Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

バトル・ロワイアル

2013-10-23 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その7)★「深作欣二に捧ぐ」/ゴーゴー夕張

■「バトル・ロワイアル」(2000年・日本)

●2000年日本アカデミー賞 編集賞・新人俳優賞・話題賞
●2000年ブルーリボン賞 作品賞・新人賞

監督=深作欣二
主演=藤原竜也 前田亜季 山本太郎 ビートたけし

 タランティーノはこの映画を”近年最も影響を受けた映画”と言う。言うまでもなくタランティーノは「仁義なき戦い」を始めとする作品で、故・深作欣二監督の大ファン。対談などをきっかけに親交もあり、「BRll」ではアメリカ大統領役で出演する予定もあったし、千葉真一と深作監督とタラが組んだ映画の企画もあったとか。いずれもお流れとなったのは残念だけど。オマージュを込めた「キル・ビル」は深作監督に見せられぬままであった。それ故に「深作欣二に捧ぐ」と出るし、また「BR」を観て気に入った栗山千明を出演させたのも(しかも迫ってくる男を殺すという同じシチュエーションまで登場)、この映画の大きな影響だというのはご存じの通り。

 ところで、この「BR」を僕は今までずっと避けていた。きっと「キル・ビル」がなかったら観なかったと思う。正直言えばやはり中学生が殺し合うというセンセーショナルな内容だし、バイオレンス映画嫌いだし、国会議員による上映禁止騒ぎや世間の評に流されていたこともある。実際に今回観て、残酷描写はこんなもん?と思えたし(「子連れ狼」を観た後だから?)、思っていたよりも面白かった。極限まで追いつめられた時の人間のエゴがこれでもかと描かれる。決して世間で言われているように殺人を面白がって描いた映画ではない。意味もなく人を殺すヤツは出てこないし、殺人を楽しむヤツは徹底的に悪とされている。むしろ「生きる」ことを描いている映画とも言えるだろう。僕は「子供には何でも経験させて自分でいいことか悪いことか判断させるべき」と常々思っている。その証拠に世のお母様たちが嫌う「クレヨンしんちゃん」の全面的肯定派だ。見せて真似するべきか、おかしいと思うか本人次第だと思うのだ。「しんちゃん」を嫌うくせに「名探偵コナン」を見せるお母様方もいる。毎週人が殺されているのにね(笑)。それはさておき、「BR」も同年代の子に観て判断してもらえばいいと思うのね、基本的には。でも”親”の立場としては「殺し合いの映画」はやはり見せたいとは思わない。だから上映禁止騒動の気持ちもまんざらわからなくはないのだ。

 70才を越えた深作監督がパワフルなバイオレンスアクションを撮ることはすごいと思う。しかし、脚本のせいなのかな?どうも楽しめないところも多い。”みやむー”が「それじゃぁルールを説明するねぇ!」と登場するビデオにしても興ざめだし、全編告白大会ってのもなぁ・・・。台詞で十分なのにわざわざ字を見せることにこだわっているのも、ちょっとした台詞がグッとくる深作映画らしさとは違う気がする。「人を嫌いになるにはそれなりの覚悟がいるんだぞ」は除くけどね。出てくる大人達はみんな情けない。秋也の父親にしても無理心中を図ろうとする北野にしても。娘に嫌われ、その思いを生徒に向ける悲しい姿をたけしは見事に演じている。でも昨年の最後の生き残りの気味悪さよりも、すげぇ!イカれている!と思ったのは、栗山千明だな。どうしてあのシチュエーションで朝練が出来るの?「あたしの全存在をかけて、あんたを否定してあげるわ!」台詞も決まってるぅ!。柴咲コウはやっぱ梶芽衣子に似ているよね。ところで「キル・ビル」の脚本では当初ゴーゴー夕張には姉ユキがいる設定になっていたらしい。ユキが妹を殺された復讐をするという場面が用意されていた。何とユキ役には柴咲くコウが設定されていたんだってさ!何とも惜しい話だ。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ

2013-10-22 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その6)★これから二大女優が東京を蹂躙するのだ

■「フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ/The War Of The Gargantuas」(1966年・日本)

