Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

新・仁義なき戦い。

2013-11-06 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルールを探せ!(その17)★布袋寅泰作曲 ♪Battle Without Honor Or Humanity

■「新・仁義なき戦い。」(2000年・日本)

監督=阪本順治
主演=豊川悦司 布袋寅泰 佐藤浩市 哀川翔

 タランティーノは昔の東映ヤクザ映画が大好き。でも昔の役者をキャスティングするわけにいかないので現在ヤクザ映画を何本か参考に観た。日本人俳優のキャスティングに大きな影響を与えた「殺し屋1」、「PARTY7」。そしてもう1本が本作、「新・仁義なき戦い。」である。この映画がから「キル・ビル」に引用されたのはなんと音楽だった。もはや「vol.1」のメインテーマと呼んでも差し支えない、布袋寅泰作曲のテーマ曲 Battle Without Honor Or Humanity(新・仁義なき戦いのテーマ) 。タランティーノが審査員長を務めた2004年のカンヌ映画祭でも、彼が舞台に登場するBGMにこの曲は使われた。まるでレスラーの入場曲だな。布袋寅泰は、既にマイケル・ケイメンとのコラボレーションでオーケストラとの共演作品を海外でもリリースしていたし、ケイメンが音楽担当をしたアトランタ五輪閉会式での演奏は世界中に流れている。だが自作が世界的に注目されるのはもちろんこれが最初だろう。「vol.1」で使用されたこの曲に関してレコード会社に問い合わせが殺到したことから、イギリスでは布袋のギターインストアルバム「Electric Samurai」がリリースされるに至った。これにはタランティーノがライナーを寄稿している。

 オーレン・イシイが部下と共に青葉屋の玄関から奥座敷まで歩く印象的な場面。そのバックに流れるのがこの曲である。この場面のカメラワークは、「新・仁義なき戦い。」の最初の方、佐藤浩市が岸部一徳に近づく場面のカメラワークにどこか似ている。狭い半間廊下をカメラは行きつ戻りつ、佐藤浩市の姿を追う。「vol.1」での廊下は大勢を連れて歩く為にもっと広いけれどもいかにも日本家屋らしいセットの壁が動いていく背景は共通点を感じさせる。でもこの”一点消去の構図”をよく使う監督といえばスタンリー・キューブリック。もしかしたら「時計じかけのオレンジ」あたりへの敬意も込められているのかもなぁ。「新・仁義なき戦い。」でのこの曲の使い方も印象的だ。組長の遺骨と共に黒塗り車の葬列が続く、長い長いオープニングタイトル。葬儀の車が故障したトラクターに止められた後、一斉にヤクザたちが車から降りてくるスローモーションの場面に、ミュートしたギターの音がかぶさってくる。あの曲だ。そしてやっと出てくる監督のクレジット。映画のクライマックス、布袋の店で飲んでいる佐藤浩市をトヨエツが襲撃する場面にもこの曲は使われる。この曲は、これから何かが起こる・・・そんな予兆を感じさせる。

 映画本編は大阪で実際にあった抗争をモデルにし、組内部の対立を群像劇として描いていく。僕は阪本監督作を「どついたるねん」しか観ていないだが、女性をとことん脇に配した男臭い作風はやはり健在。在日コリアン役を見事にこなす布袋も素晴らしいのだが、哀川翔が特にうまい。でもさすがに深作欣二作の域までは達していない。悶々とした主人公たちの思いや悲壮感ばかりが印象に残って、男たちの鉄砲玉のような疾走感はここではみられない。それに跡目につこうとする者が支持を求めて右往左往する様は、もう政界ドラマなのね。上から「お前はオレをかつぐのか?かつがないのか?」って話。だから庶民としてはちょっとシラけてしまう。深作の頃は下っ端が強気に「かつがなくてもいいんか?」と迫り、挙げ句に上に殺されるお話。下っ端の生き様、悲しさ、切なさという他の世界でも共通の感情があったと思うのだ。だからこの「新」を観て最も心に残るのは、トヨエツと布袋の腐れ縁のような人間関係。「またハンパしやがって」「おかん呼んどんで」って台詞がグッとくる。





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

男たちの挽歌・男たちの挽歌ll

2013-11-05 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その16)★教会の大虐殺/ジョン・ウーはお好き?

