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 大阪・関西万博の運営主体である2025年日本国際博覧会協会(以下、万博協会)の幹部が、24年春に始まる建設業界への時間外労働の上限規制について、万博会場の工事には適用しないよう政府側に要請していたとする報道が建設業界に波紋を広げている。大阪・関西万博を巡っては、参加国・地域が費用を負担して設計者や施工者を選定して整備する海外パビリオン(タイプA)の建設が遅れている。ただ、政府は除外について慎重な姿勢を見せる他、労働者側からは反発の声が上がっている。

大阪・関西万博の会場となる夢洲の2023年6月の状況(写真:生田 将人)
大阪・関西万博の会場となる夢洲の2023年6月の状況(写真:生田 将人)
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 建設業には工期の遅れや人手不足が懸念される「2024年問題」が差し迫っている。働き方改革関連法に基づく時間外労働の上限規制が24年4月1日から適用され、休日出勤や残業といった時間外労働は原則月45時間かつ年360時間、労使間の合意があったとしても年720時間が上限となる。

 「2024年問題」は資材高騰などと併せて、参加国・地域とゼネコンとの間で交渉が難航している要因の1つとなっている。パビリオンの建設に当たっては、大阪市に仮設建築物許可を申請したうえで確認申請も必要となるが、着工前に必要な基本計画書を提出した国・地域は2023年7月28日時点で韓国の1カ国のみだ。

 一方で、労働基準法33条1項が定める「災害その他避けることのできない事由」に該当する場合は、上限規制の適用外とする特例規定がある。厚生労働省からの通達によれば、地震や風水害等の災害への対応に加え、電気、ガス、水道などのライフラインや通信回線、道路交通の早期復旧のための対応などが含まれている。特例規定を適用するためには、時間外労働をさせる必要のある具体的事由や業務内容を労働基準監督署に届け出て、許可を得る必要がある。