本日はピアニストのフレディ・レッドをご紹介したいと思います。作品数自体は決して多くはないですが、天下のブルーノートに2枚のリーダー作「ザ・コネクション」「シェイズ・オヴ・レッド」を残していることで、ジャズファンの間の知名度はそれなりに高いと思われます。特に後者はジャッキー・マクリーンやティナ・ブルックスを起用した哀愁漂う作風で、日本のジャズファンの琴線に触れずにはおれない名盤です。
そんなレッドですがブルーノート在籍前の1957年に1枚だけリヴァーサイドにリーダー作を残しており、それが本日ご紹介する「サンフランシスコ組曲」です。レッドはニューヨーク生まれのニューヨーク育ちですが、1956年から短期間サンフランシスコに住んでいたようで、その時の印象を組曲風に書き下ろしたのが本作と言う訳です。トリオ形式でベースはジョージ・タッカー、ドラムはアル・ドレアレス(ドリアース表記もありますがどちらの発音が正解かは知りません)が務めています。
全7曲、レッドの自作曲が4曲、スタンダードが3曲と言う構成ですが、ハイライトは何と言っても1曲目の”San Francisco Suite"でしょう。5つのパートから成る13分余りの組曲で、それぞれ「サウサリートから見た金門橋」「グランド・ストリート(チャイナタウン)」「バーバリー・コースト」「午前3時から7時までのカズン・ジンボ」「夜明けのシティ」の副題が付いています。私も20年以上前に旅行で4~5日滞在しましたがサンフランシスコは坂の上から海が見える風光明媚な港町で、レッドもそれらの情景を頭に浮かべながら曲を書いたのでしょう。とりわけ最初と最後に出てくる美しいテーマメロディが胸に響きます。
2曲目以降は普通のピアノトリオでオリジナルとスタンダードが半分ずつ。スタンダードの方はアップテンポで料理されたアーサー・シュワルツの”By Myself"、人気ミュージカル「ショウボート」の収録曲”Ol' Man River"、ケニー・ドリューも取り上げたクルト・ワイルの名曲”This Is New"で、個人的には美しいバラードに仕立てられた”This Is New”がおススメです。自作曲もバラエティ豊かでスインギーな"Blue Hour"、サビの部分のメロディが「蒲田行進曲」に似ている”Minor Interlude"、パトロンとして有名なパンノニカ男爵夫人に捧げたドライブ感たっぷりの”Nica Steps Out"等粒揃いの曲ばかりです。ずばりピアノトリオの隠れた名盤と思います。