■「男たちの挽歌/英雄本色 (A Better Tomorrow)」(1986年・香港)
■「男たちの挽歌ll/英雄本色ll (A Better Tomorrow 2)」(1987年・香港)

●1987年香港電影金像奨 作品賞・主演男優賞
●1986年台湾金馬奨 監督賞・主演男優賞

監督=ジョン・ウー
主演=チョウ・ユンファ レスリー・チャン ティ・ロン

 タランティーノのジョン・ウー好きは周知のこと。「ジャッキー・ブラウン」では「近頃は香港映画の影響で二丁拳銃が流行り」とか、サミュエル・L・ジャクソンに言わせているから、この「男たちの挽歌」でのチョウ・ユンファはさぞかしお好みなのだろう。カタギになりたいのに裏社会とのつながりはなかなか切れない。切らせてもらえない。田舎のレコード屋と結婚してカタギになろうとしたがビルによって悲惨な目に遭うブライドの姿は、「男たちの挽歌」でのホーの役柄に重なるところがある。

 いわゆる香港ノワールは今まで食わず嫌いだった。「挽歌」も今回初めて観た次第だ。正直な感想。もっとかっこいい映画かと思ってた。裏社会の大物だった兄は警察官の弟の為に足を洗おうとする。その人情劇がドンパチよりも強く印象に残ってしまう(しかも泣けるのだ)。どフォークな雰囲気の♪ティリリ~というハーモニカの調べも手伝って、その印象はますます増幅される。もちろんど派手で「ワイルドバンチ」ばりにスローモーションで克明にみせる銃撃戦の迫力もいいのだけれど、なーんか洗練されていないし、登場人物はみんな感情で動く人ばかりでいつも何か叫んでいるし・・・。それでもラストの銃を手渡すところと、自ら手錠をかけるところはなかなか涙を誘う。それにしてもこの映画のレスリーチャン若いよなぁ。

 ところが、そんな不満は第2作になるとすべてフッ飛んだ。「挽歌ll」は1作目の涙誘う兄弟の物語を語る必要がない分だけ、アクションに酔える。階段を仰向けに滑りながらの二丁拳銃のかっこよさに、「おおぉー」と野原しんのすけの様に声をあげてしまった僕。それに筋も深い。「善人になることはどうして難しいんだ」等々些細な台詞のひとつひとつが不思議と残るのだ。「酔拳」の意地悪師範代ディーン・セキが、コミックカンフー映画とは違った渋い演技を見せてくれるし、「少林サッカー」のダメ監督ン・マンタもここでは貫禄の好助演だ。1作目で死んだチョウ・ユンファを双子の弟として再登場させる強引さや、「あんたの経験を絵にしたい」という変な画家には笑えるけれど、それはまぁご愛敬。ディーン・セキを追ってきた刺客がニューヨークの教会で大虐殺をする場面は、「キル・ビル」への直接の影響があるのかも。スーツ姿の悪役がゾロゾロやって来て主人公達を襲うのは、クレイジー88にも重なって見える。それにラストの殴り込み場面。青葉屋の比ではないくらいのおびただしい死体の山。ティ・ロンが手にしているのは、おぉ!日本刀じゃん!。





男たちの挽歌 コンプリート・ブルーレイ・コレクション〈日本語吹替収録版〉 [Blu-ray]男たちの挽歌 コンプリート・ブルーレイ・コレクション〈日本語吹替収録版〉 [Blu-ray]

パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン 2013-07-12
売り上げランキング : 3212

