Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

(本)噂のストリッパー

2023-03-25 | 映画(ま行)

◼️「(本)噂のストリッパー」(1982年・日本)

監督=森田芳光
主演=宮脇康之 岡本かおり 三崎奈美 太田あや子

70年代に名子役として人気があった宮脇康之。「ケンちゃん」シリーズは子供の頃に見ていて、家には「ケーキ屋ケンちゃん」の主題歌が収められたオムニバスのLPレコードがあった。ドラマの記憶はおぼろげだけど、主題歌は歌えるレベルで覚えているw。

そんなケンちゃんがにっかつロマンポルノに主演した作品で、森田芳光が監督・脚本、助監督は那須博之。高校生の頃「ロードショー」誌に載った紹介記事で、存在は知っていたけれど今回が初鑑賞。2023年3月でサービス終了となるGyao!で配信を見つけた。

ステージで流される昭和歌謡の数々に時代を感じる。オープニングタイトルでは平山美紀の「真夏の出来事」。ヒロイン岡本かおり演ずるグロリアの登場する舞台では、アン・ルイスの「リンダ」が彼女のテーマソングとして繰り返し流れる。竹内まりや作詞作曲、山下達郎のコーラスが美しいこの曲。近頃のシティポップス再評価で巷で聴くことも多いだけに、こんな場面で使われているのか…😟とビックリ。

周りの踊り子さんたちの「はい、いらっしゃーい!」って明るいキャラとは違って、岡本かおり演ずるグロリアはやや控えめ。しかしプロに徹したいのとお金の為もあり、映画のクライマックスでは"まな板ショー"までするようになる。ケンちゃんはその虜になっていく。

配達バイトで知り合った女性といい仲になるケンちゃん。「蛍の光」を1日の終わりに聴きたがる不思議なキャラの女性だ。ところがグロリアが地方巡業から浦安劇場に戻ったのを知って、「恋人が戻ってきたから別れよう」と言い出す。彼はもはやストーカーではないか😰。

ケンちゃんの声かけを無言でかわすグロリアの冷たさ。ラストはちょっと切ない。ロマンポルノとしての見せ場と青春映画ぽさが同居する。

※タイトルは「まるほん」と読む。





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ミクロの決死圏

2023-01-26 | 映画(ま行)

◼️「ミクロの決死圏/Fantastic Voyage」(1966年・アメリカ)

監督=リチャード・フライシャー
主演=スティーブン・ボイド ラクウェル・ウェルチ ドナルド・プレゼンス アーサー・ケネディ

少年だった頃、児童書でこの映画が紹介されているのを見た。多分小学館の「なぜなに学習図鑑」じゃないかと思う。潜水艇で人体に入っていくお話がカラー写真付きで紹介されていて、すげえ映画に違いないと心に焼き付けられた。中学生の時分に伯父の家を訪れたら、書斎の本棚にハヤカワ文庫、名だたるSF小説がずらりと並んでいて歓喜。何冊か持って行けと言うので、迷わず選んだのはアイザック・アシモフによる小説版「ミクロの決死圏」だった。映画を初めて観たのもその頃だったかな。

新たに開発された物質をミクロ化する技術。これをさらに発展させる方法を知る科学者を東側から迎えた。ところが到着後襲撃に遭い、脳内に怪我をしてしまう。潜水艇をミクロ化して血管から患部に近づき、レーザーで治療する作戦を実行することになる。ところが5人の乗組員の中にスパイが?

困難な任務というスリルに疑心暗鬼を誘うスリルの相乗効果。危機また危機。そして何よりも誰もが見たことのないミクロサイズから見る人体。SFX技術やCGのない時代に工夫を凝らした映像が面白い。リチャード・フライシャー監督は、常に挑戦的で誰も手がけないような題材にも挑んできた人。

現代医学なら血管内視鏡の技術である程度やれちゃうのでは?と考えてしまう自分がいる。その考え傍に置いとけw。






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モナリザ

2023-01-13 | 映画(ま行)

◼️「モナリザ/Mona Lisa」(1986年・イギリス)

