1-1でドロー。
当初予定から大幅に遅れたスケジュールの中、ホームで無観客にて行われたシーズン開幕戦。
前半のうちに首尾よく先制することに成功したものの、ミスに付け込まれるかたちでのまずい失点により同点に。勝ち越さねばならなかったのに、試合の主導権も奪われた状態で、なんとか引き分け。
勝てた試合だったのはもちろん、勝たねばならない試合でした。
相手の長野の手強さは織り込み済みであったはずですが、「それでも!」という強さを発揮するまでには至らず。
それでなくとも難しい開幕初戦ではあったでしょうし、いつも通りでない、さまざまな制約もあったなかでの無観客試合。
良かったばかりでも悪かったばかりでもないけれど。
それでもやはり。
勝って幸先よくシーズンを開幕させたかった、というのが本音です。
昨シーズン最終戦より、実に半年余り。待望のシーズン開幕を迎えました。
注目のスタメンは、予想通りの選手もいれば、意外な選手も。
GKは齋藤。昨シーズンは公式戦出場機会がありませんでしたが、2年目となる今シーズンの初戦でスタメン抜擢。待望のJ初出場となりました。
キャプテン今瀬と実績ある新加入の林堂がCBとしてコンビを組むのは予想通りでしたが。
右SBには田中 佑昌。同じく新加入の田中 勘太との表記の兼ね合いからユウスケとしますがーーーチーム最年長選手がスタメンに名を連ねました。
そして、前シーズンは移籍した前嶋が務めていた左SBは、復帰の松原かと思われていましたが、大卒ルーキーの末木が初出場初スタメン。
ボランチに花井、碓井は想定内として。
左サイドハーフに新加入の戸高はいいとして・・・右に、椎名が起用されたのはいささか意外でした。これまではボランチ、あるいはトップ下といったイメージであっただけに。
2トップは陽次と平松。戦術的判断かコンディション問題かはわかりませんが、大谷が登録メンバー外であったところにちょっと驚いてみたり。
過密日程となる今シーズンは、規定変更で交代選手が最大5人まで認められることに。それが試合にどう影響を及ぼすかにも関心が集まりました。
試合開始直後、今瀬と齋藤の連携が中途半端になってしまい、あわや!という危ない場面が。それでなくとも特別な開幕戦、あるいはデビュー戦の緊張もあったか。
それでも、その後は落ち着いてカターレペースで試合が進行しました。
自分たちでボールを保持、しっかりしたパス回しでリズムをつかんでいくという、昨季完成度をたかめていったところのカターレらしいスタイルが、新メンバーを加えた新たなチームにおいても機能した印象です。
わけても、唸らされたのがSBのユウスケ。
福岡在籍時からよく知る選手ですが、その気迫がにじみ出ているような熱いプレーぶりというものは、ベテランとなった今に至っても健在ということのようで。
サイド際で相手と果敢にガシガシやりあうだけでなく、チャンスと見れば、果敢にスピードが乗ったオーバーラップを敢行。新たなチームの可能性というものを、初戦から見せつけたのでした。
そして、新たな可能性ということで言えば。
これまで、あまりアタッカーというイメージのなかった椎名ですが。相手陣内での向かっていく姿勢というものは、まさしく攻撃的ポジションの選手のそれであったかと。
左利きで、相手ゴール左からのコーナーではキックを任されていますが、そういったシチュエーションでも、しっかりと得点に結びつけようとする意志が感じられ。
そんなイメージが結果に結実したのが、16分のことでした。
相手DF間の狭いところを射抜く絶妙なシュートが見事に決まり、先制!カターレの今シーズン初ゴールを決めたのでした。
わずかでもためらいがあったなら、決まっていなかったであろうシュート。なんとなく蹴って入るようなものではなかったでしょう。
長くチームの象徴的プレーヤーであった苔口の引退に伴い、最長在籍選手となった椎名。そんな彼が、自分のすべき役割をしっかりと理解し、また実践してみせた。そんな価値あるゴールであったかと思います。
林堂、戸高といった他クラブでの実績も豊富な新加入選手たちが、それぞれ堅実なプレーぶりを見せる一方で、デビュー戦となった末木も、多少の粗はありながらも、しっかりとプレーしていた印象。
前嶋、白石といったレギュラーがチームを引っ張っていた昨シーズンのスタイルとの比較は、現時点ではまだ早いかとは思いますが。
それでも。目指すスタイルの継承というものは、しっかりとレールに乗っているーーーそんな印象を抱かせました。
ただ。
完全に自分たちのペースであった展開から首尾よく先制点を奪ったものの、そこから一気呵成に押し込めたら良かったのですが・・・。
後半開始から12分というタイミングで、同点ゴールを許してしまうことに。
プレビューでも気をつけねばならないとしていたところの東 浩史にやられてしまう格好で。
カターレがチーム最長在籍となった椎名が決めたのに対し、長野はクラブのレジェエンド・宇野沢から背番号10を引き継いだ東が決めるという、なんとも象徴的な展開であったとも言えます。
そして、その決められ方も、それもまたプレビューに書いていたことですが・・・。
昨季の同カードでオウンゴールという今瀬の奮起に期待したい、と書いていたのですが、まさにその今瀬。今回はクリアミスを掻っ攫われての失点という、“汚名挽回”となってしまったのでした。
ミスは起こりうるものとしても、いささか状況的に悪すぎる格好。引きずらないかが心配でもあります。
そして、なによりも。
良くなかったのは、その後。
やり返すだけの時間は、充分にあったはず。獲られても獲り返せば良かったのだけれど。
失点以後、完全に長野のペースに。前半で見られたような良い形は、どうにもなりを潜めてしまい。
それでも、ただ手をこまねいていたわけではなく。
途中交代で、新加入の大野を起用。前線で果敢に起点となる動き、前を向いての仕掛けなど、求められる役割をしっかりと理解したプレーぶりが印象的でした。
しかしながら、それも勝ち越しゴールにはつながらず。意欲は充分に見て取れただけに、アグレッシブなプレーであったことの裏返しとしてカードをもらってしまったのは、なんとも歯がゆかったですが。
また、同じく交代出場として、名門浦和レッズから来た若武者・池高がさっそくカターレデビュー。期待の高さをうかがわせました。
試合はその後、双方ともスコアは動かず。
カターレの側からすれば、なんとか長野の攻勢をしのぎきった、というかたちでドロー決着となりました。
大幅に遅れた開幕戦、そして無観客試合。
ただでさえ難しい状況であったところ、さらに難しい試合展開にもなってしまった、ということはありますが・・・それでも。
それでも、勝ちたかった。
思い起こせば、去年のちょうど今頃。
ホーム戦3連敗、しかも全て1-2負けという時期でした。
自分たちのペースでやれているのに、もう1点、追加点が獲れない。決して内容は悲観すべきものでないにもかかわらず、勝利に結びつけることが出来ないーーーそういった苦しい時期。
なにか、それを思い出させるような、この開幕戦であったように思います。
決して勝てない試合でなかった。苦しい展開でも、それを打開するだけの強さを発揮しなければならなかった。
それが、出来なかった試合。
それでも。
去年の今頃に苦しんだ経験があるからこそ。
そして、去年後半の躍進の経験があるからこそ。
同じにはならないし、してはいけません。
獲りこぼしてしまった勝ち点2は、取り戻せないけれども。
しかし、だからこそ。
この開幕戦をいかに活かしていくのか。
「圧倒して勝つ、そして優勝する」という指針に対し、この試合をただの失敗に終わらせて良いはずがなく。
むしろ、バネとして飛躍の糧とせねばならないのは言うまでもありません。
去年の停滞がちらついたというなら、むしろ結構。自分たちの頑張り次第で乗り越えられることは、証明済みなのだから。その気づきがこの試合だけで済むなら、安いものかと。
とにもかくにも開幕した2020シーズン。
優勝への道のりが、はじまりました。