Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

007/カジノ・ロワイヤル

2024-02-10 | 映画(た行)


◾️「007/カジノ・ロワイヤル/Casino Royal」(1967年・イギリス)

監督=ジョン・ヒューストン ケン・ヒューズ ロバート・パリッシュ ジョセフ・マクグラス ヴァル・ゲスト
主演=デビッド・ニーブン ピーター・セラーズ ウルスラ・アンドレス ウディ・アレン

イアン・フレミングの原作「カジノ・ロワイヤル」の映画化作品。ダニエル・クレイグ版とは全く違う、大スケール、オールスターキャストのコメディ映画である。製作上の様々な問題があって出来上がった異様な産物。原作リスペクトとは程遠い映画だが、当時フレミング自身はこの映画化をどう思っていたのだろう、と想像してしまう。フレミング自身は、ジェームズ・ボンドはデビッド・ニーブンをイメージしていたと聞くので、その点についてだけは異論はなかったのかな。

確かに異様な作品なのだが、製作から長らく経った今観ると、その後の米国製プレイボーイスパイ映画や、「オースティン・パワーズ」に代表されるスパイコメディの先駆けとも言えるだけに、そのハチャメチャぶりを楽しんでしまう。

オシャレなデザインのタイトルバックにパート・バカラックの音楽。80年代のクイズ番組「世界まるごとHow Much」の最後に流れるプレゼントクイズのBGM、これだったよね!軽快なハーブ・アルパートのトランペット🎺に心が躍る80年代育ち😆w。挿入歌は名曲The Look Of Love(恋の面影)。いい曲だ。ライオンが出てくる場面では、「野生のエルザ」主題曲が流れるおふざけも。デボラ・カーが出る場面では突然悲しげなメロディに変わる。これ彼女がらみの映画主題曲?自信ないけど、修道女になる場面が出てくるから「黒水仙」なのかな。

ストーリーの軸となるのは、カジノで悪事の資金調達をするルシッフルの企てを阻止するために、独自のバカラ必勝法を持つイブリンにジェームズ・ボンドを名乗らせて対決させるお話。しかしそこに辿り着くまでに、引退したボンド卿を復帰させるための紆余曲折、女だらけの屋敷でのどんちゃん騒ぎ、マネーぺニーの娘による新007スカウト。そして実業家となったヴェスパー・リンドを使ってイブリンを仲間にし、ボンド卿の娘まで登場する。ストーリーをちゃんと追うと回りくどい展開にイライラすること必至だが、カラフルな色彩感覚と、今の誰?と目が離せないカメオ出演と遊び心を超越した悪ふざけで飽きないから不思議。

ボンド引退後に後継者がボンドを名乗っているから、複数のボンドがいるという設定。その一人で、ボンドの甥ジミー・ボンドを演ずるのはわれらがウディ・アレン先生。これがアレンらしいコンプレックスの塊で、笑わせてくれる。ウルスラ・アンドレスは「ドクター・ノオ」とは違って妖艶な役柄、ルシッフルはオーソン・ウェルズが貫禄を示す。イブリンを誘惑する美女ミス・フトモモはジャクリーン・ビセット♡。他にもシャルル・ボワイエ、ピーター・オトゥール、ジャン・ポール・ベルモンドなどなどチョイ役なのに豪華絢爛。ベルリンのオークション場面に出てくる男性は、「ロシアより愛をこめて」に出てくるチェスの人やんw。突然現れるフランケンシュタインの怪物。演じているのは後のダースヴェイダー、デビッド・プラウズw。

スパイ養成学校がドイツ映画「カリガリ博士」みたいな雰囲気だったり、共産圏の人物が出てくると照明が赤くなったり、クライマックスは空飛ぶ円盤まで登場して、まさに混沌。観る人を選ぶ映画だとは思うが、2時間のカオスを楽しもう。




コメント (2)
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天使の詩

2024-01-25 | 映画(た行)


◾️「天使の詩/Incompreso」(1965年・イタリア)

