ハードバピッシュ&アレグロな日々

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ジミー・スミス/オルガン・グラインダー・スウィング

2024-08-19 18:47:03 | ジャズ(ソウルジャズ)

1956年に「ア・ニュー・サウンド・ア・ニュー・スター」で鮮烈なデビューを飾ったジミー・スミスは、その後5年余りの間に20枚以上ものリーダー作をブルーノートから発表するなど、同レーベル最大の売れっ子スターでした。そんなスミスですが、1962年にヴァーヴ・レコードに新天地を求めます。ブルーノート時代のスミスはスモールコンボでハードバップをベースにした演奏をメインにしていましたが、ヴァーヴではビッグバンドをバックに従えたよりコマーシャルなジャズを追求します。その目論見は成功し、オリヴァー・ネルソンのアレンジによる「ホーボー・フラッツ」はビルボードのアルバムチャートで最高18位、ラロ・シフリンのアレンジによる「ザ・キャット」は最高12位と言うジャズの世界にとどまらない大ヒットを記録します。一例のビッグバンド路線はその後も続くのですが、その中で異色とも呼べる作品が本日ご紹介する「オルガン・グラインダー・スウィング」です。

1965年6月に吹き込まれた本作はジミー・スミスの原点回帰と言って良いオルガン+ギター+ドラムによるトリオ作品。ギターにはスミスとはブルーノート時代からたびたび共演しているケニー・バレル、ドラムには当時まだ新進気鋭のドラマーだったグラディ・テイトが入っています。上述「ザ・キャット」等とは趣向が違いますが、それでも本作も見事にヒットし、ビルボードで最高15位を記録します。基本的にヒットチャートとは無縁のジャズ界において、当時のジミー・スミスがどれほど人気があったかがよくわかります。

アルバムはまずタイトル曲の”Organ Grinder's Swing"で始まります。タイトルからしてまるでジミー・スミスのために作られたかのような曲ですが、実際は1930年代のスイング時代の曲だそうです。ベニー・グッドマン楽団の演奏もyoutubeで聴けるので試しに聴いてみたのですが、まるで別の曲ですね。本作のバージョンはノリノリのファンキージャズで、ケニー・バレルのソウルフルなギターソロ→スミスのオルガンソロと続きます。2曲目”Oh No, Babe”はスミス作のコテコテのスローブルースで、スミスがまさに糸を引くというような表現がぴったりのオルガンを聴かせます。3曲目”Blues For J"も自作のブルースで、スミスが文字通りうなり声を上げながらオルガンを弾きまくります。キース・ジャレットもソロの最中にうなることで有名ですが、あちらが高い声なのに対しスミスのはまるで野獣のような低い声ですね。

4曲目”Greensleeves"はヴォーン=ウィリアムズがクラシック曲にしたことでも知られるイギリスの古い民謡。ジャズでもジョン・コルトレーン等が取り上げています。序盤は原曲のメロディを活かした展開ですが、後半にかけてスミスが縦横無尽にオルガンを弾きまくります。前半のバレルのギター・ソロもカッコいいです。5曲目"I'll Close My Eyes"は歌モノスタンダードで、ハードバップ好きならまずブルー・ミッチェルやディジー・リースの演奏を思い浮かべますが、本作では意表を突いてバラードで料理されています。スミスにせよ、ケニー・バレルにせよバラード表現の美しさも特筆すべきものがありますよね。ラストはエリントン・ナンバーの"Satin Doll"を軽快なミディアムチューンに料理して終わります。前半はコテコテ、後半はポップな構成で、バランスの取れた好盤だと思います。

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