監督=本多猪四郎
主演=ラス・タンブリン 水野久美 佐原健二

 タランティーノはユマ・サーマンとルーシー・リューに、"「キル・ビル」は二大女優地球最大の決戦だ!"と述べた。実際に二人はこの「サンダ対ガイラ」を参考に(何の?)とビデオを見せられた、とか。ザ・ブライドがオーレン・イシイを追って東京へやって来る。飛行機が東京へ近づく場面を、タランティーノはミニチュアを使ってコテコテの特撮映画風に仕上げた。ゴジラのスタッフに都市のミニチュアを借りて撮影、空は松竹の和製ホラー「吸血鬼ゴケミドロ」みたいに!という注文があったというから・・・すごいよね。ちなみにタランティ-ノは「vol.2」を、本作の英語タイトルをもじって"The War Of The Blond Gargantuas!"(金髪巨大女戦争)と呼んでいる。とにかくお好きなようだ。

 お話は前作「フランケンシュタイン対地底怪獣バラゴン」の続編にあたる。人間の味を覚えて次々と船や町を襲う怪物(ガイラと呼ばれるようになる)。それは前作のフランケンシュタインの体の一部が蘇生したものだった。空港で女性事務員を食べて衣服をペッとはき出すディティールも真に迫っている。自衛隊のメーサー殺獣光線車などの攻撃で怪物は倒されたかと思えたが、そこにもう一体の怪物が出現!。これが前作で死んだと思われていたフランケンシュタインだった(サンダと呼ばれる)。いわば弟分のガイラが人を襲うのをサンダは許せない。ついに両者が対決することになってしまう。山村から川をくだり、市街地、そして海へと場を移しながら戦いは続く。そして・・・。

 それまで怪獣の着ぐるみが主流だった東宝特撮映画に、人間型の怪獣が登場したことでバトルがよりスピーディーになったのは見応えあり。サンダにとって育ての親でもある水野久美との関係や、ガイラが女性を手のひらにのせる場面など、どこか「キング・コング」を思わせる。メアリー・シェリーのフランケンシュタインとは全く異なるものではある。しかし根底に流れる、人によって造られながら人に受け入れられない人造人間の哀しみは同じ。人間に対する愛情と憎しみが二体の怪獣に表現されているのだ。



フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ【期間限定プライス版】 [DVD]フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ【期間限定プライス版】 [DVD]

東宝 2013-11-08
売り上げランキング : 4548

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

ブログランキング・にほんブログ村へ blogram投票ボタン
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Blood The Last Vampire

2013-10-20 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その5)★Production I. G/日本刀を持つヒロイン

■「Blood The Last Vampire」(1995年・日本)

●2000年毎日映画コンクール 大藤信郎賞

監督=北久保弘之
主演=工藤夕貴 中村左恵美 ジョー・ロマーサ  

 「キル・ビルvol.1」の本編で強い印象を残すのが、オーレン・イシイの生い立ちを語るアニメーションの挿話だ。あんな残酷なアニメは観たことがない。それ故に強烈なインパクトを僕らに与えたのは言うまでもない。タランティーノが製作を依頼したのは「Ghost In The Shell 攻殻機動隊」で知られるProduction I. G。タランティーノ自身が同作品や本作「Blood The Last Vampire」を気に入っていたという。本作ではヒロインが日本刀でバンパイアたちに戦いを挑むが、そのイメージはそのままザ・ブライドに、またヒロインがセーラー服姿で戦うという点は(ブレザーの制服ではあるけれど)栗山千明に引き継がれているのだ。

 わずか50分足らずなれど見応えのあるデジタルアニメーションである。奥行きのある絵と従来のアニメらしい誇張された描写が同居する、ビジュアル面でまず圧倒される。さらに必要最低限の長さに凝縮された物語は謎だらけなのだが、これが実に魅力的。60年代の日本が舞台で、横田基地内のアメリカンスクールに潜んでいるとされるバンパイア(劇中では”人間の血を吸う鬼”と説明されている)を、特命をおびた少女小夜が退治するというストーリー。ベトナムの戦地へと飛び立とうとする飛行機を追いかけたバンパイアは何がしたかったのだろう?。戦場で獣のように殺しあう人間たちは、血を追い求めるだけの”鬼”たちともしかしたら何も変わらない。”鬼”を仕留めた小夜は”同族なれど”最後の理性・・・ということになるのかな。押井守による小説版は安保で揺れる時代を舞台にしており、また現代を舞台にしたゲームも存在するとか。