監督=ルイジ・コメンチーニ
主演=アンソニー・クエイル ステファーノ・コングランデ シモーネ・ジャンノッツィ ジョン・シャープ

家族でテレビを見るのは楽しいけれど、それが映画だったらきっと思い出になる。

これはわが妹の弁なのだが、いい文句なのでちょくちょく使わせてもらっている。お正月に家族で映画をテレビで観たことは多々あったけれど、特に記憶に残っているのはフランコ・ゼフィレッリ監督の「チャンプ」を観たこと。妹と親父がグスグス泣いてティッシュ箱の奪い合いになったっけ。今でも家族で映画が話題になる時、親父殿を泣かす最高の映画として名前が挙がる。

さて。今回観たのは親父泣かせの父子もの。イタリア映画「天使の詩」である。

病弱な弟をもつ少年アンドレア。映画冒頭、悲痛な面持ちで外交官の父親が帰宅して、アンドレアは母を亡くしたことが示される。父は幼い弟に母が死んだことを黙っておくようにアンドレアに言う。大人のことがわかってきたけれど、まだまだ子供のお年頃。アンドレアは母を失った悲しみに暮れる一方で、自分の行動で弟の病状が悪化すると大人たちから煙たがられる。父は弟ばかりをかわいがる。そんな折にウィルおじさんが訪れる。おじさんは子供が嫌いだと言うが、アンドレアの行動から彼の孤独を感じ取っていた。

イタリア語の原題は「誤解」。子供の気持ちに真正面から向き合っていたら、アンドレアは寂しい思いをしなくてすんだのかもしれない。一人書斎で亡き妻の声が録音されたテープを聴く寂しさもわかるけれど、子供に母の死を伝えて、家族のこれからに3人で向き合うことはできなかったのかなとも思えた。アンドレアがテープに残された母の声を聴く場面、それを父が独り占めしたと言う台詞も心に残る。

負傷したアンドレアが、母の肖像画が飾られた居間に寝かせてと願った気持ち。観客だけには明示されるが、父は気づいていたのだろうか。無言のラストシーンが切ない。






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ドラゴン怒りの鉄拳

2024-01-08 | 映画(た行)

◾️「ドラゴン怒りの鉄拳/Fist Of Fury」(1972年・香港)

監督=ロー・ウェイ
主演=ブルース・リー ノラ・ミャオ ロバート・ベイカー ジェームズ・ティエン

高校時代に地上波で観たのが最初。あの頃はアクションや復讐劇だけを楽しんでいたけれど、改めて観ると時代背景や人間ドラマも興味深い。

突然亡くなった師匠の葬儀のために精武館に戻ってきた主人公チェン。虹口道場の嫌がらせに怒ったチェンは単身乗り込んで仕返しをする。しかしこれが精武館の仲間を窮地に陥れることになってしまう。師匠が毒殺されたことを知ったチェンは、身を隠しながら虹口道場に復讐を決行する。

清朝末期の中国は、租借地を認めたり、各国の勢力圏があって、まさに列強に食いものにされていた"中国分割"の時代。舞台となるのは上海の日本人租界。租界とは警察権がその国がによって掌握されている場所だけに、日本人に逆らうことが難しい。映画の中でも警察署長が精武館と日本武術の虹口道場の対立の板挟みになる様子が描かれる。そうした時代だけに、中国を支配する外国人に対する怒りはくすぶり続けていた。

そんな背景を考えると、外国人たちが一斉に銃口を向けるラストシーンに込められた悲しみは一層深くなる。怒りと絶望が無言で表現された、もはや伝説的な名場面。ブルースの死後製作された「死亡遊戯」でも引用されているだけに、そのインパクトがいかに大きなものだったか。

多くのカンフースターの中でも、ブルース・リーのアクションはやはり別格。華麗なヌンチャクさばきは何度観ても惚れ惚れする。ロー・ウェイ監督による続編、多くのリメイクも製作された時代を超えてその凄さが語り継がれる作品。クライマックスの日本庭園での死闘は、「キル・ビルvol.1」のラストに影響与えてるのかも。

