2-2のドロー。
これまでずっと負けなしだったホームで、ついに無敗が途切れてしまうのかーーーあきらめて敗戦を覚悟していた人もいたでしょう。それは仕方のないこと。
自分たちのミスから先制を許してしまい、せっかく追いついたにも関わらず、勝ち越しゴールを決められて再びビハインド。相手が時間をかけたプレーで時計を進めるなか、残りが少なくなっていくばかりの試合時間。もうダメだ、と思ったとしても、無理もない。
しかし。
敗色濃厚のなかでも、カターレはあきらめませんでした。
最後の最後、終了間際の後半アディショナルタイムに同点ゴール。
逆転にこそ至らなかったものの、それでも。
土壇場に敗戦を回避、0に終わるはずだった勝ち点を、1ながらも積み重ねることに成功。
まさに、執念で掴んだドロー決着。ホーム無敗を継続したのでした。
勝つべき試合で勝ちきるーーー昇格を狙うカターレにあって、必須とも言える要件のひとつ。それを見事に体現するかたちで、オープニングマッチを含め金沢を3度撃破、北陸ダービーを制した前節。
アウェイから持ち帰った勝ち点3を、ホームでも継続していくためにも。
讃岐、今治と続くホーム連戦を勝ちきるべく。いつにも増して気合を入れて臨まねばなりませんでした。
勝ち試合からはヘタにメンバーをいじらない、というのはセオリーですが。それに倣って、前節と変わらないスタメンとしたカターレ。
そのなかにあって、前節、試合途中に負傷退場してしまった今瀬が、今節もしっかりとスタメンに。大事無いようでなにより。
サブメンバーを見てみれば、前節はメンバー外となっていたヨシキ、古巣対戦となる松本のほか、ここしばらく病気で戦列を離れていた瀬良の名が。シーズンも残り少なくなっていくなか、チームとして総力戦で臨まねばならないなかでは。瀬良の復帰は、明るい材料と言えました。
ホーム・県総では久しぶりとなる、14時開始のデイゲーム。もちろん、狙うは勝利のみ。応援にも気合が入りました。
夏の中断を挟んで5連勝、前節こそ松本山雅に4失点を喫して敗れたものの、スコアほど悲観する内容ではなかったという讃岐。
プレーオフ圏内入りにはいささか厳しい状況ではあるものの。逆に、取り巻く状況がどうだとかは関係なく、とにかく勝っていくことこそが、いま自分たちのやるべきことーーーそんな、ある種の割り切りのようなものがあった、ということでしょうか。
実際の対戦を見て思ったのが、「順位なんてアテにならねーな」ということ。
前節8位として対戦した金沢よりも、今節15位として対戦している讃岐のほうが、よっぽど手強いじゃないかと。
もちろんシーズンも終盤戦ともなれば、各クラブともスカウティングの精度も上がって、より対策にも力が入る、というのはわかりますが。
最終ラインからボールをつなぎつつ状況を伺い、チャンスと見れば一気呵成に攻め上がる、というカターレのスタイル。それに対して前線からガシガシと圧力をかけて、全体的にラインを上げつつ対応してきた讃岐。そのプレッシャーに難儀させられることに。
もちろん、前線メンバーの消耗が激しくなるなど、リスクもあることは確か。
けれど、そのリスクを踏まえてもなお、やりきる姿勢。それは、このところの連勝で培ってきたところの自信のなせる業であったのかもしれません。
カターレとて、いつもいつも自分たちの思うがままにプレーできるとは思っていないでしょう。うまくいかないならうまくいかないなりに、なんとか状況を打破する糸口をみつけねばーーーそんななかでした。
31分。
ゴール前で田川が蹴り出したボールが、ひと目で失敗とわかるミスキック。それが、あたかも相手へのパスか?という状態になってしまい。
あ、やべぇぞこrーーーそう認識する間もなく、次の瞬間。
それでなくとも果敢に前線から突っ込んできていた讃岐が、相手のミスを見逃すはずはなく。MF吉田 陣平に蹴り込まれ、先制を許してしまうことに。
失点そのものには、良いも悪いも無いかもしれませんが・・・それでも。
ここまで無敗のホームで、失点そのものが少ないホームで。先制ゴールを許して追う展開になることも久しぶりですが、それがよりにもよって、自分たちのミスからとは。
まずいかたちでの失点をなんとか挽回すべく、奮闘するも。
マテウスが良いかたちからシュートを放つも、ゴールならず。流れを変えるまでには至らぬまま、ハーフタイムを迎えることとなりました。
0-1で試合を折り返すこととなり、勝負の後半へ。
