2-1で勝利。
結論から言えば。昇格は、成し遂げられませんでした。
シーズン最終戦、「次」の無い、取り返しのつかない状況のなか、同点止まりとなろうかという状況で。
試合終了まで数秒という極限の状況で、執念でもぎ取ったPK。そして、それを決めて劇的な逆転勝利。
ただ、それでも足りなかった。
2位の鹿児島がドロー決着。勝ち点こそ62で並んだものの、得失点差で上回られたことで、鹿児島の2位が確定。10年ぶりJ2復帰を目指したカターレの悲願は、成就できませんでした。
2位の鹿児島にとっては、勝てば無条件で、引き分けでも高確率で、負けてさえも富山が引き分け以下なら昇格確定。最終戦にまで決定持ち越しとは言ったものの、条件的には圧倒的に有利な状況でした。
勝ち点2差のカターレにとっては、勝利が最低条件。その上で鹿児島の敗戦を待つかたち。
分の悪い賭け。
けれど。
それもこれも、可能性がゼロではないからこそ言えるのであって。
4位以下のクラブにとっては、可能性は既に無し。最終戦に勝っても、鹿児島が負けても関係なく。
これまでは、最終戦を待たずに可能性が潰えていたカターレ。
だからこそ。
いかに厳しい条件であろうが、ゼロではないならば。
その可能性実現を目指して奮起することは、当然でした。
前節の晴れ渡った空の下での宮崎戦を経験しているからでしょうか。
富山県としてはこの時期らしいといえる、冷たい雨の降るあいにくの空模様。
前節がホーム最終戦であった鹿児島が、約12000人を動員したことを思えば。
平均が3千人代のカターレ、晴れていてさえも1万人越えは厳しかったろうに、そこに雨まで降っていては・・・。
しかし、それでも。
正直、4千人も入れば多いほうではないかと思っていた動員は、今シーズン最多の6453人。
ここまで最多であった松本戦(6225人)が、大量のアウェイ動員ブーストがかかっていてのものであったことを思えば。
鹿児島の半分?そんなこと関係あるか。
足元の悪いなかであっても、寒さが身にしみるなかであっても、それでも。
カターレの勝利を願う熱量が生んだ、今季最多動員。
それに価値がないなどとは言わせない。
熱気が天候をも動かしたのか。降り続いていた雨はやみ、時折日差しものぞくコンディションのなか、運命の最終戦はキックオフのときを迎えたのでした。
カターレが勝つのが最低条件として。鹿児島引き分けでも、7点を獲って勝ったなら得失点差で並び、総得点差でカターレが上回ることができるーーーもちろん、あまり現実的ではない話です。前節の6点も、15周年のカターレにとってのクラブ初。
それでなくとも警戒を厳としているであろう相手から7点は、いかにもきつすぎるだろう、と。
それでも、やる。
そのチャレンジで昇格の可能性が1%でも上がるならば。
選手たちの頑張りを、見ているだけじゃないさ。個人的に、スポーツくじWINNERを購入し、10口、2000円ほどつぎ込んでみました。
カターレの勝利以外ありえない、他になにも考えなくていいシチュエーションならば。信じる気持ちを、ひとつカタチにしてみるのも悪くないだろうと。
2-0勝利、3-0勝利、4-0以上勝利あたりに分散しつつ、もちろん本命は4ー0以上。
失点の可能性など排除。ここであえなく敗れるようでは、そもそもの前提が崩れる。
勝利だけを、ひたすらに願うならば。2試合連続無失点は、マストだろうよ。
・・・しかし。
8分、MF松村 航希に決められてしまい、いきなり失点。ビハインドを背負うことに。
終わった。ものの10分も経たずに、2試合連続無失点勝利を願掛けして買ったWINNER、終わった。
これも、先のホーム奈良戦で決められた超ロングシュートほどではないにせよ、田川の飛び出しの隙を突かれた形での失点。GKからのロングボールを跳ね返せなかったところをあっさりと繋がれ・・・ゴールキックからモノの数秒で決められてしまい。
正直言って・・・空気が沈んだ様子が、手に取るようにわかりました。
「また同じようにやられやがって!」などと田川を責める者もいたやもしれませんが、それは筋違いというもの。いかにこれまでの戦績で圧倒しているYS横浜相手とはいえ、相手もプロであれば、簡単なわけがない。そりゃ、失点だってするでしょうよ。
けれど・・・。
前節の6得点の勢いそのままに、あわよくば7点を獲って勝たねば!という試合で、いきなり出端をくじかれたのは・・・。
前節の大勝が単なるマグレ、ホームでは3試合連続ガッカリな結果で勝てていない、それこそが今のカターレの本質なのでは?ーーー誰も、直接そんなことを言ったわけではありません。ですが、それと感じさせるような、空気の沈みかた。
鏡を見ていたわけではないですが・・・あるいは、苦虫を嚙み潰したような表情での応援になっていたかもしれません。
当然のことながら、相手が違えば戦術も違う。そんななかで、いかに自分たちの型に相手を押し込んで優位に進められるか?というところでしたが・・・実際のところは、YS横浜のパスワークに翻弄されるケースが目立ち。それこそ、シーズン途中から就任した倉貫監督の叩き込んだスタイルがカタチとなっていたということなのでしょう。
1分1秒でも早く追い付き、追い越したかったカターレでしたが、なかなかゴールは遠く。焦っては相手の思うツボだったでしょうが、それでも悠長に構えてなどいられない。
後のない、最終戦なのだから。
重く沈んだ空気を一変させる、それが点取り屋・ストライカー。古今東西、どんなサッカーシーンでも変わらぬ真理でしょう。
そして、カターレ富山にはこの男がいました。
前半も終了間際、アディショナルタイムに入っていたなかで。
一連のカターレの攻勢のなかから、左サイドから安光が斜めのクロス。それをファーサイドで待ち受けていた駿太がヘッド!見事に決まり、同点に!