袴の履き方が前後逆だったり、ソーラン節でお座敷ストリップ…とおかしな日本描写が出てくる。日本文化に対する理解が進んでいない時代の作品。




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007/美しき獲物たち

2023-12-13 | 映画(た行)


◼️「007/美しき獲物たち/A View To A Kill」(1985年・イギリス)

監督=ジョン・グレン
主演=ロジャー・ムーア クリストファー・ウォーケン タニア・ロバーツ グレイス・ジョーンズ

リアルタイム世代としてはいろいろ思い入れのある映画。個人的な好みとして喜ばしいポイントがいくつもあった。まずは悪役がクリストファー・ウォーケンであること😆。「ディア・ハンター」に感激した者としても嬉しかった。また、オスカー受賞歴がある華のある俳優の出演は、渋いキャスティングが多かったこれまでとは違う。一方でグレイス・ジョーンズをキャスティングしたのは、時代を焼き付ける上でも重要な要素。

そして主題歌がデュランデュラン!😆😆。実力派が並ぶ歴代歌手は素晴らしいが、やっぱり英国産が欲しい。そこに純英国産、流行りのニューロマンティック路線。ボンド映画ぽさと当時の電子音が融合する大好きな主題歌だ。ベースのジョン・テイラーが映画好きだったから実現したと聞くとますます嬉しい。そもそもバンド名は「バーバレラ」由来、ヒッチコック映画由来の楽曲もあるくらいだし。

しかしながら。正直なところ、作品自体は歴代ボンド映画の中でもあまり好みではない。理由はいろいろある。ベッドシーン以外はスタントマンと揶揄されたロジャー・ムーアは相変わらずだったし、タニヤ・ロバーツは「ポパイ」のオリーブ級に悲鳴あげてるだけの存在にしか見えなくて。それでもエッフェル塔での立ち回りも、サンフランシスコの派手なカーチェイスも、ラストのゴールデンゲートブリッジの格闘場面も、娯楽映画としては一級品。今回改めて観ても手に汗握る。え?今は更年期だから?るせー💢

どちらかというとハード路線の007が好き。冒頭のビーチボーイズが流れるアクション場面は楽しいけれど、そこで笑いは欲しくない。でも、この冒頭の軽いツカミがロジャー時代らしさでもある。プレタイトルの場面はストーリーの導入に使われることが多いけれど、本筋が始まる前に派手に見せつけるこの演出は、後の多くのエンターテイメント作品や、現在の「ミッション:インポッシブル」にも受け継がれているとも言えはしないか。ロジャー=ボンド時代は、後の娯楽映画のフォーマットを形造る役割を果たしていたのかもしれない。

公開当時、ロジャー・ムーアはもうボンド役者としては年齢が高すぎる、若いおねいちゃんたちがなびく役は観客が納得できない、めいた意見もあった。あの頃は僕もそう思っていた一人でもある。

しかしだ。撮影当時のロジャー・ムーアの年齢を知って考えを改めた。だってもうすぐその年齢に自分がなっちゃうんだもの!😨。ハードなアクションに挑むトム・クルーズは活動写真屋(古い言い方ですみません)として尊敬するが、いやいや、本作のロジャー・ムーアだって(背景が合成だと分かっていても)できる限りのことをやっているじゃない!少なくとも、ボンド役者が観客の夢を壊さないように頑張ってるじゃない!そう思うと「美しき獲物たち」がちょっと愛しくなってきたのでしたw。

最後にひと言。脇役にドルフ・ラングレン発見!(嬉)




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翔んで埼玉〜琵琶湖より愛をこめて〜

2023-12-02 | 映画(た行)

◼️「翔んで埼玉〜琵琶湖より愛をこめて〜」(2023年・日本)

監督=武内英樹
主演=GACKT 二階堂ふみ 杏 片岡愛之助 藤原紀香 

2019年。マーチン・スコセッシ監督がアメコミ映画に対して「映画ではない」発言をして物議を醸した。その発言は「人間の感情、心理的な経験をまた別の人間に伝えようとする映画ではない。テーマパークだ。」と続く。しかしだ。エンターテイメントたる娯楽性と、経験や日常を踏まえた人間の感情を描くことが共存できる映画はある。

地域格差がもたらすコンプレックスと憧れ、偏見、ヒガミという感情で我々観客の共感を呼びながら、一方でまさにテーマパークのような楽しさと呆れるほどのくだらなさが共存する映画があるではないか。そう!他ならぬ「翔んで埼玉」だ。こんなこと言うと硬派な映画ファンのお叱りを受けそうだけど、僕は心底そう思った。あ、魔夜峰央の熱烈ファンでもありますけどねw。

その「翔んで埼玉」まさかの続編。原作者までもが「正気か?」とおっしゃったクレイジーな企画。今度は関西を舞台に埼玉解放戦線と滋賀、そして和歌山と奈良が絡んで、大阪府知事が企む日本大阪化計画に立ち向かう物語。映画冒頭から突飛なエピソードが続く。もちろんご当地ネタも満載なのだが、さんざん笑わせてくれながらも、前作同様そこにきちんと愛がある。交通安全啓発の"とびだしとび太"にこんなに笑わされて、クライマックスで感動させられるなんて、誰が想像しただろう。人気ハリウッド映画のパロディ、テレビでおなじみの人気者の出演。確かにあざとい笑いの誘い方。さすがテレビ局資本の愚作、と罵る方もあるだろう。でも、しっかりそれに釣られて笑顔になってる自分に気づく。

閑話休題。
僕らは日々の生活で"大阪化"を感じたことはないだろうか。方言において英語のveryにあたる言葉は、九州北部だけでも、はうごつ、まうごつ、だごんごつ、しんけん、てーげ、たいげなetc、と色とりどり。ところが関西のめっちゃは今や全国区。ツッコミやボケの言葉なんて、日々何気なく使われている。大嫌いだったかつての上司は博多弁でまくしたてた後で「知らんけど」を付けてイラッ💢とさせるし、商談のために怪しげな関西弁を駆使する上司もいた。いいんかのぉ、こげなんで。九州人ちプライドはねぇんか(素が出ている💧)。あ、私ごとでございましたw。

ジョーカーを思わせる衣装の大阪府知事が、人々を大阪化する白い粉を撒き散らそうとするクライマックス。通天閣に笑い転げたけれど、その笑いの根底には、世の大阪化をどこかで感じてる気持ちがある。田舎育ちのヒガミ根性があるから、この映画を面白いと感じちゃうのかなぁ。確かに関西の粉もん文化を大スケールで茶化してはいるけれど、ちゃんとそこには愛がある。原作にはないストーリーを見事にでっち上げてくれました。埼玉ポーズと滋賀県の県章が重なるのにグッときた。あー楽しかった。コロナ禍を経験して鬱憤溜まってるニッポンをちょこっと笑顔にしてくれる。

滋賀のオスカルを演じた杏ちゃん。今年は「キングダム 運命の炎」でも大活躍だったし。
「煮るなり焼くなり抱くなりして♡」😆
映画観た日の夜、とび太が夢に出てきたって人絶対いるだろなww。もし続編があるなら次はどこをディスってくれるだろ?。でもディスられるのが羨ましいとすら思える。
それも愛。たぶん愛。きっと愛。




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007/オクトパシー

2023-11-13 | 映画(た行)

◼️「007/オクトパシー/Octopussy」(1983年・イギリス)

監督=ジョン・グレン
主演=ロジャー・ムーア モード・アダムス ルイ・ジュールダン クリスティーナ・ウェイボーン

ロジャー=ボンド第6作。前作のシリアスなアクション路線から、ロジャー時代らしいエンターテイメントへとシフト。特にアクションでも活躍する大勢の美女軍団を観たければ、シリーズ中唯一の該当作。謎の女性オクトパシーが率いる軍団、サーカスの美女たちが躍動するのを、鼻の下伸ばして眺めるにはもってこいの一作。ロジャー・ムーアが「ラブシーン以外はスタントマン」と揶揄されるのもわかる気はするw

しかしスパイ映画らしいギミック感は楽しいし、凝ったアクションも満載。冒頭の飛行機アクション、ボンドカーこそ出てこないが激しいカーチェイスもあり、プロペラ機にしがみつく決死のクライマックス。高所恐怖症には辛いw。爆破のタイムリミットが迫るハラハラ、美術品をめぐる事件とソビエトの関係解明もあり、全編通じて楽しめる娯楽作になっており、興行収入でも成功を収めている。

WWⅡ後の東西冷戦が雪解けに向かっている時期(1989年のマルタ会談で終結)の映画だけに、ソ連からの動きはタカ派のいち将校が企んだ陰謀とそれに協力する富豪が悪役で、国の作戦でスパイがぶつかり合うお話ではない。そこは時代を反映していると言える。好戦的なソビエトの将校をスティーブン・バーコフが怪演。イギリスの俳優さんだけど、ロシア人の悪役が多い人だよね。

ボンドガールは「黄金銃を持つ男」から2度目の出演となる北欧美人のモード・アダムス。ボンドに個人的な事情から並々ならぬ興味があり、裏社会の取引も手掛ける大人のデキる女。当時歴代最年長のボンドガールだった。先頭切って乗り込んでおきながら、アクション場面が今ひとつなのはやや残念だったが、その分補佐役の美女クリスティナ・ウェイボーンが活躍してくれる。



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誰もがそれを知っている

2023-11-01 | 映画(た行)


◾️「誰もがそれを知っている/Todos lo saben」(2018年・イタリア=スペイン=フランス)

監督=アスガー・ハルファディ
主演=ペネロペ・クルス ハビエル・バルデム リカルド・ダリン バルバラ・レニー

妹の結婚式の為にアルゼンチンからスペインに里帰りしたラウラと子供たち。幼なじみパコや家族との再会を喜んだが、結婚式後のパーティーの最中に娘イレーネの姿が見えなくなってしまう。そして身代金を要求する連絡が。アルゼンチンから夫も駆けつける。時間稼ぎの策を講じる中で、次第に家族が隠してきた秘密が明らかになっていく。

ハルファディ監督の映画は、「彼女が消えた浜辺」を観たことがある。「誰もがそれを知っている」と同様に、楽しい時間の中で誰かがいなくなり、不安な空気の中で次第に複雑な人間関係が露わになっていく物語だ。「彼女が消えた〜」が悶々とした気持ちで終わりを迎えるのに対して、こちらは一応の決着を迎える。娘の為に隠してきた事実を口にする妻、ラストシーンで問いかけに答えられない無言の夫、そして幼なじみのパコが思いがけず知ってしまう事実。とにかく切なく、痛々しい。そんな3人をとりまく人々が、事件の背景と次第に重なる展開にハラハラする。

エンドクレジットを迎えて、タイトルにいろんな意味が受け取れる。「それ」とは事件の真相、夫婦が隠してきた事実、貧しい村の現実、過去。ペネロペ・クルスとハビエル・バルデムの夫婦共演。「瞳の奥の秘密」のリカルド・ダリンは無表情なのに、感情が伝わるいい演技。

(2019年12月)

『誰もがそれを知っている』日本版予告編


誰もがそれを知っているBlu-ray
ペネロペ・クルス,ハビエル・バルデム,リカルド・ダリン
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007/ロシアより愛をこめて 4Kレストア版

2023-10-28 | 映画(た行)

◼️「007/ロシアより愛をこめて 4Kレストア版」(1963年・イギリス)

監督=テレンス・ヤング
主演=ショーン・コネリー ロバート・ショウ ダニエラ・ビアンキ ロッテ・レニア

007シリーズ10作品を4Kレストア版で公開する60周年上映企画。ジェームズ・ボンドこそ男子の理想と刷り込まれて育った僕にとっては見逃せない機会🤩。どれを観るべきか悩ましかった。3連休の最終日にやっとありつけた😆。選んだのはシリーズ第2作「007/ロシアより愛をこめて」。

007/ロシアより愛をこめて - Some Like It Hot

007/ロシアより愛をこめて - Some Like It Hot

◼️「007/ロシアより愛をこめて」「007危機一発」(1963年・イギリス)監督=テレンス・ヤング主演=ショーン・コネリーロバート・ショウダニエラ・ビアンキロッ...

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小学生の頃から何度観てるかわからないし、吹替版で台詞を丸暗記している場面すらある。それでもこれを観たのは時間の都合と、ショーン・コネリーの(正規の)ボンド映画をスクリーンで観たことがなかったから。以前に「自分に影響を与えた好きな映画のオールタイムベスト10を選べ」との難問を突きつけられて、自分の嗜好を語る上では外せない作品としてセレクトしたこともある。スクリーンで味わいたくって😆。

初公開時に「007危機一発」との邦題がついたのもうなづける。まさに危機また危機。Mに応援を求めてもことごとく阻止するロバート・ショー。ひたひたと彼の魔手がボンドに迫っていくのが、改めて観てもスリリング。吹替版育ちなもので、ロッテ・レニアの巻き舌の喋りが耳に残った。トルコでの協力者ケリムを演じたペドロ・アルメンダリス、他の映画で観たことがないのだが、笑顔がいいおっさんだ。

何よりも若きショーン・コネリーをスクリーンで堪能できたのが嬉しい。クライマックスの大活躍はカッコいいし、紳士的な振る舞いも素敵だ。そしてダニエラ・ビアンキ。彼女を大スクリーンで拝めたのも幸せ。親父殿がビデオで観ながら一時停止ボタンを押しまくったベッドイン直前の場面。映画館の暗闇で思わずニヤつく。組織に使われただけの存在ではあるが、最後の最後で自分の意思を持つ。

やっぱり本作が好きだと再認識した2時間でございました。

レストア版上映の予告編

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沈黙の艦隊

2023-10-07 | 映画(た行)

◾️「沈黙の艦隊/The Silent Service」(2023年・日本)

監督=吉野耕平
主演=大沢たかお 玉木宏 ユースケ・サンタマリア 中村倫也 江口洋介

コミック原作ものは実写映画化が難しい。観る側にはビジュアル面である配役にもストーリー運びにも、原作の固定されたイメージがつきまとう。新規エピソードや独自のキャラクターを追加すれば、映画独自の試みを称されもするし、原作へのリスペクトがないと騒がれもする。一方で撮る側には、原作の絵がイメージとして付きまとうからショットが固定されたり、制約を受けたり。周知のこととして説明的な部分を省いてしまったり、原作愛が空回りしてしまったり。比べるものが明確だから、批判したい向きには格好の材料になる。人気作ほど難しい。

この原作が世の中で騒がれた頃を知ってる世代なら、なおさら思い入れがあるだろう。国会で話題になったこともあったよね。僕もその一人だ。だからどうしてもキャスティングから興味を持ってしまう。首相を演ずる笹野高史。これまた弱々しいキャラクターになっている。この後の大決断をする場面とかどうなっちゃうんだろ…😥。橋爪功演ずる参与のモゴモゴした喋りに字幕が欲しくなる。女性乗組員や大臣を配置してアップデートされているけれど、2023年目線だと、この事態に反応を示すのはアメリカだけではないだろう?とも考えてしまう。

そこは原作をリスペクトする撮る側の人々が信念を貫いた印象だ。この作品に触れることは、日本の国際的な立ち位置や国防のあり方について考える契機になるに違いない。原作はエンタメ要素とシリアスな政治的要素をバランスよく理詰めに描いている好例。原作を知らない若い世代にこそ観て欲しい。また、世の中会議で動いているんだ、と「シン・ゴジラ」級に思い知らせる話でもある。

緊張感が途切れず、没入感がある作風。聴覚に頼る操艦のスリリングさと、潜水艦の動きがいい配分で描かれるから、海江田艦長の操艦技術の高さをビジュアルで見せつけ、深町艦長が付け加えるひと言がいい解説になっている。こうした見せ方のうまさが光る。戦闘シーンを第一艦橋のシーンで終わらせた、悪しき宇宙戦艦の実写版とは天と地の差だ。暗くスピード感か希薄になりがちな海中シーンも、頑張っている印象。

それにしても。悲しいかな、原作が世に出てウン十年経つのに、現実世界では核をめぐる議論が当時とさほど変わっていない。そして本作の続編があるならば、"専守防衛"の現実が描かれることになる。どんな描写になるのか今から興味をそそられる。

大沢たかおが、一回くらい「フフフフッ♡」と王騎将軍みたいに笑わないかなと期待してしまった私💧Adoが歌うB'z作の主題歌よき。




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007/ユア・アイズ・オンリー

2023-09-16 | 映画(た行)

◼️「007/ユア・アイズ・オンリー/For Your Eyes Only」(1981年・イギリス=アメリカ)

監督=ジョン・グレン
主演=ロジャー・ムーア キャロル・ブーケ トポル ジュリアン・グローヴァー

"ジェームズ・ボンドこそ男子の理想"めいた刷り込みをされて育った僕(毎度同じ書き出しですみません😝)。その刷り込みの張本人である父と映画館で007映画を鑑賞する機会が訪れる。それが「ユア・アイズ・オンリー」だった。この頃、わが家では007映画は家族で楽しむ存在になっており、結局父は僕と2人の妹を連れて行くことになる。下の妹は小学生。今思うと、伯爵夫人とのイチャイチャやリン・ホリー・ジョンソンがベッドにもぐりこむ場面なんて、親父殿は内心気まずい思いをしていたのではなかろうかw。

とは言え、大風呂敷広げた前作と違って、本作はアクション中心の原点回帰が魅力の作品。イアン・フレミング原作のうち映画化されていない短編いくつかと、他の作品から引用されたシーンが脚本には反映されている。ボンドとメリナが縛られてサメのいる海を引き回される印象的な場面は、「死ぬのは奴らだ」の原作に登場する。

また印象的なプレタイトルは、「女王陛下の007」で亡くなった妻の墓参りをする場面から始まり、ブロフェルドらしき車椅子の男がボンドが乗るヘリコプターを遠隔操作して苦しめる空中アクションへとつながる。従来のファンを唸らせつつ派手な見せ場で楽しませてくれる。続くメインタイトルでは、シリーズ唯一主題歌を歌う歌手が登場する大サービス。この掴みは完璧だと言っていい。

一方でロジャー・ムーアのユーモアあるボンド像は健在で、Qの実験室の怪しげな発明品、懺悔室での進捗報告、オウムが覚えた言葉で事態が進むお気楽な展開は、ハードなボンド像を期待したファンには気持ちが萎えてしまうところかも。ボンドに危機が訪れるのはお約束だとしても、ここまで次から次へと途切れなく刺客がやって来るのは、映画の緊張感が持続するためにはアリなんだろうが、盛り過ぎのような気もする。

さて。高所恐怖症の僕にとって、クライマックスのメテオラのロッククライミングはこの映画最大の難所のはず。でも、トム君映画と違ってわが身がそこにいるかのような臨場感とは違う。絶壁にぶら下がってるボンドを遠目に見ているショットがほとんどなので、今回観ても平気だった。「ラピュタ」の方がよっぽど手に汗握る(だから更年期なんだって😒)。

バイクやラストシーンに登場する時計など、日本製品が登場するのも、東西冷戦の描写も、1980年代前半の空気を感じさせる。音楽を「ロッキー」のビル・コンティが担当しているのも特筆すべきポイント。ホーンセクションが印象的な派手めの劇伴が多く、ギリシャの民族音楽の使われ方もいい。そしてキャロル・ブーケがとにかく麗しい。わが妹が歴代ボンドガールでいちばん憧れるのは、キャロル・ブーケだと言う。初めて映画館で見たボンド映画だもんな。





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