本日はオリヴァー・ネルソンの記念すべき初リーダー作を取り上げたいと思います。ネルソンについては過去に「テイキング・ケア・オヴ・ビジネス」を取り上げましたが、そこでも述べたようにむしろアレンジャーとしての名声の方が高いかもしれません。ソニー・ロリンズ、スタンリー・タレンタイン、リー・モーガン、ジミー・スミス、ウェス・モンゴメリーら多くのジャズマンの作品を手掛けるだけでなく、70年代以降は映画やテレビ音楽の世界でも大活躍したそうです。一方、テナー奏者としても確かな実力を持っており、特にプレスティッジ・レコードにはスモールコンボの作品も多く残しています。
今日ご紹介する「ミート・オリヴァー・ネルソン」はタイトルから推測できるように彼の初リーダー作で、1959年10月30日にプレスティッジ傍系のニュージャズに吹き込まれたものです。メンバーはケニー・ドーハム(トランペット)、レイ・ブライアント(ピアノ)、ウェンデル・マーシャル(ベース)、アート・テイラー(ドラム)。27歳の若きテナーマンを盛り立てようと錚々たる面々が名を連ねています。
全6曲、うち4曲はネルソンが作曲しており、この時点で作・編曲者の才能の片鱗を見せています。1曲目”Jams And Jellies”はネルソン作のシンプルなブルースで、ネルソンの伸びやかなテナーソロの後、レイ・ブライアント、ケニードーハムがブルージーなソロを聴かせてくれます。2曲目”Passion Flower"はビリー・ストレイホーン作のバラード。デューク・エリントン楽団の花形アルト奏者であるジョニー・ホッジスの演奏で有名ですが、ここでのネルソンも負けじと官能的なテナーソロを披露してくれます。続く”Don't Stand Up"と”Ostinato"は両曲ともネルソン作の痛快ハードバップ。ネルソン、ドーハム、ブライアントが気持ちよさそうにソロをリレーして行きますが、特に後者はキャッチーなメロディを持つ名曲と思います。5曲目”What's New"はお馴染みのスタンダード曲ですが、良くも悪くもオーソドックスなバラード演奏であまり印象には残りません。ラストも自作曲の”Booze Blues Baby"。文字通りのブルース曲でネルソンはもちろんのことブライアントのソウルフィーリングたっぷりのピアノソロが光ります。ネルソンのテナーは特にクセのない正統派で、彼自身を含めドーハム、ブライアントら名手たちのプレイが楽しめる隠れた逸品です。