監督=ニール・ジョーダン
主演=ボブ・ホスキンス キャシー・タイソン マイケル・ケイン ロビー・コルトレーン

刑務所を出たジョージは、昔のつながりから黒人娼婦シモーヌのドライバーに雇われた。気が短くて口も悪いし、ファッションのセンスなんてない。別れた妻は娘に会うことも許してくれない。最初は互いを嫌っていたシモーヌとジョージだったが、毎日過ごすうちに不思議な信頼関係が築かれていく。シモーヌは友人を探して欲しいとジョージに頼む。やがて淡い恋心にも似た気持ちを抱き始めたジョージは、彼女のトラブルに自ら巻き込まれていく。

冴えないけれど人間味のある主人公を演じたボブ・ホスキンスが素晴らしい。友人トーマスとの会話の中で、黒人娼婦と呼んでいたのが、いつしか"レディ"だと言うようになる。娘に会わせてもらえないから、学校の前で車から視線を送る優しさ。トーマスとミステリー小説について会話する場面がいい雰囲気。そこでシモーヌとの関わりを小説ネタとして口にする姿は、彼女のことばかり考えてしまう中年男の単純さ、いや一途さの現れだろう。

シモーヌの友人を悪役モートウェルの屋敷から助け出してからは、次々に起こる展開が切ない。シモーヌへのジョージの気持ちは、決して叶えられるものではなかった。主人公にとって救いのないクライマックス。冴えない中年男の男泣き。どれだけ愕然としただろう、と思うともらい泣きしそう。やっぱりダメ男が頑張る映画に僕はついつい共感してしまう。

車を愛でる映画でもある。ジョージの愛車がクリーム色のクラシカルなジャガーというセレクトがいい。また、ニール・ジョーダン監督作は音楽のセレクトも好み。本作では、ナット・キング・コールのMona Lisaが、謎めいた女性をイメージさせるようにメインテーマとして使われている。ジョージが色街でシモーヌの友人を探す場面では、ジェネシスのIn Too Deepが流れる。遂げられない気持ちが歌われる曲だが、中盤で使われたのは伏線だったのかもしれない。フィル・コリンズの風貌をボブ・ホスキンスと重ねた?それは考え過ぎw

友人トーマスを演じたロビー・コルトレーンの代表作の一つは「ハリー・ポッター」のハグリッド役。主人公を黙って支える大男がほんとに似合う人だ。




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マイ・ブロークン・マリコ

2022-10-08 | 映画(ま行)


◼️「マイ・ブロークン・マリコ」(2022年・日本)

監督=タナダユキ
主演=永野芽郁 奈緒 窪田正孝

トモヨとマリコの関係を何と呼んだらいいのだろう。親友?でも「シイちゃんに彼氏ができたら死ぬ」とかなかなかめんどくさい女子のマリコ。依存?「あたしには正直あんたしかいなかった」とトモヨ。共依存?。恋とも違う女子の連帯関係は、男にはうまく表現できない。だって男って、相手と同じところに属しているか、何かを共有してる間柄でもない限り関係が長続きしにくい生き物。しかもなかなか腹を割れない。男の方がめんどくさいのかもな。ともあれトモヨとマリコを単なる幼なじみとくくるのでは足りないシスターフッド。幼い頃からお互いの苦しみを知っている関係。

それなのにマリコが突然の飛び降り自殺。しかもトモヨには何も遺さずに。マリコに虐待を繰り返していた親から遺骨を奪ったトモヨは、二人で行こうと言っていた海へと向かう。

ガサツだけどタフなトモヨのキャラクターが実にいい。マリコからの手紙が入った缶、履き古してカビ臭いDr.Martin、マリコとツーショットの写真。さらに窪田正孝演ずる釣り人が「名乗る程の者じゃございません」と言いながら振り向くと思いっきり名前書いてるクーラーボックスとか、キャラクターを表現する小道具の使い方が素敵だ。明るい笑顔のイメージがある奈緒演ずるマリコが、壊れていく様子が見ていて痛い。お前が悪いと虐待されて、それを真剣に怒ってくれる友達。喫茶店でその友達に感覚がおかしいと言われて、表情を変えずに「ブッ壊れてるんだよ」という場面の説得力。

