建設業界無視した万博の行く末 大阪経済部・黒川信雄
「年末までの着工で間に合うというのなら、間に合わせてほしい。しかし、設計図の作成や、許認可の申請ができているのかも分からない。だから〝何を根拠にしているのか〟と申し上げた」
7月下旬、産経新聞のインタビューに応じた日本建設業連合会(日建連)の宮本洋一会長(清水建設会長)の言葉には、大阪・関西万博の運営主体である日本国際博覧会協会への憤りがにじみ出ていた。宮本氏の言葉は、海外パビリオンの建設遅れをめぐる会見で「年末までにパビリオンを着工すれば間に合う」と発言した、協会の石毛博行事務総長に対するものだ。
約50ある海外政府の独自設計による「タイプA」パビリオンをめぐっては、新型コロナウイルス禍で直前のドバイ万博の開催が大幅に遅れたことや資材価格の急激な高騰、来年4月に建設業界に適用される時間外労働の上限規制などを背景に、各国政府と建設業者の契約が進まない実態が浮かび上がっている。協会は簡素な形のパビリオンを代理で発注するなどの案を示したが、独自パビリオンの建設を目指していた国からは困惑の声が上がる。
ただ、海外パビリオンの建設の困難さは以前から予想されていた。日建連は数年前から関西の支部などを通じて万博協会に早期の対応を求めていたが「聞く耳をもってもらえなかった」(関係者)という。ゼネコン各社も協会に懸念を伝えていたが「まったく反応がなかった」と明かす。そして、予想通り混乱が本格化した現実に、建設業界は怒りの色を隠さない。
協会はさらに、万博工事に関しては政府に時間外労働規制の上限を適用しないよう打診していた事実も判明した。政府は「単なる業務の繁忙では認められない」(加藤勝信厚生労働相)と受け入れない姿勢を示したが、規制の趣旨を考えれば当然のことだ。
協会は国や自治体、企業などからの派遣・出向職員から成り立っており、物事の決定が遅い問題がかねて指摘されていたが、実際に会場整備を担う建設業界の声をないがしろにしてきた責任は免れない。宮本氏は、撤退する国が出るならば万博の延期も考えるべきだとの考えを示したが、事態はその方向に向かっていると感じざるを得ない。
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【プロフィル】黒川信雄
平成13年日本工業新聞社入社。産経新聞経済本部、外信部を経て26年11月からモスクワ特派員を務めた。30年1月から経済部(大阪)。