BLOOD THE LAST VAMPIRE [Blu-ray]BLOOD THE LAST VAMPIRE [Blu-ray]
寺田克也

アニプレックス 2009-05-27
売り上げランキング : 8785

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

ブログランキング・にほんブログ村へ blogram投票ボタン
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

子連れ狼 親の心子の心

2013-10-19 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その4)★「子連れ狼」関連作
子連れ狼 親の心子の心【期間限定プライス版】 [DVD]

■「子連れ狼・親の心子の心/Baby Cart In Peril」
(斎藤武市/1972年・日)

主演=若山富三郎 山村聰 林与一 東三千 小池朝雄

 「三途の川~」を探しにいつも行くレンタル店を訪れたら、シリーズ4作目「親の心子の心」を発見。これは見なければ。何故って、人道的?な題名のくせに”おっぱいに刺青”がビデオのジャケットなのよ(こらこら)。

 萬屋錦之介のTVシリーズはほとんど見ていないし、シリーズ4作目だから予備知識いるかと思ったが、柳生一族と拝一刀の対立を回想シーンできっちり説明してくれるので大丈夫。尾張藩の侍を次々と殺すお雪(東三千)。いきなり胸をはだけたお雪と侍のチャンバラから始まるプレタイトル。もう目は釘付け(笑)。遺族から彼女の殺害を依頼された拝一刀(若山富三郎)は、彼女の後を追う。お雪はかつて辱めをうけた尾張藩の孤塚円記(岸田森)に復讐すべく殺人を重ねていた。そして男を欲情させ怖がらせるために、胸に乳をまさぐる金太郎、背中に山姥の刺青をする。内田朝雄扮する彫物師が刺青のうんちくを語りながら墨を入れ、お雪の裸体の美しさを語る場面は緊張感が漂う。同じ刺青場面でも「スワロウテイル」とはえらい違いだ(比べるなっつーの)。狐塚との決闘シーン。バッ!と胸をはだけて狐塚がひるんだ瞬間にやっつけるんだけど、あの美貌なら別に彫り物しなくても男だったらひるむよなぁ・・・とも思いましたが(恥)。

 柳生の忍者が次々と一刀を襲うのだけれど、ここで出ました人体バラバラ!。仏像に身を潜めて待ち伏せしていた忍者を斬る!斬る!斬る!。手が飛び足が飛ぶのは当たり前。立っている忍者を稲刈りみたいに足首を残して斬り倒すところもあり、思わず笑いが出てしまう。この場面では「父母に会っては父母を斬り、仏に会っては仏を斬る・・・」と、「キル・ビルvol.1」でのナレーションと同様の文句が聞ける。切腹の介錯をする場面もあるのだが、切り落とされた首が転がり間をおいて胴体から血が噴き出す(タランティーノもこの間にこだわったらしい)。あぁこれこれ!と思わず口にしてしまう「キル・ビル」ファン。

 それにしてもこの頃のアクション時代劇って何でもありだったのね。大五郎の乳母車の前が開いてマシンガン!ドドドドドド!おおぉー!噂には聞いていたけど、面白ーい!マカロニウエスタンみたい!棺桶からマシンガン出すジャンゴだ!。クライマックスの大殺戮シーンでも爆破・マシンガン・柳生烈堂の片目が潰される・・・派手なアクションが展開される。斎藤監督は日活アクションものの監督らしいので、このあたりのスピード感は見事。だが原作のファンからは嫌われるところかもしれない。山村聰の娘を思う父親の心境も泣かせます。このシリーズ他の作品を観てみたくなった、ほんと。こりゃハマりますわ。





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

子連れ狼 三途の川の乳母車

2013-10-18 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その3)★青葉屋の大立ち回り・殺陣は「子連れ狼」
子連れ狼 三途の川の乳母車 [DVD]


■「子連れ狼 三途の川の乳母車/Baby Cart At The River Styx」(1972年・日本)

監督=三隅研次
主演=若山富三郎 松尾嘉代 大木実 新田昌玄

 青葉屋で繰り広げられる大立ち回り。人体メッタ斬りと血の海に唖然としたり、やりすぎだろっ!と笑ってしまったりしたことだろう。手が飛び、足が飛ぶのは当たり前。國村隼オヤブンの首が斬られて血が噴水のように飛ぶところも含め、「キル・ビル」は本当に血まみれの映画だ。タランティーノは「子連れ狼/三途の川の乳母車」のようにやりたい!とスタッフに言ったのであった。