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


ブログランキング・にほんブログ村へ blogram投票ボタン
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

吸血鬼ゴケミドロ

2013-11-04 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その15)★オイラが一番好きな飛行機のシーンは「ゴケミドロ」

■「吸血鬼ゴケミドロ/Goke : Body Snatcher From Hell」(1968年・日本)

監督=佐藤肇
主演=吉田輝男 佐藤友美 高英男 金子信雄

 ブライドが沖縄から東京入りする場面。ミニチュア旅客機がコテコテの特撮背景をバックに飛行する不思議な場面が挿入される。真っ赤な空とヨロヨロしながら飛ぶ飛行機。タランティーノは「吸血鬼ゴケミドロ」の冒頭、血のような色の空を背景に飛ぶ旅客機のシーンがお気に入りだとか。「vol.1」では、そのサイケなイメージの空を黒澤明映画で背景を担当していた島倉仁さんが描いた。「夢」とかやってらっしゃる方なのだろうか。さらに飛行機が飛ぶ夜景は、「サンダ対ガイラ」の夜の街をイメージしているという。タランティーノ、本当にいろんなもの観ているよねぇ。街のセットは「ゴジラ」の撮影スタッフが協力した。あちこちに"Red Apple"というタバコ(「パルプ・フィクション」にも登場するらしい)の看板が見られるが、その看板モデルがオーレン・イシイの弁護士役ジュリー・ドレフュスというのもお見逃しなく。

 さてそんなタランティーノの思い入れたっぷりの「吸血鬼ゴケミドロ」。映画の冒頭、いきなりその血の色の空が登場するから、僕は「あ、これ!これ!」と思わず口にして吹き出してしまった。宇宙からやってきた寄生生命体ゴケミドロは人類を抹殺し、地球征服を企んでいる。青白い発光体に遭遇して旅客機は墜落、周りは岩だらけで何もない山中に乗客だけが取り残される。極限状態の乗客たちが次第にエゴをむき出しにしていく様は観ていてこちらまで息苦しくなるが、その異様な雰囲気にグイグイ引き込まれる。そして殺し屋(高英男)の脳に寄生したゴケミドロは次々と乗客を襲い始める。パニック映画でもあり、ホラー映画もあり、侵略SFでもある本作、カルトムービーとして人気がある映画だそうだ。松竹の特撮ものというと「宇宙怪獣ギララ」(妙な映画だったなぁ)の(悪い)イメージが強いのだけれど、本作は細部まで強いこだわりが感じられる力作。世界中で繰り返される戦争・テロに対する怒りがこの映画の根底にある。救いのないラストにものすごい後味の悪さが残るけれど、「仮面ライダー」のBGMを思わせる菊池俊輔の音楽と共に、きっと忘れられない映画となることだろう。必見!。

 (追記)タランティーノは「エアポート75」のようなパニック映画が撮りたいと言っているそうな。となりゃあ、お気に入りの「ゴケミドロ」が影響しないはずはないよね!。冒頭の鳥が窓に当たる場面、再現して欲しいなぁ。そしてスチュワーデス役はもちろん「ジャッキー・ブラウン」のパム・グリアで!。





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

コフィー

2013-11-02 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その14)★ブラックスプロイテーション映画

■「コフィー/Coffy」(1973年・アメリカ)

