職業としての小説家(村上春樹)の7回目です。初回だったかに述べた様に「職業としての」小説家というタイトルがこの本の芯柱です。つまり長い間多産的な活動を行って行くためには、というtipsを村上春樹流に述べている。
彼が繰り返し、述べているようだが肉体の維持(そうして出来売れば強化)が重要である、職業的小説家には。さして異論のあるところではあるまい。
彼の場合は毎日走るという日課である。この章は作家稼業の倫理学であり、心構えを説く章である。
この章だけでなく、何回も彼は意識の底に降りて行くということを語る。これが最終章にある心理学者河合隼雄との付き合いにもなるのであろう。上るか下りるか二つの道がある。宗教の道は大体上るのである。あるいは中世的な精神世界では。
つまり天上界、星空、アストラル界への上昇が精神生活の目標である。村上氏は地中深く潜るのである。彼の好きなイメージに井戸があるのもそのためだろう。地下深くでは他人の意識(国民、世界の意識)は未分化で一つのプールになっている。ここまでいくとユングの集合的無意識だな。
ここをヒットすれば、大衆の心を掴む。要するに意識の底では人類皆兄弟である。つまり読者の大いなる共感を呼ぶというのだろう。彼の、洋の東西の読者の声を聞くと、どうもそういうことがあって、村上氏の作品は非常に共感を呼ぶらしい。
つまり巨大なマーケットを得た(ベストセラー作家となった)という事なのだろう。
さて、上るがいいか、潜るがいいか、それが問題である。さて、今夜の発表がどうなりますか。興味がありますね。