本日はシェリー・マンです。マンについては本ブログでも過去にコンテンポラリー盤「アット・ザ・ブラックホーク」やアトランティック盤「ボス・サウンズ!」を取り上げましたが、名ドラマーとして50年代のウェストコースト・ジャズを支えました。ただ、今日ご紹介するインパルス盤はやや毛色の違う1枚です。
録音は1962年2月に東海岸で行われ、共演者にはテナーの重鎮コールマン・ホーキンス、ピアノ兼ヴァイブ奏者のエディ・コスタ、ベテランピアニストのハンク・ジョーンズ、そしてベースのジョージ・デュヴィヴィエと言ったイーストコーストで活躍する面々が名を連ねています。ただ、実はマン自身はマンハッタン生まれの生粋のニューヨーカーで、50年代に入ってLAに移住するまではニューヨークでプレイし、ホーキンスとも共演歴があるそうです。
アルバムタイトルの「2、3、4」は楽器編成のことで、ジャッキー・マクリーンの「4、5&6」と同じです。2とはシェリー・マンとコールマン・ホーキンスのデュオ、3はホーキンスが抜けてマンとエディ・コスタ、ジョージ・デュヴィヴィエによるトリオ。4はコスタの代わりにハンク・ジョーンズが入り、ホーキンス、デュヴィヴィエ、マンから成るカルテットです。
内容もなかなか挑戦的です。1曲目の"Take The A Train"はエリントン楽団のおなじみのスタンダード曲ですが、序盤からマンがスローテンポでリズムを刻む中、ハンク・ジョーンズがアグレッシブなピアノソロを取り、次いでホーキンスのテナーソロが始まるやミディアムテンポに転調します。最後は再びスローテンポで終わります。2曲目"The Sicks Of Us"はさらに変わっていて、コスタのヴァイブとドラム、ベースのトリオです。曲自体もエキセントリックでかなり実験的な音楽です。
3曲目"Slowly"はカルテット編成。この曲が最もオーソドックスな演奏でコールマン・ホーキンスのダンディズム溢れるバラードプレイが素晴らしいです。何だかんだ言ってこういう演奏が安心しますね。4曲目"Lean On Me"はトリオ編成。エディ・コスタが今度はピアノを弾いています。序盤はスインギーなソロですが、中盤になると低音を駆使した独特のうねうねしたソロを聴かせます。5曲目"Cherokee"も1曲目同様に変わったテンポ設定の演奏。マンのアグレッシブなドラムをバックにホーキンスがマイペースで悠然としたテナーソロを取ります。6曲目"Me And The Drums"はマンとホーキンスのデュオ。最初はホーキンスがピアノを弾き、次いでテナー1本でマンのドラムと渡り合います。曲自体はおそらく即興演奏です。以上、色々な楽器編成や演奏方法でジャズの可能性にチャレンジしていますが、個人的には"Slowly""Lean On Me"のような普通の演奏が好きです。