ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ナット・アダレイ/ザッツ・ナット

2024-08-21 18:35:29 | ジャズ(ハードバップ)

本日はナット・アダレイの記念すべき初リーダー作をご紹介します。1955年7月26日にサヴォイ・レコードに吹き込まれたもので、ジャケットのダサさ加減がサヴォイならではですね。実は本作の2週間前にナットの兄キャノンボールもサヴォイにデビュー作「プレゼンティング・キャノンボール」を吹き込んでおり、ナットも参加しています。この兄弟は基本的にニコイチで行動することが多く、同年にキャノンボールがエマーシー・レコードに移籍するとナットも一緒に移籍。1958年にもリヴァーサイド・レコードに兄弟ともに移籍しています。

ただ、演奏の方も常に一緒というわけではなく、本作にはキャノンボールは参加していません。代わりにサックスを吹いているのはジェローム・リチャードソン。どちらかと言うとフルート奏者としての活躍の方が目立ちますが、本作では1曲を除いてテナーを吹いています。リズムセクションはサヴォイのハウス・ミュージシャンと言って良いハンク・ジョーンズ(ピアノ)、ウェンデル・マーシャル(ベース)、ケニー・クラーク(ドラム)です。

全6曲、うちスタンダードが2曲で後はジャズ・オリジナルです。演奏には参加していないキャノンボールですが、曲作りにはナットと共同でペンを振るっており、オープニングトラックの陽気な”Porky"、ブルースナンバーの3曲目”Big "E""、チャーリー・パーカーの”Yardbird Suite"を少し崩した感じの4曲目”Kuzzin's Buzzin'"を書き下ろしています。この辺りはさすがアダレイ兄弟と言った感じのファンキーな曲調です。ナットのコルネットはもちろんのこと、ジェローム・リチャードソンのテナーも好調です。

ただ、このアルバムに関してはバラードの方が良いですよね。2曲目”I Married An Angel"は曲名からしてロマンチックなバラードです。ハンク・モブレーもサヴォイ盤で演奏してましたね。ナットは変に小細工をしないストレートな演奏で高らかにバラードを歌い上げます。何より素晴らしいのがラストラックのバラード”You Better Go Now"。この曲ではジェローム・リチャードソンがテナーをフルートに持ち換えて、透き通るような美しい音色でメロディを歌い上げます。ナットのソロ、ハンク・ジョーンズの玉を転がすようなピアノタッチも良いですが、主役はフルートと言って良いでしょう。ナット・アダレイと言えば”Work Song"に代表されるようにファンキー野郎のイメージが強いですが、意外とバラードも良いぞと思わせる1枚です。

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