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山内 康一
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河野太郎外相の外交演説:「河野節」炸裂
2019年 01月29日
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通常国会の冒頭には「政府4演説」と呼ばれる演説があり、それに対する代表質問から国会論戦がスタートします。政府4演説とは、総理大臣、財務大臣、外務大臣、経済財政政策担当大臣の4大臣による演説です。
4大臣の演説のなかでいちばんユニークだったのは、河野太郎外務大臣の「外交演説」でした。他の大臣の演説は役所の書いた原稿を読んでいるだけという感じです。しかし、河野外相の演説には「これは河野さん以外には出てこない発想だ」というポイントが随所にみられます。たとえば、、、
普天間飛行場の一日も早い辺野古移設を含め、地元の負担軽減に全力で取り組むとともに、沖縄の一層の成長につながる国際化支援を進めます。さらに米国の協力を得て英語教育を推進します。
文部科学大臣の演説でもないのに「英語教育を推進します」といった表現が、外交演説で出てくるのは「河野節」だと思います。英語教育くらいでは、辺野古移設への理解は得られないでしょうが。
2030年までにSDGsを達成するためには、毎年2兆5千億ドルの資金ギャップを克服しなければならないと言われていますが、我が国も始め、先進国の多くは厳しい財政制約に直面しています。そのため、革新的な資金調達メカニズムが必要です。グローバリゼーションから利益を得た者が、その利益の一部を人道支援のために国際機関に提供することが求められます。
昔から「トービン税」のように国際社会全体で税負担し、地球的規模の環境保護や人道支援、貧困対策などの原資する「国際連帯税」というアイデアはありました。フランスのように航空券に課税し、国際協力事業の原資にしている実例もあります。
国際連帯税みたいなアイデアは、だいたいリベラルな経済学者が提唱し、北欧諸国やカナダ・ニュージーランドなどが賛成するパターンが多いのですが、自民党政権の河野外相が発信した点がユニークです。実現したらよいと思うので、これについては応援したいと思います。
日本のNGO関連予算をまずは、三割程度積み増し、実施状況を見つつ、段階的に引き上げてまいります。その中で、NGOの一般管理費の引き上げについては、最大15%を見据えて検討していきます。
これはNGO関係者にとっては朗報です。河野さんの長年の持論でもあります。地味な項目ですが、NGOで働いていた者にとっては「一般管理費の15%」を負担してもらえるのは非常にありがたいです。管理費といっても人件費の割合が高いのですが、NGOスタッフの賃金水準は低いので、スタッフの待遇改善に向けた重要な一歩です。こんな地味な項目が、国会の外交演説に出てくることは珍しく、これも「河野節」だと思います。
日韓外交や日朝外交に関してはどうかと思う発言もありますが、少なくとも国際協力に関しては河野外相のイニシアチブを前向きに評価したいと思います。
あえて言うなら、日韓双方で厳しい言葉の応酬をするのはやめてほしいです。厳しい言葉を投げかけ、「毅然とした姿勢」を示せば、国内の世論は盛り上がるかもしれませんが、二国間の関係は悪化し、長期的な国益を損ないます。
北朝鮮の核開発や拉致問題を解結する上でも、米中新冷戦のグレートゲームで日本の立場を強化するためにも、韓国との良好な関係が不可欠です。国益を損なわないために厳しい言葉を使うのは避け、冷静に実務的に日韓外交を進めてほしいと思います。
客観的には、韓国側の方が日本側よりも厳しい言葉を使ってムリ筋な話をしているようにも見えますが、それでも日本の方が大人の対応をした方が長期的には国益に資すると思います。韓国を敵視したら、本当に敵になってしまいます。あくまで友好的に冷静に問題を解結してほしいものです。
最後に中曾根康弘元首相の言葉を河野外相に贈ります。
中庸で健全であるべき愛国心に対して、偏狭なナショナリズムが反作用的に出てくるのはありがちな話だが、国益を長期的観点から考え、短期的に起こる過度のナショナリズムに対して身を以て防波堤としてこれを抑えるのは政治の役割である。当然のことながら、相手国の言動や行動に刺激され、日本のナショナリズムを扇動するようなことがあってはならないし、国民への丁寧な説明と熟慮を重ねた冷静な外交こそが求められる。
かつて「タカ派」の代表だった中曽根総理が、いま自民党に現職議員として所属していたら「ハト派」に分類されるかもしません。政治の世界は右に傾いていますが、国民の意識はそれほど右に傾いていないと信じたいと思います。日本外交は中庸な道を選んでほしいと思います。
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