この小説は荷風の一連の女肉市場ものであるが、スタイルは『腕くらべ』や『おかめ笹』のような芸者の世界を描いたスタイルでもなく、昭和初期の女給ものでもない。
その頃の言葉でいうと、わたくしもあまり詳しくなく自信がないが、赤線ものとでもいうか。解説なんかを見ると私娼ものと一様に言っているが、これが適切な言葉か。私娼というと自前で、ひもはいるのだろうが、街頭で客を引くもぐりの営業と理解しているのだが。
もっともオイラの理解はアカデミックなものだから違うのかもしれない。
現代で言えばその位置づけは『風俗』という感じだ。勿論違う点は大いにあるだろうがね。いちいち細かいチェック対策で詰らない注をいれて感興を削ぎたくないが。なに、最初から感興なんかないって、ごもっともであります。
そこではなしが本筋に戻るが、筆の感じは、『妾宅』、『雨しょうじょう』、『雪解』や『深川の唄』に類する。注
注:岩波は文庫でも全集でも『深川の唄』を小説に分類し、『妾宅』を随筆に分類している。逆じゃないのかな。
次回は各女肉市場の性格と荷風に与えた影響