マルタの鷹あるいはハメットのハードボイルド小説は「今や、“ハードボイルドおっさん、のノスタルジアくらいにしか見られない」という。なるほど、そうかもしれない。市場ベースでみるとHB創業御三家のうち、活況を呈しているのは村上春樹訳で日本市場を確保しているチャンドラーくらいだろう。
早川文庫は近年ミステリー部門をリストラしているらしく、一部の作家達のシリーズ物しか書棚にない。クリスティとかチャンドラーとかパーカーとか。ハメットものはほとんどの書店においていない。編集方針の変更があったのであろう。
創元社は比較的ミステリー関連が以前にかわらず多い。早川と立場が逆転している。それでもハメットがある書店はきわめて少ない。御三家の一人ロスマグに至っては両社の本はどこの書店にも無い。もっとも洋書売り場にいくと比較的御三家の本はそろっている。アメリカ本土ではどういう事情か知らないが。
ところで阿部氏のブログには麗々しく「OFICIAL BOOK REVIEW BLOG
by Masahiko Abe」とある。おおげさな、オフィシャル・ブログってなんなの。しかもその上には大きな活字で阿部公彦 東京大学 (英米文学)と大書している。書くなら東京大学准教授と肩書きを書くべきではありませんか。
ブログ記事の日付は2012年4月16日となっている。書評の対象となっている「マルタの鷹講義」の発行日は2012年3月1日である。出版社の通例として発行年月日は先付けするようだから、おそらく書店に配本されたのは3月の末あたりではなかったか。
阿部氏は同僚にしてライバルである諏訪部氏の著書が刊行されるとすぐに入手してろくに読まずに書評を書いたのだろう。おおまかな印象で言うと、諏訪部氏の著書をちゃかし、けなしている様に読める。もしそうでないとしたら、私の印象が間違っているのか、あるいは阿部氏の文章に文徳が欠けているのであろう。
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