原作コミックは未読なので比べることはできないけれど、とにかく台詞の一つ一つがじわじわ胸にくる。特に心に残るのは窪田正孝が駅のホームで言うひと言。
「死んだ人に会いたいと思うなら、自分が生きなきゃいけないんじゃないですかね」
これは心にしみた。誰かがいなくなって、泣きじゃくって生きるだの死ぬだの大騒ぎしたけど、それでも日常はやってくる。群衆に紛れていくシーンも素敵だ。タナダユキ監督の「ふがいない僕は…」もそうだったけど、ボソッとつぶやくひと言にいろんな気持ちが感じられて、映画が終わって噛み締めてしまう。「シイノトモヨ、恥ずかしながら帰って参りました」との帰還兵のような台詞が心に響いた。そして無言のラストシーン。永野芽郁の息づかいとトモヨの気持ち。エンドクレジットで流れる「生きのばし」の歌詞が心に響いた。

これで85分。なんて素晴らしい。




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メッセージ

2022-09-17 | 映画(ま行)





◼️「メッセージ/Arrival」(2016年・アメリカ)

監督=ドゥニ・ヴィルヌーヴ
主演=エイミー・アダムス ジェレミー・レナー フォレスト・ウィティカー

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品は、「ブレードランナー2049」や「DUNE/デューン 砂の惑星」は支持している一方で、「複製された男」は全く理解できなくてレビューが書けずにいる。「メッセージ」は賛否分かれる感想を聞き、ちょっと観るのをためらっていた。どんな第一種接近遭遇映画となるのだろう。「未知との遭遇」世代のおじさんなので、ファーストコンタクトという言葉を使うのためらってしまうw。

予想以上に単刀直入な導入部。えらいことが起こっているのだが、これまでの宇宙人襲来映画と違ってあまりにも静かだ。攻撃されるわけでもなく、パニックに陥る人々の姿はニュース画面の中で淡々と流れるのみ。主人公はそんな不安をシェアできるパートナーもおらず、職場からも人がいなくなる。この孤独が映画の終わりにはガラッと変わる。来訪者の謎を解くという流れと共に、もう一筋の人間模様が展開されているのだ。こういう感じ、好き。

接近遭遇映画(すいません、この表現がやっぱり自分にはしっくりくる💧)は、エイリアンのビジュアルがとにかく話題になる。この映画に登場するヘプタポッドもクラシックSF小説に登場しそうなタコ、イカ型異星人にも見える。他の映画と違って面白いのは、言語を通じて互いの理解を深めようとしているところだ。結論を急ぐ軍や政府に対して、「地球に来た目的は?」のひと言を投げる為に少しずつ意思疎通を図る様子が実にスリリングで面白い。

その裏で戦闘に踏み切ろうとする動きを、ヒロインとそのチームが阻止しようとするクライマックスには息を呑む。大げさな劇伴もなく、ドンパチもないのに引き込まれる。断片的に続いていくセッションがとても効果的なのだ。次に何が起こるのか?と先を急ぐ気持ちと、さっきのエイリアンの言葉の真意は?とストーリーを反芻する気持ちが入り混じって、進展は少しずつなのに焦ったさがないのだ。そのバランスが絶妙。小難しい映画なのは間違いないのだけれど、それを感じさせない工夫がある。

そして映画を通じてヒロインが悩まされていたフラッシュバックの意味も解き明かされる。エイリアンが地球にもたらそうとするものが何なのか。それを言葉で解決する展開。CG全盛の昨今、ビジュアルばかりが目立ちがちなアメリカ映画で、こんなに言葉とコミュニケーションの大切さを感じられるって素敵なことだ。言葉を大切にする人の仕事ってやっぱり好きだ。ジェレミー・レナー、フォレスト・ウィティカーもそれぞれの職務上のこだわりをうまく演じていて好感。

この上映時間という"セッション"で、ヴィルヌーヴという映画人について少し理解が深まった気がした。それでも「複製された男」のレビューは書けそうにない💧




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水を抱く女

2022-08-29 | 映画(ま行)





◼️「水を抱く女/Undine」(2020年・ドイツ)

監督=クリスティアン・ベッツォルト
主演=パウラ・ベーア フランツ・ロゴフスキ マリアム・ザリー

水の精霊ウンディーネの神話を元にした、ファンタジックなラブ・ストーリー。映画はいきなり別れ話を始める男女から始まる。女はを「アタシを裏切ったら殺す」と言い放つ。彼女の名はウンディーネ。彼女は水槽のそばでダイバーの男性と知り合い、愛し合うようになる。しかし元カレが別の女性と一緒にいるところを目撃してから、彼女の心と人間関係が揺らぎ始める。

