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観客席で思ったこと ~200文字限定のスポーツコラム~
 



スピードスケート男子5000メートル(オーバル・リンゴット)


収容観客数8800人のオーバル・リンゴットは、まるでオランダ国内の会場のようだった。およそ7割方はオレンジ色に染まっていたのではないか。その合間に、ノルウェーの赤がいくらか目立つ程度だった。地元イタリアの人たちは見に来ていないのだろうか。

全部で14組28人が滑走する男子スピードスケート5000mは、2人づつ、5組、5組、4組と3回に分けて行われるタイムレースだ。間に2回製氷タイムがある。15時30分から競技が始まり、19時30分終了予定の長丁場。はじめて観るので、途中で飽きてしまうかと思ったが、意外とそうでもなかった。

最初の組は、ベルギーとルーマニアの選手が滑った。そして、いきなり驚かされたのは、観客席を埋めたオランダ人たちの態度だった。選手が自分たちの前を通過するたびに、大きな声援と拍手を送るのだ。自国の選手に限らず、全ての選手たちに。もちろんオランダの選手への声援はひときわ大きくなるが。そして、レースを終えた選手が、クールダウンしながらトラックをまわってくると、そこでも大きな拍手で称えるのである。本当にスケートが好きで、そのうえ、その過酷さがわかっているのだろう。彼らをみならって、すべての選手に対して、敬意をもって、声援を送りながらみることにした。3時間を越える競技時間がとても楽しいものとなった。

日本人選手は、4組に牛山、6組に宮崎が出場したが、残念ながら上位に食い込むことはならなかった。

2回目のインターバルを終えた11組目から、会場が一段と盛り上がった。11組に、オランダ選手2人が一緒に滑り、その時点での1位、2位でフィニッシュしたのだ。会場を埋めたオランダ人が歓喜に浸った。

次に喜んだのは、ぼくのすぐ後ろで仕事をしていた米国NBCテレビのカメラマンだった。スピードスケートは、NBCが制作し、世界中に中継している。12組に米国の選手が登場。その選手が、途中で、1位のオランダ選手の記録を上回りだす。すると、バックストレートを自分に向かって加速してくる自国の選手に向かって「カモン!カモン!」と声をかけだしたのだ。世界に流す映像を撮りながら。そして、1位でゴール。どうにもカメラマンが気になりだしたぼくは、彼が小さくガッツポーズしたのを見逃さなかった。

最後の14組には地元イタリア選手が登場した。序盤は、静かだった会場が、後半になってざわざわしだした。ぼくの前に座っていたイタリア人の子どもが、一生懸命大きな声でイタリア選手の名前を呼び出した。会場のあちこちから沸きあがる声にこたえるかのように、イタリア選手の通過順位が上がり出す。最後の3周を残したところで5位に上がり、ラスト1周で4位に。そして、最後の1周を滑り終えゴールした時には3位になった。前の子どもは飛び上がって喜び、取り囲んでいたオランダ人たちもそれを祝福していた。

ハッピーエンドなスピードスケート男子5000mだった。

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