 「子連れ狼」シリーズは勝新太郎がプロデュースした大ヒットシリーズで、「三途の川の乳母車」はシリーズ最高傑作とも言われる第2作。トム・ハンクス主演「ロード・トゥ・パーディション」の原作は「子連れ狼」をベースにしている、というのも有名な話だ。映画史研究家によると、このシリーズが後の残酷スプラッター映画の原点だとも言われている。いきなり冒頭で虚無僧姿の二人組から襲われる主人公拝一刀(おがみいっとう)。拝の刀を真剣白羽取りで押さえた一人。既に刀は彼の額に食い込んでいる。その男の肩に飛び乗り、ジャンプしてさらにもう一人が襲いかかる!。「機動戦士ガンダム」ファンにはトリプル・ドムのジェット・ストリーム・アタックか!と感じさせる攻撃だ。そんな見せ場から始まるこの映画は、とにかくチャンバラシーンの多いこと多いこと。息をつかせぬ緊張が全編に漂って飽きさせることはない。足手まといと思われがちな大五郎が意外に大活躍するし、乳母車の仕掛けも見どころ。また仇役の松尾嘉代が女としての感情に揺れる様子も印象的だ。

 タランティーノが真似た残酷描写”人体メッタ斬り”は、随所に出てくるが、中でもうわっ!ここまでやる!と感じさせるのが、女だけの明石柳生一派に腕利きとされる忍びが挑む場面。指が落ち、腕が落ち、足が斬られ・・・胴体と頭だけの肉の塊にされてしまう。ここは「キル・ビルvol.1」のラスト、ジュリー・ドレフュス拷問シーンにつながっているのだろうか。映画のクライマックスでは三人の殺し屋と砂丘で対決するのだが、この三兄弟が鉄の爪やら鉄のこん棒やら個性的な武器を得意とする恐ろしい奴ら。意外にすんなり決着は着くのだがそれぞれの殺され方がまたすごい。魚の開きのように真っ二つにされる残酷描写はオオッ!と驚くけれど「キル・ビル」同様”やりすぎ”。最後に喉を切られた男は、”喉を斬られると息が笛みたいに聞こえるというが、それを自分で聞くとはなぁ・・・”とご丁寧な説明の後、血しぶきをあげて果てる。とにかくこの時代のアクション時代劇ってすごかったんだなぁ・・・と改めて思う。

 そして「vol.2」で死んだと思っていた娘と再会する後半。娘が寝る前に観ているテレビ。そこに流れていたのは・・・「子連れ狼」!だめだよ、そんなの見ちゃ!




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

死亡遊戯

2013-10-17 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その2)★黄色のトラックスーツはもちろん李小龍!


■「死亡遊戯/Game Of Death」(1978年・香港)

監督=ロバート・クローズ
主演=ブルース・リー コリーン・キャンプ ギグ・ヤング 

 「キル・ビルvol.1」でユマ・サーマンが青葉屋になぐりこむときのコスチュームは、黄色に黒のトラックスーツ。これはブルース・リーが「死亡遊戯」のクライマックスで着用しているものと同様のデザインであることはおわかりであろう。ユマ・サーマンの衣装はツーピースになっているが、足下はブルースと同じくアシックス!。ブルース・リーに対するオマージュはこれだけでなく、オーレン・イシイの部下クレイジー88がTVシリーズ「グリーン・ホーネット」でブルースが着けていたマスク(役柄からカトウマスクと呼ばれる)をしていることでも一目瞭然だ。

 「死亡遊戯」はブルース・リーの遺作。撮影途中で本人が死亡したため、「燃えよドラゴン」のロバート・クローズが監督を引き継ぎ完成させた。クライマックスのアクション場面は撮り終えていたので、前半はそっくりさんのタン・ロンやユン・ピョウを使って撮影された。全体的にはどうしてもちぐはぐなものだけれども、わずか10数分ながらブルースの最後の勇姿はファンの心を引きつけた。マカオが舞台であることもあり、カジノのゲーム数々が映し出され、そこにブルースの出演作の場面が重なる洗練されたかっこいいタイトル。ジョン・バリーの音楽もよくできていた(「007」音楽を香港映画が無断使用しているのかと思えるくらいにね・笑)。しかしビデオで見られる版は怪鳥音も他人のものだし(DVDや香港公開版は異なる)、そっくりさんも似ていないから、やっぱりトホホな映画ではある。相手役コリーン・キャンプは「地獄の黙示録」ではプレイメイトの一人を演じており、本作では主題歌も歌っている。マカオの格闘技大会ではサモハン・キンポーも登場。