淡々とした雰囲気の映画だが、映像で語りかけてくる演出が印象的な作品だ。潜水作業中に現れる巨大なナマズや湖中の様子。ポスターにも使われている肩越しの視線、元カレのヨハネスへの復讐シーン、そしてクライマックスの潜水シーン。それらに際立った台詞はないのだが、引き込まれる魅力がある。

ウンディーネが都市の歴史について解説をするベルリン。かつて分け隔てられていた街だ。違いを超えて一つになった街の中に、惹かれあった二人を隔てる現実がある。ラストシーンの水面から男女を見上げるカットは、触れ合えない隔たりを見つめるウンディーネの視線なのだ。

ダイバーの彼氏が心肺蘇生するために、ビージーズのStayin' Aliveを歌いながら胸を押す場面が好き。





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マッキントッシュの男

2022-07-09 | 映画(ま行)

◼️「マッキントッシュの男/The Mackintosh Man」(1972年・アメリカ)

監督=ジョン・ヒューストン
主演=ポール・ニューマン ドミニク・サンダ ジェームズ・メイスン

ボンド映画みたいなスパイアクションを期待すると、この映画に肩透かしを喰らうだろう。どちらかと言うと、ジョン・ル・カレ原作の渋くって生々しいスパイの実態めいた映画だとは言える。しかし、なんとも歯切れが悪い。アイルランドの荒涼たる風景にスパイ映画に僕らが求めてしまう派手さがないからだろうか。

それでも中盤からはカーチェイスもあれば、政界の大物に迫るクライマックスも用意されている。モーリス・ジャールの音楽も印象的だし、評価される要素はいろいろあるのに、どうも気持ちが盛り上がらない。スミス夫人を演ずるドミニク・サンダが映画に華を添えてくれるのだけど、一般的なスパイ映画に出てくる女性のようにキャーキャー助けを求めたりもなく、あの激しいカーチェイスに顔色ひとつ変えない冷静さ。

舞台をマルタ島に移すあたりから、彼女が主役でも面白いのでは…とだんだん思えてきた。そして賛否両論のラスト。やっと追いつめた悪役にはぐらかしの国会答弁のように言いくるめられてしまう、われらがポール・ニューマン。

え?え?ええー?お前、それはないだろう…っと思っていたら響く銃声。

最後までカッコいいのはドミニク・サンダだった。今どきのハリウッドの作風ならば、彼女の感情をもっと露わにさせて、ポール・ニューマンへの失望をもっと強調したところだろう。そこを「あんたも殺したいわ」のひと言で締めくくるクールさ。この結末だから、ますます歯切れが悪く感じるのかもしれないけど、この結末でなかったらこの映画の印象はもっともっと地味になっていたに違いない。それにしてもあの刑務所の囚人服、なんてカッコいいんだろう。

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モン・パリ

2022-07-04 | 映画(ま行)

◼️「モン・パリ/L'événement le plus important depuis que l'homme a marché sur la Lune」(1973年・フランス)

監督作=ジャック・ドゥミ
主演=カトリーヌ・ドヌーヴ マルチェロ・マストロヤンニ ミシュリーヌ・プレール クロード・メルキ

僕が人生で初めて観たフランス映画。男性が妊娠する!?というコメディ映画と聞いて、ニキビ面の中坊は面白がってテレビで観たのだ。配信でウン十年ぶりに再鑑賞。監督ジャック・ドゥミ、音楽ミシェル・ルグラン、主演にカトリーヌ・ドヌーブ。あの時に、テレビの前でケラケラ笑ってた少年は、ウン十年後にそのメンバーで製作された「ロシュフォールの恋人たち」が大好きな映画ファンになるのだ。

体調不良を感じ始めたマルコは、「あなたに何があったら大変」と恋人イレーヌが言うもんだから、しぶしぶ医者に診てもらった。すると「妊娠している」と想像を超える診断が。専門医である大学教授は、「人工的な食品でホルモンバランスが崩れた結果だ、あなたは人類最初の妊娠した男性だ」と言うのだ。学会で紹介したい教授が名前を公表してしまったから大騒ぎに発展。マスコミだけでなく、マタニティグッズ販売会社がマルコをモデルに起用し一躍注目を浴びる存在に。