監督=ジャック・ヒル
主演=パム・グリア ブッカー・ブラッドショウ  

 ブライドに最初に殺されるヴィヴィカ・A・フォックス。タランティーノは彼女にパム・グリア(「ジャッキー・ブラウン」)のつもりで演技してもらったという。タランティーノは13歳の頃からパム・グリアの大ファン。特に彼女のデビュー作にしてブラックスプロイテーション映画の傑作「コフィー」に、タランティーノは夢中になったという。麻薬中毒にされた妹の仇を討つため、一人組織に挑むヒロインはひたすらかっこよく、しかもセクシー。彼女の為に「ジャッキー・ブラウン」の脚本を書いたのは有名なお話だ。ブラックスプロイテーション映画(Black+Exploitation (低予算映画))とは黒人向けアクション映画のことだ。ハリウッドでは白人の協力者として描かれがちな黒人像とは異なり、そのスクリーンでの勇姿はとにかくタフ!。むかーしTVで「クレオパトラ危機突破」(73)という黒人カラテ映画を観て夢中になったことがあるけれど、それもこのジャンルの一本。どちらも悪役は白人で、アフロヘアのセクシーなヒロインが大活躍する映画だ。ワウギターが唸る音楽も聴きどころ。黒人観客目当ての作品だが、当時タランティーノの母親に黒人のボーイフレンドがおり、一緒に鑑賞したらしい。

 僕が「コフィー」を観て思ったこと。それは「vol.2」の展開に似てないか?ということ。ジャンキーにされた妹の復讐という設定は、お腹の子を殺されたと信ずるブライドに通ずるところだし、愛する男に裏切られるストーリーを始め、両作品には共通点もみられる。例えば隻眼の殺し屋が両作品とも出てくる。もちろん「キル・ビル」ではエル・ドライヴァーだ。その殺し屋を片づけてのクライマックスはどちらも愛した男と1対1で向かい合っている構図ではないか。「コフィー」は、「キル・ビル」の物語自体に大きな影響を及ぼした映画であるに違いないだろう。

 次第に追いつめられていく主人公だが、一途に悪に立ち向かう姿には感動さえ覚える。この映画に流れるのは麻薬、権力、男・・・そんな社会への怒り。パム・グリアのセクシーな魅力には人種を越えて人気があったというのも納得できる。ダイナマイト・ボディとはこういうのを言うのだ。コフィーと友人の警察官を襲いにきた暴漢が、一度逃げたのにわざわざ気絶しているコフィーのおっぱいを触りに戻って来るサービスショットには思わず笑ってしまうけど、それもまぁご愛敬。密売人キング・ジョージがはべらす娼婦たちの中には、タランティーノのお気に入り映画「ローリング・サンダー」のリンダ・ヘインズの姿も。
 




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

直撃地獄拳・大逆転

2013-11-01 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その13)★”イシイさん”/千葉真一
直撃地獄拳 大逆転 [DVD]
■「直撃地獄拳・大逆転」(1974年・日本)

監督=石井輝男
主演=千葉真一 佐藤充 郷治 中島ゆたか 志穂美悦子

 オーレン・イシイのネーミングは、タランティーノが尊敬する日本人映画監督に、石井克人・石井隆など”イシイさん”が多いからである。中でも最も尊敬する”イシイさん”が「網走番外地」で知られる石井輝男監督なんだとか。若い映画ファンには93年の「ゲンセンカン夫人」が知られていることだろう。その石井監督が千葉真一のアクション映画を監督したのが「直撃!地獄拳」シリーズ。本作はその第2作で、一見空手アクション映画なのだが、その実はやりたい放題のコメディ快作!。ラストには自作ネタの小技が用意されてます。お楽しみに。ちなみにこのシリーズ、アメリカでは「Executioner」のタイトルで公開されているそうな。

