チャンドラーの短編には三人称視点のものがいくつかあった。記憶で言うと「脅迫者は撃たない」、「シラノの拳銃」、「スペインの血」や「ヌーン街で拾ったもの」かな。他にも有ったのかも知れない。
そこでふと思いついて、三人称視点だからピンとこないのかなと思って、検証しようと(物好きも昂じたものだが)拾い読みをした。印象から言うと、三人称視点だからということではないようで、一人称でも分かりにくい、つまり印象が薄いものはある。そうすると、短編時代は習作期間だったのかも知れない。
文章は出来上がっていても、小説の構成なんかではまだ慣れていなかったせいで読みにくいのかもしれない。
一語1セントの原稿料だったというから(いくら物価が違うといっても安価なものだ)あまり練らないで書飛ばしていたのかも知れない。やはり、村上春樹氏の評価はおおよそのところ当たっているのだろう。
そこで三人称といえばハメットだ、とハメットに飛んでしまった。わたしの読書対象のいうのはとんでもない所にとんでもない理由で跳ぶのである。マルタの鷹を読み始めたがさすがによく出来ている。完成品だな。