ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

サム・ジョーンズ/ザ・チャント

2024-08-13 19:22:25 | ジャズ(ハードバップ)

本日はサム・ジョーンズを取り上げたいと思います。ポール・チェンバース、ダグ・ワトキンスと並ぶハードバップ3大ベーシスト(私が勝手に決めただけですが・・・)の1人で、ブルーノートにもサイドマンとして多くのの吹き込みを残していますが、ホームと呼べるのはリヴァーサイド・レコードです。キャノンボール・アダレイのバンドのレギュラーメンバーとしてリヴァーサイドの名作群に全て参加していますし、自身のリーダー作も本作含め3枚残しています。

今日ご紹介する「ザ・チャント」は1961年1月に録音されたリヴァーサイド2作目です。サム・ジョーンズ・プラス10と書いてあるように、10人編成の小型ビッグバンドをバックに従えた編成です。メンバーは凄いですよ。1月13日のセッションが、ナット・アダレイ(コルネット)、ブルー・ミッチェル(トランペット)、ジミー・ヒース(テナー)、キャノンボール・アダレイ(アルト)、テイト・ヒューストン(バリトン)、メルバ・リストン(トロンボーン)、レス・スパン(ギター)、ヴィクター・フェルドマン(ピアノ)、ルイス・ヘイズ(ドラム)とリヴァーサイドが威信をかけて集めた一流プレイヤー達が勢揃いします。

1月26日のセッションはホーンセクションは同じで、ギターのスパンが抜けてヴィクター・フェルドマンがピアノではなくヴァイブで参加。ピアノには代わりにウィントン・ケリーが入ります。さらに注目すべきはベースにはキーター・ベッツと言う別のベーシストが入り、サム・ジョーンズがチェロを弾くこと。チェロと言えばどうしてもクラシックの楽器のイメージが強いですが、ジャズでも少数ながら演奏者がいます。レイ・ブラウンやオスカー・ペティフォード、ロン・カーターなどベーシストが余芸で披露することが多いですが、チコ・ハミルトン楽団のフレッド・カッツのようにチェロ専門の人もいるようです。ベースのピチカート・ソロに比べれば、音がよく出て分かりやすいので、ソロを取るには向いているかもしれません。

全8曲。1~3曲目と8曲目が1月13日録音で、サム・ジョーンズがベースを弾くセッションです。全ての曲でサムがピチカートでソロを取りますが、やはりそれだけだと地味過ぎるのでホーンセクションによるアンサンブルとサックス、トランペット等のソロを織り交ぜています。なお、アレンジは曲によってヴィクター・フェルドマンとジミー・ヒースが交代で担当しています。

1曲目はタイトルトラックの”The Chant"。いかにもキャノンボール・アダレイが演奏しそうなファンキーな曲で、当時キャノンボールのバンドでピアノを弾いていたヴィクター・フェルドマンの作・編曲です。この人はイギリス人なのに黒っぽい曲を書きますね。2曲目”Four"はご存じマイルス・デイヴィスの名曲。ジミー・ヒースのゴージャスなアレンジに載せて、サム、ブルー・ミッチェル、ヒースがソロを取ります。3曲目”Blues On Down"はベニー・ゴルソン作のファンキーチューンで本作中唯一キャノンボール・アダレイがソロを披露します。8曲目”Off Color"はルディ・スティーヴンソンの書いたカッコいい曲。スティーヴンソンは本業はジャズ・ギタリストらしいのですが、作曲者としてウィントン・ケリーによく曲を提供しています。ヴィクター・フェルドマンのシャープなピアノソロが光ります。

1月26日のセッションの方ですが、こちらはサム・ジョーンズのチェロにスポットライトが多く当たった演奏です。4曲目”Sonny Boy"はジミー・ヒースのアレンジに乗ってサムがチェロでソロを取りますが、きちんとメロディを歌い上げるのがすごいですね。ウィントン・ケリー、ブルー・ミッチェルもソロで彩りを添えます。5曲目”In Walked Ray"はレイ・ブラウンに捧げたサムのオリジナルだそうですが、メロディはオスカー・ペティフォードの”Bohemia After Dark”に酷似しています。ヴィクター・フェルドマンがここでは涼しげなヴァイブの音を響かせます。6曲目”Bluebird"はチャーリー・パーカーのバップ曲。サムがチェロでパーカーのフレーズを歌い上げます。7曲目”Over The Rainbow"はご存じ「オズの魔法使い」の曲で、本作唯一のバラードです。サムがチェロでお馴染みのメロディを歌い上げ、フェルドマンのヴァイブとミッチェルのトランペットがムードを高めます。あまり聴き慣れないジャズチェロの世界ですが、適度にホーン奏者のソロも入っているのでハードバップ好きでも楽しめる内容と思います。

 

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