現代人は、頭痛の原因となる物質に囲まれて生活していると言っても過言ではない。あなたの周りには頭痛の原因があふれている。今回は、口に入れる食品が関係するとみられる主な頭痛を考えてみよう。

 〔1〕グルタミン酸ナトリウム誘発頭痛

  国際頭痛学会は、食品によって引き起こされる頭痛を「食品および添加物誘発頭痛」としてまとめているが、この頭痛はその代表である。中華料理を食べ始めて 20〜30分すると、頭痛や動悸(どうき)に加えて顔が赤くなることがある。これを「中華料理店症候群」として、中華料理で大量に使用するうまみ調味料 (主成分はグルタミン酸)がその原因だと考えられていた時期があった。事実、ラーメンには高濃度(約1%)のグルタミン酸が含まれていることが多い。敏感 な人ではグルタミン酸3グラム(ラーメン1杯分)でこれらの症状をみるが、急激にグルタミン酸の血中濃度を上げるような食べ方(空腹時に慌ててスープを一 気飲みするなど)の影響が大きい。

 なお、グルタミン酸はチーズ(パルメザンチーズでは約2%)や昆布(こんぶ)、トマトにも多く含まれ、 現代人は日常的に相当量のグルタミン酸を摂取している。加えて、摂取したグルタミン酸の多くは腸で消費されてしまい、ほとんどが吸収されないので、あまり 神経質になることはないだろう。

 〔2〕ホットドッグ頭痛

 ハムやソーセージ、サラミなどに含まれる色素固定剤の亜硝酸塩 (狭心症の治療に用いられる)によって脳血管が広がって、ズキズキとした頭痛を起こすと考えられている。しかし、わが国での亜硝酸塩の使用量は、海外メー カーと比較すると極めて少なく、製造から1週間程度で残存量が激減するので、これも心配ない。なお、亜硝酸塩には細菌(特にボツリヌス菌)の増殖を抑える 働きがある。

 〔3〕ほかにもある

 このほかにも、特に「片頭痛」や「群発頭痛」などを引き起こす可能性がある赤ワインや チーズ、チョコレート、柑橘(かんきつ)類などが注意を要する。チーズに多く含まれるチラミン、チョコレートのβ−フェニールチラミンといった血管作動性 アミン(アミンは体内に存在する有機化合物)がその犯人なのだ。これらのうちカテコールアミンが外頸(がいけい)動脈(脳に行く動脈)を収縮させて、その 反動で脳血管が広がって頭痛を生じる。柑橘類に含まれるオクトパミンは、体内でカテコールアミンに置き換わって同様の作用を生じる。

 また、抗(こう)結核薬のイソニアジドを内服する人が、鮪(まぐろ)や鰹(かつお)など(ヒスチジンを多く含む)を食べると、「ヒスタミン誘発頭痛」を起こすことがあり、注意が必要だ。(近畿大学医学部麻酔科教授 森本昌宏)

頭痛持ちの人は、ご覧くださいませ。