6-0で勝利!
他会場の鹿児島が勝利した場合、他クラブは勝ってさえも終了ですらあったなかで。3位のカターレにしても、可能性を繋ぐには勝利しかありませんでした。
2試合連続無得点敗戦と、状況的には芳しくないどころの話ではなかったものの、それでも。
この絶対に勝たねばならない試合に際して、選手たちが奮起。マテウスのハットトリックを含むクラブ新記録となる6ゴール。
プレビューで書いたところの「2戦連続無得点でたまったフラストレーションを爆発させるようなゴールラッシュでもって、宮崎をねじ伏せてほしい」という願いが、まさに現実のものとなったのでした。
連敗はもってのほかとして、引き分けすらも許されないプレッシャー。それでも、誰ひとりとしてあきらめることない気持ちを見せて、挑むよりほかなかった状況。
前節は欠場していたシルバがスタメンに復帰し、必勝態勢を整えた一方で。
吉平や下堂といった前節もサブメンバー入りしていた選手のほか、若手の柴田、そして特別指定選手コンビのヨシキとショウセイが名を連ねることとなりました。
もはや、ことここに至っては、誰が出るかは問題ではなく。
出場して、なにを為すかーーー勝利にために、なにを為すかのみが問われる試合だったと言えるでしょう。
南国・宮崎はユニリーバスタジアム新富でのアウェイ最終戦。
北陸富山の住人としては、11月も終わろうかというこの時期に、むしろ暑さすら感じるか?というほど晴れ渡った青空の下での試合は、なんともアウェイ感を意識させられましたが。
風もほとんどなく、試合に臨むコンディション的にはベストとも言えるなかで。結果としてベストをーーー勝利を追い求める一戦が始まりました。
2023シーズンも大詰め、チームとして積み上げてきた総合力が問われるなかで。
今節もやはり、前半から主導権を握ったのはカターレのほうでした。
堅実なパス回しから機を窺いつつ、サイドの松岡や伊藤らが揺さぶりをかける。そして前線で頑張るマテウスや駿太へとつないでいく、と。
スタメン復帰となったシルバですが、その効果はてきめんと言えました。
ボールをつなぐだけではなく、隙あらば縦に通して相手の裏をかく。持ち味であるところのそんな柔軟性が、欠場明けなど関係ないかのように機能。やっぱりコレだよ!と頷いたものでした。
そして、今節は最終ラインの今瀬が出色の出来。
相手アタッカーとの競り合いでも譲らず、しっかりとピンチの芽をつぶしてペースを渡さず。得点力に課題を抱える宮崎にとってみれば、ガッチリと封じ込められ、やり辛いこと甚だしかったのではなかろうかと。
こと守備面に関しては、理想的な試合の入りであったと思います。
ただ、問題は攻撃面。
前々節・奈良戦、前節八戸戦ともに、前半は主導権を握り、悪くないどころかむしろ良かったとさえ言えたなかで。
なかなかチャンスをモノにできないままくすぶっていたなか、相手にワンチャンスを活かされるカタチで失点、結果的にそれを覆せずに連敗という最悪な結果につながってしまっていただけに。
前々節を起点として、およそ210分あまりも無得点の状況が続き。
急いては事を仕損じる、焦らなくとも90分を戦いきった段階でリードしてさえいればそれでいいーーーわかっている。わかってはいるけれど。
それでも、やはり。
前半のうちに得点を挙げて、勝利への道筋をつける重要性。
連敗継続でシーズン終了などもってのほか、勝つにしても、いかに勝つかも問われるなかにあっては。
なにがなんでも、先制点をーーー。
じっと機を窺い続けながら迎えた、39分でした。
右サイドを駆け上がっていった大山がゴールに向けてクロスを上げると。
それに反応したのは、マテウスや駿太ではなく、逆サイドからゴール前に詰めていた伊藤でした。
チーム内でも小柄、上背のない彼ではありますが、ドンピシャのタイミングで素晴らしいヘディングシュート。見事に決まり、欲しかった先制ゴール!