 もう究極のおバカな映画と言ってもいいかも。でもそれ故になーんか憎めない愛すべき映画だ(正直言って好き!)。千葉真一は甲賀忍者の末裔で、警視総監から内密に盗まれた宝石奪還の依頼を受ける。強力な接着剤で棒を壁や天井に貼り付け、それをつたって忍び込む妙技。アドバルーンにぶら下がった空中アクション、もちろん空手アクションも満載の面白さ。ところが全編小学生男子のような悪ふざけの連続で、相手の飲み物にハナクソやらフケやら入れるわ、食い物ぶっかけるわ、屁を見舞うわ、小便かけるわ、中島ゆたかのチャイナドレスを下からのぞき込むわ・・・もう観ていて気恥ずかしくなってくる。接着剤でテーブルに手がくっついた郷治は、テーブルを手形に切り抜いてしばらくそれで登場するのはご愛敬。セスナ機がトンネル内を飛ぶ場面は「ミッション・インポシブル」を思い出したりなんかして!(もしかしてこれも影響なのか?)。クライマックスの大乱闘では、用心棒役安岡力也の目玉は飛び出すし、マフィアをバックに持つ悪役名和宏は、千葉真一の蹴りで首が一回転!、腸を引きずり出される!。残酷描写というより、もはやギャグ!。「キル・ビル」でも、青葉屋での格闘シーンに目玉が飛び出すアクションがそのまんま引用されている。またゴーゴーの頭上、ユマが天井に張りつくところも影響か?。ついでに服部半蔵の側近シロー役の大葉健二は、「直撃地獄拳・大逆転」に、ギャングの一人として出演しているらしい。探しだせますか?。



直撃地獄拳 大逆転 [DVD]直撃地獄拳 大逆転 [DVD]
石井輝男

東映ビデオ 2007-10-21
売り上げランキング : 47096

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


ブログランキング・にほんブログ村へ blogram投票ボタン
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

片腕カンフー対空飛ぶギロチン

2013-10-30 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その12)★ゴーゴー・ボール/♪Super16(空間美学PART2)

■「片腕カンフー対空とぶギロチン/獨臂拳王大破血滴子(One Armed Boxer VS The Flying Guillotine)」(1975年・台湾)

監督=ジミー・ウォング
主演=ジミー・ウォング カム・カン ドリス・ロン ロン・ファン

 オーレン・イシイのボディーガード、ゴーゴー夕張が操る鋼鉄の球が”ゴーゴーボール”。ブレザー姿の女子高生と鉄球という妙な組み合わせもあって強烈な印象を残してくれる。ゴーゴーのキャラがいたく気に入ったタランティーノが何度もそのシーンを撮り直すので、直径12センチの鉄球は何度も修理され、小道具係を泣かせていたとの話もある。さて、その武器のルーツとされるのが、ジミー・ウォング主演のこの映画。仇役の盲目の老殺し屋(カム・カン)が操る空とぶギロチン”血滴子”がそれだ。ガンダムのハンマーではないぞ(笑)。この”血滴子”は半球状のもので相手の頭に帽子の様にかぶさり、内側から刃が飛び出して首を引きちぎるという必殺の武器。これにはジミー・ウォング扮する片腕カンフーも苦戦を強いられた。決して想像の産物ではなく、中国の伝説や歴史書にも記録があるそうだ。

 本作「片腕カンフー対空とぶギロチン」は、ジミー・ウォング主演作「片腕ドラゴン」の続編として製作された。今回初めて観たのだが、正直面白い!。騙されたと思って一度観てくださいよ!。カルトな人気にも心底うなずける。前作で弟子を殺された封神無忌がギロチンを手に片腕ドラゴンに復讐するのがメインのお話。ここに異種格闘技トーナメントが絡むから俄然話が面白くなる。中国拳法だけでなく東南アジアのムエタイやらヨガ使い(手が伸びる場面はもう笑うしかないけれど)トンファーを操る日本人も登場して実に楽しい。仰々しい音楽とともにいちいち「勝」「負」と記した扇を開いて勝敗を宣告するレフリーも印象的。このトーナメント場面がアーケードゲームの「ストリートファイター」の元ネタとも言われる。ジミー・ウォングが弟子達の前で、空のカゴの縁を歩いたり壁を歩いたりする場面が登場するけどこれなんか「マトリックス」のアクションのルーツ?。とにかくエンターテイメントに徹しているのがいい。床が鉄板になっている小屋に火を放ち、裸足で戦うムエタイを苦しめる場面なんざぁ、ウケ狙い?とさせ思えてくるけど。