 しかし、これだけで終わらない。ロバート・クローズ版に使われなかった未公開フィルムが存在することがわかったことから、ブルースが望んだ「死亡遊戯」とはどんなものだったのか?とファンの間でその公開が切望されていた。その完全版フィルムは、当時の製作の様子・裏話を再現したドラマを付け加えて「Bruce Lee in G.O.D. 死亡的遊戯」として日の目をみた。再現ドラマは学芸会並の情けなさだが、ブルースの構想にあった、様々な格闘技の猛者が各階にいる五重塔での死闘、その全てが観られる!。それだけでも劇場に足を運ぶのに十分なものだった。僕も映画館で観たクチだが、観客層が30代以上で男ばっかりだったのは忘れがたい(笑)。今回「死亡遊戯」を見直したが、「G.O.D」を観た後だけに”これだけ?”という気持ちは隠せないな。それでもブルース・リーは永遠の存在。それを改めて思った。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

女囚701号 さそり

2013-10-16 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その1)★復讐ヒロイン梶芽衣子!/♪怨み節


■「女囚701号 さそり」(1972年・日本)

監督=伊藤俊也
主演=梶芽衣子 夏八木勲 渡辺文雄 

 70年代の東映アクションもの・・・僕にはおそらく最も馴染みの薄い時期の映画。そして”女囚もの”。僕ら世代だとリンダ・ブレアの「チェーン・ヒート」があるけれど、暴力・エロ満載という作風は好んで観るものでもなかった。だいたい女性がいたぶられる映画って嫌いだから。しかぁし!本作はまさにそれ。恋人だった刑事に騙されておとり捜査に利用され、ボロ布のように捨てられた主人公松島ナミ。刑事に包丁で斬りかかったところを捕らえられてしまう。彼女は復讐に燃えていた。刑務所の中での仕打ち、扱いはこれでもか!というくらいに陰湿。普段ならもう十数分で投げ出してしまうところかも。

 でも面白いのね、これ。デビュー作だった伊藤俊也監督は”劇画調の演出”ということで数々のアイディアを盛り込み、飽きさせない。劇画のコマ割りの様にアングルが斜めだったり、下から見上げたり、明暗がやたらと強調されていたり、時折入るクローズアップが妙に印象的だったり。時代が時代だけに、反権力的な描写があるのも見逃せない。冒頭君が代をバックに刑務官の表彰が行われる場面。ナミの脱走で式はぶち壊しになり、賞状は無惨に踏みつけられる。ナミが悪徳刑事に処女を奪われる場面、白いシーツに広がる赤い血は日の丸を思わせるじゃない。女囚がいきなり髪逆立てて襲いかかったり、派手なライティングがあったりと、まるでホラー映画。タランティーノのアイドル梶芽衣子はひたすらカッコいい。次々と降りかかる危機をクールにかわしていく姿が何より面白い。クライマックスに出てくる黒一色の服装につば広の帽子姿!一度見たら忘れないね。ユマ・サーマンがこのファッションやったら笑っちゃうぞ。作業所の奥でサイコロ博打しているところは任侠映画まんまだし、暴動(「アバレをやるよっ!」)を起こす女囚達に「しずまれーっ!」って時代劇じゃないんだからさ。

 刑務所長や事件の黒幕の薄暗い部屋に差し込む照明は「スケバン刑事」の暗闇指令の部屋みたい。そういえば「スケバン刑事」が製作されるとき、アイドル路線でいきたいフジテレビ側と東映は意見が違っていたらしい。東映側が求めていたのは、この「女囚さそり」の空気だったのだ。マッポの手先にされた女子高生の哀しみと悪への怒り・・・うーん、なるほど納得。ビデオ観ている僕の後ろで配偶者が「何か嬉しそう」と言う。エロが多いのは確かにあるけど、墜ちるところまで墜ちる女性の話はやはり苦手なのだ。それでも、男を社会を悪を恨むヒロインの姿に魅了されたのは間違いない。あぁ今日も ♪怨み節 を口ずさんでしまう~。



コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする