ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ジューン・クリスティ/サムシング・クール

2024-08-24 17:38:07 | ジャズ(ヴォーカル)

先日gooブログの「今日のひとこと」で「夏に聴きたい曲は?」の質問があり、その時は2000年にヒットしたフランスのポップグループ、タヒチ80の”Heartbeat"と書き込みました。他にも定番のビーチ・ボーイズ等洋楽だと色々候補が出てきたのですが、ジャズではあまり思いつきませんでした。一瞬アート・ファーマーがミシェル・ルグランの名曲をカバーした”The Summer Knows"が思い浮かんだのですが、曲調的には哀愁漂う感じですしね。ガーシュウィンの”Summertime"に至ってはもっと暗いです。でも、夏の名曲と言えばこれがありました。ジューン・クリスティの”Something Cool”。暑い夏にはやっぱり冷たい清涼飲料ですよね!1954年にキャピトル・レコードから発売されたこの曲、歌手ジューン・クリスティの代表曲に挙げられるだけでなく、同名のアルバムもジャズヴォーカル史上に残る傑作として名盤特集等でも必ず挙げられます。

ジューンは1940年代半ばから1950年代初頭までスタン・ケントン楽団に在籍していましたが、本作でもケントン楽団時代からの盟友であるピート・ルゴロをアレンジャーに迎え、西海岸で活躍するケントニアン(ケントン楽団員)を多数起用しています。ジューンの夫であったボブ・クーパー(テナー)はもちろんのこと、トランペットにメイナード・ファーガソン、ショーティ・ロジャース、トロンボーンにフランク・ロソリーノ、アルトにバド・シャンク、バリトンにボブ・ゴードン、ピアノにクロード・ウィリアムソン、ドラムにシェリー・マンらですね。ただ、彼らはアンサンブルに徹しており、各楽器のソロはありません。

全部で11曲収録されていますが、最大の聴きどころはやはり1曲目でタイトルトラックの”Something Cool”でしょう。この曲はいわゆる昔から歌い継がれてきたスタンダード曲ではなく、ビリー・バーンズと言う作曲家の書き下ろしで、このジューン・クリスティのバージョンが最初のレコードだそうです。タイトルだけ見るともっと爽やかな曲かと思いますが、歌詞は中年女性がバーで冷たい飲み物(something cool)を片手に過ぎし日の華やかな思い出を寂しく独り語りするという切ないもので、センチメンタルなメロディをジューンが情感たっぷりに歌い上げます。文句なしの名曲と思うのですが、なぜか他の歌手にはあまりカバーされていません。youtubeで検索するとジュリー・ロンドンらのバージョンも出てきますが、数は少ないですし、内容も断然ジューンのオリジナルが優れています。やはりジューンの歌が決定盤として認知されているので他の歌手も取り上げにくかったのでしょうね。

2曲目以降は"It Could Happen To You"”This Time The Dream's On Me""Midnight Sun""I'll Take Romance"等お馴染みのスタンダードが並びますが、それらの出来も全て水準以上です。特にバラードの”The Night We Called It A Day”はなかなかの名唱と思います。ジューンの少しハスキーがかった伸びのあるヴォーカルは素晴らしいですね。ジューンはこの後もキャピトル・レコードの看板シンガーとして20枚以上ものアルバムを同レーベルからリリースします。本作以外では同じピート・ルゴロ楽団のサポートを受けた「フェア・アンド・ウォーマー」もおススメです。

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