 悪役が魅力的だと映画は面白さが倍増するけれど、本作もその好例。というよりも悪役こそが主人公?と思えるくらいだ。弟子の復讐を誓って住処に火を放つオープニングにしても、壮絶な棺桶屋での死闘にしても、主人公ジミー・ウォングよりもずっと迫力がある。数々の仕掛けで封神を倒すジミー・ウォングの方がずっと情けない。封神が登場する場面では”ボイング、ボイング”と不思議な音楽が流れる。これはジャーマンロックのバンド、ノイが演奏する ♪Super16(空間美学PART2) で、映画で無断使用されたもの。タランティーノは「vol.1」でこの曲を使用、サントラにも抜粋が収録されている。オリジナルはずーっとあの調子で3分37秒・・・(呆)。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

グリーン・ホーネット

2013-10-28 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その11)★クレイジー88の”カトウマスク”/オーレン移動中のBGM

■「ブルース・リーのグリーン・ホーネット/The Green Hornet」(1973年・アメリカ)

監督=ノーマン・フォスター
主演=ヴァン・ウィリアムズ ブルース・リー ウェンディ・ワグナー

 ブライドが日本に到着、オーレン・イシイを追ってバイクで東京の街を走る場面。そこで流れた音楽を覚えておられるだろうか?トランペットが奏でるやたら忙しそうな旋律が印象的な曲。これが1960年代の人気TVシリーズ「グリーン・ホーネット」のテーマ曲だ。主人公は新聞・TVを操るメディア界の若き大物社長。事件が起こるとマスクを着けて悪を討つ!。若き日のブルース・リーが主人公の相棒カトウ役でレギュラー出演、華麗なアクションを見せている。ブルースが着けている”カトウマスク”は、もちろん「キル・ビル」でクレイジー88(オーレンの手下たち)が着けているマスクに引用されている。蛇足ながら「ピンクパンサー」シリーズでクルーゾー警部の召使いに”ケイトウ”という名のアジア人が登場するが、これももちろん「グリーン・ホーネット」のパロディ。男女がキスする壁画が割れて、ブラック・ビューティー号が現れる出動?シーンはかっこいい。この番組は「バットマン」TVシリーズ人気を追って製作されたものだから、富豪が裏でヒーローやってたり、マスク着けた助手がいるなど、共通点が見いだせるのも面白い。

 今回取りあげたのはTVシリーズの3話を編集した(つーか単につなげただけ)劇場版。ビデオでは「グリーン・ホーネット1」のタイトルでリリースされている。第1話は予告殺人ゲームをする”探検家クラブ”の面々をホーネットが粛正するお話。第2話は、空飛ぶ円盤墜落騒ぎを起こして住民を避難させ、そこを運搬する予定の核爆弾を奪取しようとするマッドサイエンティストのお話。いきなりシルバーの衣装にビン底レンズ付ゴーグルで登場するから、今見ると妙に笑える。それにゴールドの衣装を着た女性は手からレーザー光線を出し、ブルース・リーの動きを封じ込めるんだからすごいじゃん。でもこの劇場版のみどころは何と言っても、チャイナタウンの抗争事件を扱った第3話。日系人俳優マコ岩松(見ようによっては爆笑問題の太田光に見える・笑)とブルース・リーのカンフー対決は必見。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

フロム・ダスク・ティル・ドーン

2013-10-27 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その10)★テキサスレンジャーの元ネタ/エル・ドライヴァーの由来・・・

■「フロム・ダスク・ティル・ドーン/From Dusk Till Dawn」(1996年・アメリカ)

