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観客席で思ったこと ~200文字限定のスポーツコラム~
 



アジアカップ2011 テレビ朝日の中継から


アジアカップ2011の準決勝、日本対韓国と決勝の日本対豪州の試合は、テレビ朝日の中継を見た。

ぼくは、民放地上波とNHKの衛星放送がある場合、NHK衛星方法を見るのが常なのだが、準決勝を池袋のショットバーのテレビで見て、テレビ朝日の中継の面白さに気づいたのである。

その中継の面白さとは、解説の松木安太郎氏の存在である。そもそも解説と言っていいのかどうかが怪しい。試合の実況をするアナウンサーがいて、解説のセルジオ越後氏がいて、グランウンドレベルのレポーターとして名波浩氏がいる。3人で十分なはずだが、そこに松木氏である。

もともとテレビ朝日のスポーツ中継は、解説やらゲストやらなんとかレポーターとか、やたら大勢で試合を引っ掻き回す傾向がある。サッカーも例外ではないのだが、松木氏の発言あるいは声は、いい意味で、サッカー中継に新たな領域をもたらしているように思う。

難しく考える必要はないのだが、視聴者を楽な気持ちにさせて、試合にのめりこませてくれるのが、松木効果ではないか。

解説とは言いながら、理論的なことはほとんど発せず、感情のままに声を発する。スポーツは理屈じゃなくて、見たまま、感じたままを楽しめばいいのだということを、恐れおおくもテレビの中で実践してくれている。本来はゲストと称される人の役目なのだが、解説者で元日本代表の松木氏がすることで、視聴者のハードルを思い切り下げることになる。「そう、たかがサッカー、そんなに深く考えなくてもいいのだと」。しかし、そのボルテージの高まり方は、「されどサッカー」でもある。

つまり、テレビ中継で見聞きできる松木氏の試合へのリアクションは、サッカー観戦の原点なのだ。選手起用や布陣や戦術など、いろいろと考えながら楽しめるのもサッカーだが、あふれかえる情報のために、少し理屈のほうに偏りすぎるきらいがある。もと楽な気持ちで熱狂してもいい。

これからは、テレビのなかの松木氏と一緒に、見たままを、感情のままに楽しむことも、選択肢として考えたい。それにしても、解説者でもなく、ゲストでもない、松木安太郎氏にぴったりくる呼び方はないものだろうか?




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アジアカップ2011
2011年1月 カタール・ドーハ


■早くも2011年のベストゴール
延長後半4分、途中交代出場した李忠成の豪快華麗なボレーシュートが決勝点となり、日本代表がアジアカップ2011を制した。2011年は1月が終わったばかりだが、これ以上の劇的さが考えられない李の決勝ゴールは、2011年の日本サッカーのベストゴールに決まりである。
李の決勝ゴールのほかにも、この大会では、途中交代出場した選手の活躍が目立った。しかも、ただの活躍ではない。岡崎、伊野波、細貝、李は貴重すぎるゴールにからんだ。初戦の吉田の同点ゴールも忘れてはならない。
決定力不足と言われてきた日本を、ベンチの選手が救ったことになる。がまんづよく選手を起用し続ける傾向のあるザック監督のもとでは、ベンチの選手の出場機会は少なくなりがちである。そのなかで、少ないチャンスを活かした選手たちの心理には興味をそそられる。
一方、大会を通じて、選手起用がことごとくうまくいったザック監督だが、その背景には、槙野、松井、香川の負傷があった。とくに松井の怪我で、岡崎を先発で起用したことは、(松井には気の毒だが)日本にとって大きくプラスになったと思う。そういう意味では、ザック監督の起用には、運も味方していたと言えるのではないか。

■縁の下を支えたベテランの存在
新戦力の活躍が目立った大会だったが、それを支えていたのは南アフリカW杯に出場した面々だったことはまちがいない。
攻撃の起点となり大会MVPになった本田、一段とたくましくなったキャプテン長谷部、ベテランらしい落ち着きで試合のテンポをコントロールした遠藤、決勝戦のMVPとも言えるGK川島、全試合フルタイムで走りつづけた長友。個性がチーム力に昇華しているのが、南アフリカのときとの違いだろう。最終ラインをまとめた今野の存在も大きかった。
短い準備期間にもかかわらず、アジアの激闘を勝ち抜いたのだから当然のことなのだが、ベテランと新顔がうまく融合し、持っている力を十二分に発揮できた大会だった。

■ザック・ジャパンの行方
上々の船出となったザック・ジャパン。選手は、いったん各クラブにもどり、それぞれの目標に向かう。日本代表としては、親善試合と南米選手権をへて、今秋からのブラジルW杯アジア予選に臨むことになる。2013年にはコンフェデレーションズカップで、ブラジルW杯の予行練習。そして、2014年の本大会である。
日本代表の役割は、日本サッカーの頂点として世界にアピールし、一方で、国内の模範となり牽引することである。ひとつひとつの試合でその役割を果たしながら、W杯で好成績を残すこと。ブラジルまでの3年と4ヶ月、ザック・ジャパンには、それができるような気がする。
気が早いかもしれないが、南アフリカで掲げた目標が、現実味を帯びてきたようにさえ思う。日本サッカーの夢を広げるアジアカップ2011の戦いぶりだった。



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