2試合連続無得点の嫌な流れを断ち切ってみせたのは、ルーキーの今シーズン3ゴール目でした。
宮崎にしてみれば、少なくとも前半は0-0で折り返したかったところでしょう。得点力で勝る富山に先制されては、やはりひっくり返すのは容易ではないと。
そんな失点のダメージが抜けきらない、切り替えきれていないなかで。
直後の41分。
ロングボールを収めたマテウスが、個の力で相手ディフェンスをかわしつつゴールに迫り、冷静に蹴り込んでゴール!あっという間に2点のリードを奪うことに成功したのでした。
宮崎にとっては痛手、カターレにとっては勇気の出る2点目。
前半終了間際に伊藤が痛んでピッチ外へ、というアクシデントもあったものの、そのまま2-0で試合を折り返すこととなりました。
どうしても勝たねばならない試合で、2点のリード。勝利に近づいたことは確かだったけれど。
それでも、気を緩めるわけにはいきませんでした。
2点リードの状態から、ハットトリックをくらって逆転負けを喫した愛媛戦のことがある以上は。ここで1点、2点を返されて試合の行方が怪しくなってしまうことは、なんとしても避けねばなりませんでした。
そのあたりは、小田切監督にしても百も承知であったでしょう。
後半開始のタイミングで、伊藤に代えて吉平、大山に代えて下堂を投入。さらなる追加点を目指すことに。
鹿児島出身の下堂にとっては、宮崎は準ご当地と言えるところ。実際、試合に訪れた親御さんがゴール裏に挨拶にいらっしゃいました。
前所属クラブ・八戸との対戦となった前節は、サブメンバー入りしながらも出場なし。個人としての出場もさることながら、チームの敗戦のほうが、より無念であったことでしょうけれど。
その悔しさをぶつける意味でも、気合を入れて試合に臨んだことかと。
そして、吉平。
前節の最終局面で、直接FKを決めていれば、敗戦は免れたのでは?ーーー結果論ではありますが。
今節、ゴールに飢えている状況での投入。並みならぬ決意を伴う出場だったのではと。
追加点を狙う後半、71分のことでした。
カターレの攻勢をゴール前でなんとかしのいだかに見えた宮崎ディフェンスですが、焦りからかクリアのキックがジャストミートせず、意図せぬ方向へ。急にボールが飛んできたところで対処しきれず、胸トラップが崩れてハンドの判定。それが、ペナルティエリア内。すなわち、PKの判定となったのでした。
ハンドの反則となってしまった選手にしても、「しくじった!」という思いこそあったでしょうが、判定そのものは受け入れていたのではないかと思います。異議を申し立てて検証するまでもなく、明らかなハンドであったと。
ただ、そこで揉めてしまいました。
宮崎側ではなく、カターレ側ーーー吉平とマテウスが、どちらが蹴るかについて。
いやいやいや、味方同士でケンカしてる場合じゃないでしょうが。
・・・いや待て、これで相手GKが集中力を乱したなら、儲けもんじゃね?
結局、キッカーはマテウスに。
権利を強硬に主張した以上、絶対に外すわけにはいかないぞ、という場面でしたが。
そこは、さすがというべきか。しっかりと決めて、この日2ゴール目をゲット。
チャンスを確実にモノにするかたちで、さらにリードを広げる3点目を奪ったのでした。
さらに、とどまるところを知らないカターレ。
76分には、相手ゴール前でのパス回しを強引に奪い取ったマテウスが、迷いなく蹴り込むと。ボールはゴールに吸い込まれ、4点目。
この日3点目のマテウス、ハットトリック達成と相成りました。
先のホーム愛媛戦でのシルバのハットトリックが、2013年の苔口以来の10年ぶりの達成であったというのに。その次は、こうも短期間のうちに達成されてしまうのかよ!と。
思いもよらない大量失点に、浮足立つ宮崎。
それでも、カターレは攻撃の手を緩めることはありませんでした。
続く79分には、右サイドからゴール前を経由して左サイドへとつながったところ、満を持して吉平!PKの得点機こそ譲ったけれど、ゴールへの意思が萎えたわけでもなんでもなく。むしろ、あふれる闘志でもって5点目につなげたのでした。
2戦連続で無得点敗戦という屈辱からフラストレーションをためていたのは、なにも伊藤、マテウス、吉平だけではなく。
81分、今度は松岡。
自分でもちょっと強引であったと認めつつも、ゴール前で積極果敢に自ら攻め入り、シュート。それが決まって、もう笑うしかない6得点目。
まさに、ゴールラッシュというより他ない怒涛の得点で、クラブ新記録を樹立してみせたのでした。
いや、ほんと・・・いかにプロと言えど、ひとつタガが外れると、歯車が狂うと、こうも一方的な試合展開になってしまうものなのか・・・。
もちろん喜ぶべきシチュエーションではあったものの、なにか、空恐ろしいものすら感じたのでした。
スコアの上では完全なワンサイドであっても、宮崎のチャンスが皆無であったかと言えばそうでもなく。しかしそれでも、しっかりと守り切って得点を許さず。
クリーンシートを達成し、6-0で試合終了。まさに、完勝と言える内容で、遠く宮崎まで駆け付けたファン・サポーターと歓喜を分かち合うことが出来たのでした。
ホーム最終戦に、12000人近い観衆を集め、その声援に応える勝利を挙げた鹿児島。その結果、4位以下の昇格の可能性が消滅することとなりました。
今節、もし鹿児島が敗れていたなら、順位を逆転して昇格圏で最終戦、というところでしたが・・・さすがに、そうは問屋が卸さなかった、と。
逆に、今節もしも負けていたら昇格の可能性そのものが即消滅していたところ。
最終戦、実質的にカターレの勝利かつ鹿児島の敗戦が昇格の条件と位置づけられることに。
他力本願の部分もあり、条件としては厳しいものがありますが、それでも。
勝ったからこそ、次につながった。勝てていなければ、つながっていなかった。
事実上、残り昇格枠1をめぐる鹿児島とカターレとの一騎打ち。
追う立場ではあるものの、可能性が無いわけでは決してなく。
やれば、できる。
この最終盤で見せたカターレの底力をもってすれば、不可能などあるものか。
ハットトリックだって、新記録6得点だってやってみせたのだから。
信じて、貫くのみ!
残り1試合、最終戦に全てをかけて。
決戦の土曜日。泣いても笑っても、最終戦の結果で全てが決まります。
チャンスを、逃すな!
全力で掴み取れ!!!
最後に笑うために。
カターレ富山、2023シーズン最後の戦い、刮目して見よ!