが、ふうふう苦労しながら「作った」という感じで敢闘賞ものかもしれない。

そしてこれも何回も書いたが、その後彼の作品は劣化の一途をたどっている。うっかりノーベル賞の選考委員も授賞できない。権威あるノーベル賞作家が晩年駄作を連発する恐れがあっては、ノーベル賞の権威に傷がつく。まず、今後の受賞はないのではないか。

村上春樹は芥川賞を受賞出来なかったというのが、常に語られることだが、意外にも芥川龍之介に似ている。初期の作品に一番キレがあり、だんだん劣化する。俳句的な短編にすぐれているなどの点は芥川的である。