監督=ロバート・ロドリゲス
主演=ジョージ・クルーニー クエンティン・タランティーノ ハーベイ・カイテル

 ブライドが半殺しになったエル・パソの教会。そこに駆けつけたテキサス・レンジャー親子を覚えているだろうか。親父の方は、実は「フロム・ダスク・ティル・ドーン」の冒頭、クルーニーとタランティーノ兄弟に射殺されるテキサス・レンジャーを演じていたマイケル・パークス。息子の方はその続編で保安官助手を演じていたジム・パークス。その二人が「vol.1」ではそろって登場する、とまぁ楽屋落ちのようなネタですな。マイケル・パークスは、聖書を映画化した超大作「天地創造」(66)でアダムを演じていた俳優さん。TV「ツイン・ピークス」にも出演している。

 さて本作はタランティーノが脚本・出演したバイオレンス・アクションホラー(なんちゅうジャンル分けだ?)。前半は二人の犯罪者がメキシコへ逃げるまでを描いたクライム・サスペンス。しかし後半、待ち合わせ場所のいかがわしい店(名前が「おっぱいグルグル」だもんね!)に入るとそこは吸血鬼の巣窟だった!というホラームービーへと一変。その構成のすさまじさに唖然としてしまうが、延々と続く吸血鬼との戦いに、気づくと見入ってしまっていた自分がいる(笑)。主人公たちに迫る無数の吸血鬼をバッサバッサと倒していく場面は、「vol.1」のクライマックス、青葉屋の大立ち回りの予行演習みたいなもんだったのかもね。いやむしろ「キル・ビル」よりも荒っぽいし壮絶。

 ロバート・ロドリゲス監督は、製作費稼ぎのために新薬を体で試すバイトまでやっちゃう人だとか。それだけにいざ作り始めたらもうやりたいことはとことんやるんだね。股間から”オチンチン銃”出すわ、サルマ・ハエック扮する踊り子”地獄のサンタニコ”の足から酒流して飲んじゃうわ、裸のお姉ちゃんウヨウヨ出てくるわ、店の前で呼び込み兄ちゃんは"Pussy Pussy"繰り返すわ、ジュリエット・ルイス(実は僕、大ファンです)がトイレに座るシーンのおまけまでついて・・・うーんもう、こんな教育上よくない映画他にあるだろか?。・・・でも面白ーい!!

(追記)この映画にはメイキングフィルムがある。「パルプ・フィクション」でプロダクション・アシスタントだったサラ・L・ケリーが監督した「フル・ティルト・ブギ」(97)がそれだ。この映画のクレジットには「an L Driver Production」と記されている。サラの相性が”エル・ドライヴァー”だったというのが理由。ダリル・ハンナの役名はこれが由来なんだね。ちなみに「vol.1」の病院の場面で、サラ・L・ケリーは看護婦のひとりとして出演している。



コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

柳生一族の陰謀

2013-10-25 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その9)★神に会うては神を斬り、仏に会うては仏を斬り・・・

■「柳生一族の陰謀/Shogun Samurai」(1978年・日本)

監督=深作欣二
主演=萬屋錦之介 松方弘樹 千葉真一 西郷輝彦

 「武士たるもの、戦いに臨んでは己の敵を倒すことに専念すべし。これ兵法の第一義なり。人としての情けを断ちて、神に会うては神を斬り、仏に会うては仏を斬り・・・」ブライドがヴィヴィカ・A・フォックスを殺した後に聞こえる印象的なナレーション。これは、TV版「柳生一族の陰謀」のオープニングナレーション。タランティーノは日系のTVで同シリーズを観て以来お気に入りで、ナレーションの引用だけでなく、ジュリー・ドレフュスの拷問シーンにも同番組の音楽が使われているとか。もしも、タランティーノが気に入ったのが「必殺」シリーズだったら、あの♪チャララ~が使われていたかもしれないし、「大江戸捜査網」だったら「死して屍拾う者なし」ってナレーションが流れていたのかな・・・と想像すると楽しいではないか。