原題は「人類が月面を歩いて以来の最も重大な出来事」。いや、まさにそういうお話。

善人しか出てこないと言うよりも、人を疑わない人しか出てこない。テレビ討論会の場面に出てきた数名を除いて、誰もがマルコの身に起こったことを信じている。突然有名人になった彼を利用する悪人もいない。でもそれが脇役の一人一人まで人間味が感じられて、とても心地よいのだ。今の年齢で改めて観てると、ツッコミ入れるよりもその現実味のなさと人間模様が楽しくて。フランス映画らしい素敵なコメディ。

ミレーユ・マチューが劇中の舞台で、巻き舌で歌うパワフルな主題歌が印象的。パリの街並みが変わりゆく様子を並べながらも、街への変わらぬ愛着を歌う。それは60年代から70年代のウーマンリブの風潮で変わり始めた男と女の関係なのかも。そんな時代でも愛し愛される男と女の関係は変わらないと、この歌と映画のラストが示してくれるのだ。

イレーヌはマルコの妊娠にショックを受けるも、すぐに事態を受け入れて「次は男が産むのが当然よ」とのたまう。マルコとテレビ出演すれば、カメラ目線で自分の美容院をPR。とにかくカトリーヌ・ドヌーブがキラキラしてる。この頃私的にもパートナーだったマルチェロ・マルトロヤンニ。他の映画でみせる深刻な表情とは違ってなんともユーモラス。大きなお腹をカバーするオーバーオール姿に笑ってしまう。

人生最初に観たフランス映画がこの映画だったのは、幸せな巡りあわせだったのかも。


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マイ・ニューヨーク・ダイアリー

2022-06-02 | 映画(ま行)

◼️「マイ・ニューヨーク・ダイアリー/My Salinger Year」(2020年・カナダ=アイルランド)

監督=フィリップ・ファラルドー
主演=マーガレット・ケアリー シガニー・ウィーバー ダグラス・ブース サーナ・カーズレイク

舞台は1990年代。作家志望のジョアンナは、ニューヨークの出版エージェントでアシスタントとして働き始める。上司のマーガレットが担当するのはサリンジャー。世間を避けて暮らしていて、ファンレターは受け取らないので、世界中から届くファンレターに冷たい返事を送り続けるのがジョアンナの主な仕事。ある日、マーガレット宛てにサリンジャーから電話がかかってくる。顔を合わせることのないジョアンナとサリンジャーのやりとりが始まった。

原題はMy Salinger Year。原題とはかけ離れた"なんちゃらダイアリー"と邦題がつく映画はいくつかあるが、どれもオリジナルのニュアンスが生きてないのが残念。せめて本作は「サリンジャーと私」くらいにしてくれたらいいのに。でも、海外の現代文学作家の名前を掲げても、ピンとこないくらいに活字離れは進んでいるのが現実。だから"私のニューヨーク日記"なのかな。

タイトルで損してるとは思うが、この映画は予想以上の秀作。活字文化と文学に対するリスペクトが感じられるし、人間模様に温かな気持ちになれる。サリンジャーと電話でやりとりをする間に、ジョアンナはサリンジャーの人柄に触れる。作家志望だと聞いてジョアンナに「一日15分でいいから書きなさい」とアドバイスをくれる。ネットにレビューをアップしてる僕らも文章にすることで、自分の感想や作品への気持ちを整理するのに役立っている。続けることはサリンジャーが言うように大事なことかと。

パソコンやインターネットがまだ珍しかった90年代が舞台。会社にパソコンが導入されるが、宝のもちぐされになってるのも当時の空気感。メールも今のみたいに多くの人が使ってないし、スマホもない時代。サリンジャーへのファンレターも当然手紙。そこに綴られる読者の熱い気持ちをイメージにしている描写も印象的だ。「ライ麦畑でつかまえて」は多くの共感を呼んだ。その気持ちをジョアンナが手紙から感じ取るのだが、それを送り主に語らせる演出。それは手紙に込められた強い気持ちを表現さるのではなく、駄文の返事を送らねばならないジョアンナに彼らの言葉がいかにプレッシャーを与えていたかが伝わってくる。

ジョアンナのアイディアや感覚が古い価値観で固められていた会社や上司に影響を与えていくエピソードの積み重ねがいい。でもハリウッドのサクセスストーリーの痛快さとは違って、ジョアンナが成長していく一つ一つのエピソードは、自分の気持ちが通じた小さな嬉しさの積み重ねだ。それは「プラダを着た悪魔」とも違うし「ワーキング・ガール」とも違う。あ、「ワーキング・ガール」の上司もシガニー・ウィーバーだったw。今回は部下のアイディアを盗むような悪役ではありません、ご安心を。カナダとアイルランドの合作というのは珍しい。テイストが違うのは製作陣が目指すベクトルが違うんだろう。詩集の出版をめぐる対立、サリンジャーを守ろうとするクライマックスが素敵だ。

サリンジャー自身についての知識を補充すると、この映画の背景がよく理解できると思う。ニコラス・ホルトがサリンジャーを演じた「ライ麦畑の反逆児」を合わせて観ることをオススメ。「ライ麦畑でつかまえて」がいかに読者に影響を与えたか、それが彼の生活をどう変えることになったかを知ることは、「マイ・ニューヨーク・ダイアリー」を観る上でよいガイドになることだろう。



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マネキン

2022-04-29 | 映画(ま行)

◼️「マネキン/Mannequin」(1987年・アメリカ)

監督=マイケル・ゴッドリーブ
主演=アンドリュー・マッカーシー キム・キャトラル G・W・ベイリー ジェームズ・スペイダー

アンドリュー・マッカーシーは、80年代に"ブラット・パック"と呼ばれた青春映画スターたちの一員として括られる存在だ。しかし出演作のどれもが、タイプの違う誰かと比較される対象だったり、グループの中でもどこか独自路線だったり、悪く言えばやや浮いてる存在に見えた。主役の映画でも共演者の誰かの熱演で印象に残らない。ちょっとかわいそうなイメージがある。だけど僕はけっこうアンドリューが好きで、「セント・エルモス・ファイアー」の文筆家に憧れる帽子がトレードマークの地味な青年に、ちょっと自分を重ねていたのだ。

さて。そんなアンドリューの主演作「マネキン」。今回は対等の立場になる共演男優がいない。やんちゃなエミリオ兄ちゃんもいなければ、なりきり演技で場をかっさらうなんちゃらJr.もいない。レギュラーメンバー的な共演者は、ちょい悪上手のジェームズ・スペイダーくらい。さあアンドリュー!弾けちゃってくれ!そんな僕の期待どおりのアンドリューが見られる。公開当時、僕は硬派な映画ファンを貫いてこの手のラブコメを避けていたから、今回が初鑑賞だ。

これまでアンドリューが演じてきた優等生タイプとは違うちょっとダメ男。しかし、芸術家志望で変なこだわりがあるもんだから仕事もうまくいかないキャラクターは、周囲の人々と違った感覚をもつこれまでのキャラとも通ずる。映画冒頭のチープなエジプトの場面から、お気楽80年代映画の空気感。改めて今観ると微笑ましくて楽しいじゃない。唐突に人間になるマネキンのエミーは、彼の前でしか人間の姿になれなくて、他の人にはただのマネキン人形にしか見えない。彼は人形を恋人にする変わり者として周囲から見られるのだが、気味悪がられるどころか周囲が受け入れてる感じがちょっと違和感。同僚のオカマが性的嗜好の一つとして認めてくれる描写はいい。今のジェンダー感覚でリメイクしても面白いかも。

後に「SATC」で人気者になる若きキム・キャトラルも見どころの一つ。夜のデパートを舞台に衣装も取っ替え引っ替え、踊ってはしゃいでイチャイチャして。閉店後のデパート店内デートって、古くはチャップリンの「モダンタイムス」にも登場する。誰にも邪魔されない素敵なシチュエーション。朝目覚めて注目を浴びる…って展開も同じだな。

あの頃の僕なら冷めて見てたお気楽な結末も、今なら微笑ましく思える。そんなラストシーンを飾るのは、Starshipの大ヒット曲Nothig's Gonna Stop Us Now(愛は止まらない)。いい曲だ。

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