もちろん、前半から失点して追う展開は避けたかったところでしたが、それでも。
見方を変えたならば、ハーフタイムによって気持ちの切り替えや、監督からの指示を確認する時間があったということ。決して悪いばかりではないぞ、と。
修正を図る後半、開始のタイミングでメンバー交代を敢行。頭からヨシキとショウセイのルーキーコンビを投入し、同点、逆転を狙っていくことに。
すると、その起用が開始早々に当たりました。
なんと言っても、素人目に見てさえも、ヨシキが効いている。
もちろん、交代となった陽次にも、彼なりの良さがあるのは確か。だから一概に彼が良くなくて上手くいかなかった、というわけではないものの。
それでも・・・こうも、違うかと。
ボールの収まり、ドリブルでの仕掛けなど、それこそ目に見えて効いているヨシキ。
前節を除き、ほぼ全試合に出場してきた彼ですが、あらためて実感しました。今シーズンのカターレには、ヨシキが必要だと。
そのように交代策の手応えを実感していた最中。
52分、安光がマッチアップした相手を振り切ってペナルティエリア内に蹴り込むと、それに反応したショウセイがシュート。GKに弾かれたものの、それを押し込んだのは、ヨシキ!
まさに、交代策が的中するかたちで、後半開始から早い段階での同点ゴール。ビハインド状態に沈んでいたスタンドに、活力が戻ったのが実感できました。
そうだ、ここまで無敗の県総だ。ここで途切れさせることなど、あってたまるかよ!
まずは、追いついたカターレ。このまま一気に逆転だ!
ただ。
59分には相手のシュートがポストに当たって救われるというピンチもあり、完全に相手から勢いを奪ったということではなかったと。依然として油断ならない展開が続くことに。
そんななか、71分でした。相手の攻勢を、なんとかはじき返していた守備のなかで。
ゴール前には人数がいたものの。途中出場のMF森 勇人が、ペナルティエリア外の遠目から思い切ったシュートを放ち。一瞬、虚を突かれたというかたちになったということか。それがゴールに吸い込まれ、勝ち越しを許すこととなってしまったのでした。
ミスからの1点目に続き、今度は寄せの甘さが招いた失点とも言えただけに。
もちろん決めきった森のシュートが素晴らしい精度だったということは、確か。
ただ、カターレが防ぐ術は何もなかったのか?と言うと・・・さにあらず。
まさに、痛恨の極みというような失点で、再びリードされることに。
それまでの試合展開からも、決勝ゴール足り得る勝ち越し点に、勝利を確信したということでしょう。アウェイ側ゴール裏へ、数としては少なかったながらも富山にまで駆け付けたサポーターのもとへ、駆け出していく讃岐選手たち。
ここまで無敗の県総にあって・・・今シーズン初の光景であったかと。
まず、これまで失点そのものが、数えるほどしかないことが前提として。1失点の試合にも、タイミング的に勝利を決定づけるようなものは無く。複数失点を喫したのは、ルヴァンカップの札幌戦と、先のYS横浜戦のみ。その札幌戦も、2点目はホーム側ゴールのPK。YS横浜戦は3点を追う状況で、それどころではなかったと。
あるいはボコボコにやられるのでは?との予想もあった清水戦・神戸戦といった格上相手にもなかったシーンが、今節、目の前に。
簡単な試合など無いことは、下位だから勝てるわけではないことは、わかっていたはず。
けれども・・・いざ、厳しい現実を見せつけられては。
負けを覚悟した人も、少なくなかったと思います。
それでも。
あきらめるという選択肢は、ありませんでした。
キャプテンの吉平を中心に、声掛けを続け。ゴール裏も、必死に声援を続け。
確かに、厳しい。けれども、心が折れてプレーが散漫になった挙句にとどめを刺される、というパターンに陥ってはならない。最も避けねばならない事態。それがわかっているならば、なにはなくともチームを信じて応援するだけだろ!と。
一方、前節の敗戦をバネに、再び勝利を掴んでいこうという讃岐。粛々と、ゲームの締めに入ることに。
何故か讃岐寄りのジャッジを連発する審判にイライラ、倒れて時間を使う讃岐選手にイライラ、CKからコーナーでボールをこねくり回す、いわゆる「鹿島る」プレーにイライラさせられたりもしましたが。
それでも。
あきらめることなど、あってたまるか!こんなところで県総無敗が止まる?冗談じゃない。
あきらめてなど、やるものか!
5連勝からくる自信を元に、3位の富山をアウェイで撃破!ーーーあるいは讃岐側は、勝ち越しゴールの時点でそんな青写真を描いていたのかもしれません。
確かに、勢いを感じる相手であり。体感的な強さで言えば、15位という順位でいることが不思議なくらいに、上位クラブと遜色ないレベルで厄介な相手であったと。それは認めます。
ただ、それでも。
讃岐の15位という順位も、カターレの3位という順位も。それぞれ、積み重ねがあって、そうなっているのだと。
何が言いたいかと言えば。
確かに、今シーズンではカターレも成し遂げていないところの5連勝を達成している讃岐。今が絶好調であることは認めましょう。
ただ、それでも。
それでも、ここまで7勝で15位のチームと、倍の14勝を挙げて3位のチームとでは、「どちらが勝ちなれているのか?」ということ。
正直、讃岐は勝ちを焦っていたのではないかと。
鹿島るプレーにしても、もっとしかるべきタイミングがあったはずなのに。それを待てなかった。
カターレに、心折れることなくあきらめない信念を残すだけの猶予を、与えてしまったということ。
6分と表示されたアディショナルタイム。そのなかで、90+2分。
自陣左サイドからピッチを斜めに切り裂くように蹴り出した今瀬。そのボールが、右サイドを上がっていた途中出場・布施谷につながり。その布施谷がゴール前へとクロスを上げると。やはり途中出場・古巣対戦となった松本がそれをすらすと、そのボールに反応したのは末木!蹴り込んだボールがゴールへ!
まさに、起死回生。敗戦寸前の土壇場で、追いついて見せたカターレ。
いや、まだだ。まだ時間は残っている!
逆転勝利を信じ、猛然と攻め込み続ける選手たち。
体力的な消耗だとかは関係ない。気力がチームを突き動かしていました。
ここまでも再三ファインセーブを見せてきた讃岐GK今村 勇介が、2失点こそしたものの、その「当たっている」守備でもって立ちはだかり。
CK、スローイン、とにもかくにも攻め続けるカターレ。理屈じゃない、勝つんだ!
もうあと1分あれば、崩せたーーーそんな感覚は、確かにありました。
しかし。無情のホイッスル。
試合終了。
逆転勝利にまでは、至らず。欲しかった勝ち点3は、1止まりに。
ただ、それでも。
敗戦濃厚であった状況を覆し、1ながらも勝ち点をもぎ取ってみせた。そして県総無敗を継続してみせた。それもまた、揺るがぬ事実です。
試合後、いつもならばピッチに整列、各スタンドに向けて挨拶に回る、というタイミングで。
チーム全員が輪になって、ミーティングがおこなわれることに。
それだけ、勝ちたかった試合。
同時に、勝てなかったからこそ、気を引き締めねばならない試合。
普段には無い異例の光景ではあったものの。スタンドのファン・サポーターを含め、カターレを取り巻くすべての人が、悔しい結果を受け入れつつも前を向こうとしているーーー思いが伝わってきた、そんなシーンでした。
今節今治が勝利したことにより、勝ち点の上では1差が3差に広がることに。
それでも。
土壇場でもぎ取った勝ち点1が、とても効いています。
あのまま敗れて4差となっていたならば、直接対決で勝てたとしても、それだけでは逆転できない状況となっていました。
それが、直接対決で勝ちさえすれば、無条件で上回ることが出来る。この1差が、とてつもなく大きな意味を持ちます。
試合後、殊勲の同点ゴールを挙げた末木が言いました。「ポジティブに捉えるなら負けなかったことが大きいと思うので、この勝点1を次に活かすためにも大きな勝点1だったと思います。 」と。
まさに、そう。
ベストな結果は得られなかったにしても。ベターではあった。
次節、今治を打倒して順位を入れ替えるという目標そのものには、なんの不足もない。
ならば。
次節の勝利のために、邁進していくのみ!
必勝を誓い、勝ちきるのみです。
戦いは続きます。