シーズン開幕戦のみならず、シーズン最終戦でも決めた!引退を表明した駿太のラストゲーム、ゴールを期待する声も多かったことでしょうが、それに応える値千金の同点ゴール!
これが、ストライカー。これが、高橋 駿太!
6千人を超えるホーム・県総が一気にヒートアップ。まさに、沈んでいた空気を一変させてみせたのでした。
最高の雰囲気で試合を折り返し、一気呵成に逆転まで行きたかったカターレでしたが・・・なかなか、その逆転ゴールにまではつながらず。
チーム状態は持ち直して、相手に決定的なチャンスを与えてしまうようなシーンは、ほぼ無かったと言ってもよかったかと。
しかし・・・攻め込みながらも、ゴールが遠い。
勝たねばならない一戦にあっても、小田切監督の方針にブレは無く。これまで同様、ベテラン・若手関係なく、状態の良い選手を起用。
途中交代で、ヨシキ、ショウセイの特別指定コンビ、そして柴田と若手を積極起用。
大一番であっても関係ない、信じた選手を起用するのみ、と。
もちろん、選手たちもそれは重々承知。チーム一丸となって勝つ、それだけだと。
ただ・・・遠い。ゴールが、遠い。
ハーフタイムでも、周りのファン・サポーターで鹿児島の試合がどうなっているかを確認しようとする者はいませんでした。
それよりもなによりも、まずは自分たちが勝たねば話にならないと。
同点ではダメ。なんとしても勝たねばならない。
けれども・・・やはり、ゴールが遠い。
あきらめてなど・・・あきらめてなど、やるものか!
カターレファン・サポーターの視線が、選手たちの一挙手一投足に釘付けとなっているなかで。試合は終了間際、後半アディショナルタイム。
もう、流れ云々じゃない、いかにボールを相手ゴールに押し込むか、ただそれだけ。
いよいよ、最後の最後。
CKの場面で、GKの田川までもが前線に上がり、いよいよラストプレーなのか?といった状況で。
ゴール前で一旦跳ね返されたボールが再びペナルティエリア内へと蹴り込まれると、それにダイビングヘッドで飛び込んでいった大畑!
が、その瞬間!
ボールを掻き出さんと振り抜いたDF二階堂 正哉のキックが大畑の顔面を直撃。もちろん、危険なプレーとしてファウル判定、イエローカードどころか、一発レッドも有り得たのでは?というなかで。
・・・それよりもなによりも、そこはペナルティエリア内。
つまりは、PKだと。
こんな状況、いったい誰が予想できたよ!?
まさに、千載一遇のチャンス。
ただ、前節のPKシチュエーションでボールを奪い合っていたマテウスも吉平も、すでに交代で退いた後。
そこでキッカーを務めることになったのが、シルバでした。
もう、細かいことはどうでもいい。ただ、決めてくれ!と。
そして。
蹴り込んだグラウンダーのボールはゴール隅に吸い込まれ。
逆転!土壇場で、逆転!!!
そして、タイムアップ。
欲しくて欲しくてたまらなかった最終戦勝利は、あまりにも劇的なかたちでもたらされたのでした。
・・・・・・
試合後、スタジアムが昇格確定の歓喜に沸くことは、ありませんでした。
もしも確定していたならば、裁判所の無罪確定の紙を持って走ってくる人よろしく、ピッチ内に飛び込んでくるスタッフなり関係者がいたはずです。
それが、無かった。
察した。
後から知ったところでは、一時は鳥取が先制し、鹿児島敗戦というフラグが立っていたとのことでしたが。
そこを追いついた鹿児島が、ドロー決着。
勝ち点62で鹿児島と富山が並ぶかたちとなったものの、得失点差で及ばず。
鹿児島がJ2昇格を決めた一方、カターレのJ3残留もまた決まったのでした。
「もし、あの試合で勝っていれば」
そんなことは、言いません。それを言っていいなら、3位以下の全てのクラブが、なにか言いたいことがあるはずです。
ただ、3位のカターレが、それを言うべき試合数がたった1試合分だった、と。そして・・・その1試合分が、あまりにも大きかった、それだけだと。
悲願成就は、ならなかった。
けれども。
降格が決定したときの絶望感を覚えている。その時のことを思えば。
確かに、あと1歩まで迫りながらも逃したJ2復帰は、悔しいですが。
選手たちが全力で取り組んできた成果、そのこと自体に嘘はありません。
その成果を、誇らしく思うことはあっても、悲観などしません。
この最終戦にしても、最後の最後まであきらめることなくプレーを続け、遂に勝利をもぎ取った。
結果は鹿児島次第ということは、わかっていたこと。
それに対して、自分たちのできる最大限のことを、やり遂げた。
そのこと自体を、なんら悲観する必要があろうかと。
「カターレ富山 俺たちの誇り 愛するこの気持ち もう止められない」
スタジアムに響く、チャント。選手たちにかけられた、激励、ねぎらい。
目標には、届かなかった。
けれど、この経験が無駄になってしまうことを意味するわけでは、決してない。むしろ、無駄になどしてたまるかよ!と。
願う結末とはならなかったけれど。
価値あるシーズンであったかと問われたならば、間違いなくYESとこたえるでしょう。
まずは、2023シーズン、お疲れさま。
そして、ありがとう。