 映画「柳生一族の陰謀」は時代劇復権を賭けて東映が製作した大作時代劇。二代将軍秀忠が毒殺され、継嗣問題が持ち上がる。家光擁立派の柳生但馬守(萬屋錦之介)らと対立派の抗争劇が、「仁義なき戦い」同様見事に演出された大ヒット作である。このヒットで柳生十兵衛(千葉真一)を主人公にしたTV版が製作され、「赤穂城断絶」など大作時代劇が続けて製作されるにことになる。いやはやヒットは当然だ。史実云々言う以前に面白い。両陣営の政治的な駆け引きという静の部分と、千葉真一や志穂美悦子、若き真田広之らの動の部分がバランスよく配されて飽きさせることはない。成田三樹夫扮する烏丸少将文麿が剣の使い手であるのも面白いし、出雲の阿国(大原麗子)を愛する笛吹き原田芳雄の一途な男の思いには泣かされる。クライマックスの小笠原玄信斎(丹波哲郎)との対決シーンも見応えあり。そうした個々の人物像がとても魅力的。今回改めて時代劇の面白さを再認識させてもらった。時代劇を絶やしてはいかん!。頑張れニッポン!。ダリル・ハンナ扮する隻眼の殺し屋エル・ドライヴァーは、もしかして十兵衛がルーツ?





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ローリング・サンダー

2013-10-24 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その8)★エル・パソの教会/復讐劇の舞台はメキシコへ

■「ローリング・サンダー/Rolling Tunder」(1977年・アメリカ)

監督=ジョン・フリン
主演=ウィリアム・ディベーン トミー・リー・ジョーンズ リンダ・ヘインズ

 タランティーノが大のお気に入りの映画と言う「ローリング・サンダー」。彼が陽の当たらない秀作をリバイバルするために設立したローリング・サンダー・ピクチャーズは、もちろんこの映画が由来である。8年に及ぶ捕虜生活を経験したベトナム帰還兵の主人公は、町の英雄として帰ってきた。が、妻は別の男性と暮らしていて、息子は父親の顔も覚えていない。そして、メキシコのならず者たちに半殺しの目に遭わされて右手を潰され、最愛の息子と妻も殺されてしまう。主人公は復讐に燃えてメキシコへ・・・というお話。ポール・シュレーダーが脚本を手がけた本作は、いわばもうひとつの「タクシー・ドライバー」だ。「キル・ビル」では冒頭の教会がこの映画のクライマックス、テキサス州のエル・パソであること、そして「vol.2」でビルを追ってメキシコへ行く物語に影響を与えている。また右手がフック船長のような鍵の手である主人公も、頭を撃たれて金属がはめられている設定のザ・ブライドにつながる。ラスト売春宿での殺戮シーンもこじつければ青葉屋の大虐殺とも言えるだろうし。

 大した劇伴もなくとにかく物静かな主人公の姿を追う物語は、とても冷徹な印象を受ける。最愛の息子が殺される場面でも涙さえ見られない。よくあるハリウッド映画ならここで観客の感情をも高めるために大げさな工夫でもするところなんだろうけど、ここでは皆無。そして抑えていた怒りが復讐としてあふれ出すところは、もう任侠映画のノリ。だが主人公に憧れていた三十路前の女性リンダとの関わりは、この映画で唯一人情を感じるところだ。自分の復讐の旅に同行させながら、最後の復讐前には女をベッドに残し黙って去る。全てが終わってカントリーが流れるエンドクレジットは、不思議な安堵感を与えてくれる。ラストの襲撃に同行する元部下に若きトミー・リー・ジョーンズ。社会に受け入れられないベトナム帰還兵の姿を僕らは「ランボー」やら「タクシー・ドライバー」やら「ディア・ハンター」やらで観てきたけれど、復讐という思いにすがるこの映画の主人公もまた同じ。しかしそうした映画たちとは違った徹底した復讐アクションだから、ちょっと異質な存在ではある。要はこの映画は現代を舞台にしているけれど復讐ウエスタンなのね。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする