ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

エルモ・ホープ/インフォーマル・ジャズ

2024-08-06 18:07:25 | ジャズ(ハードバップ)

昨日のフレディ・レッドに続いて、通好みのピアニストであるエルモ・ホープを取り上げたいと思います。当ブログでも以前に「ホープ・ミーツ・フォスター」を取り上げましたが、作品数は多くないながらもビバップ~ハードバップ期に確かな足跡を残したジャズマンです。ピアニストとしても一流で作曲面でも稀有な才能を持っていましたが、メジャーな存在になり切れなかった原因はやはり麻薬。ヘロイン中毒のためたびたび活動を中断せざるを得ず、最終的には1967年に過剰摂取が原因で43歳の若さで亡くなります。

本作「インフォーマル・ジャズ」はそんなホープが最も活動的だった1950年代半ばの作品。名門プレスティッジ・レコードに1956年5月7日に吹き込まれたものです。この作品、参加メンバーがエグいですよ。セクステット編成でフロントラインがドナルド・バード(トランペット)、ハンク・モブレー&ジョン・コルトレーン(テナー)、リズムセクションがホープ、ポール・チェンバース(ベース)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ドラム)です。コルトレーン、チェンバース、フィリー・ジョーの3人は黄金のマイルス・デイヴィス・クインテットのメンバーですし、そこに当時ジャズ・メッセンジャーズに所属していたバード&モブレーが加わると言うラインナップ。もうこの時点で演奏を聴く前からほぼ名盤確定という気もします。

内容の方も期待に違わぬ出来です。1曲目”"Weeja"は一応ホープのオリジナルとなっていますが、どこかで聞いたことがある曲。どうやら出だしの部分のリフがマイルス・デイヴィスの"Denial”、それ以外はチャーリー・パーカーの”Confirmation"をベースにしているようですね。ソロ先発はバードでブリリアントなトランペットを響かせた後、モブレーとコルトレーンがテナーチェイスを繰り広げます。その後で満を持してリーダーのホープが登場し、チェンバースのアルコソロ→フロント3人とフィリー・ジョーのドラムとの掛け合いと続く展開。ハードバップの魅力が詰まったような曲で、もう私なんてこの時点で大満足ですね。

2曲目”Polka Dots And Moonbeams"はスタンダードでジミー・ヴァン・ヒューゼン作の美しいバラード。まずバードが高らかにテーマメロディを歌い上げ、その後各人がソロをリレーしますが、コルトレーンのソロは控え目で後年のような飛翔するアドリブはまだ出てきません。バードが主役の曲ですね。3曲目”On It"は再びホープ作のバップ曲。バード→ホープのソロの後、モブレーとコルトレーンがテナーバトルを繰り広げます。この2人、演奏スタイルは全然違うのですが、ちょいちょい共演してますよね。「テナー・コンクレイヴ」もそうですし、ジョニー・グリフィンの「ア・ブローイング・セッション」、マイルス・デイヴィスの「サムデイ・マイ・プリンス・ウィル・カム」もそうです。4曲目”Avalon"は定番スタンダードですが、”Polka Dots~"と違い原曲のメロディは最初だけで、すぐにアドリブパートに入り、ホープ→モブレー→バード→コルトレーン→チェンバースのアルコ→フィリー・ジョーとソロをリレーし、大団円を迎えます。

これほど充実した作品を発表したホープですが、麻薬の悪癖を断ち切れなかったため、ニューヨークのナイトクラブへの出演許可証を取り消されてしまいます。事実上の追放処分を受けたホープは翌1957年に西海岸に移住し、4年ほど滞在。その期間の作品の中にはいくつか良いものもありますが(以前取り上げたカーティス・カウンスの「エクスプローリング・ザ・フューチャー」もその一つ)、結局ジャズのメインストリームには仲間入りできませんでした。本作にサイドメンとして参加した全員がジャズ・ジャイアンツと呼ばれる存在になったのとは対照的ですね。

コメント