Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

クラッシュ

2006-07-08 | 映画(か行)

■「クラッシュ/Crash」(2005年・アメリカ)

●2005年ラスベガス映画批評家協会賞 助演男優賞
●2006年シカゴ映画批評家協会賞 作品賞・監督賞
●2006年アカデミー賞 作品賞・脚本賞・編集賞

監督=ポール・ハギス
主演=サンドラ・ブロック ドン・チードル マット・ディロン ブレンダン・フレイザー 

 クリスマス目前のロサンゼルス。様々な人種が暮らすこの街で、人と人がぶつかり合い、すれ違う。この映画で描かれるのは、厳しい人種差別の現実。ちょっとした食い違い、行き違い、言葉が足りないことから起る、怒り、憎悪、殺意、偶然の出来事・・。「ミリオンダラー・ベイビー」の脚本を書いたポール・ハギス監督は、多くの登場人物を見事に描ききる。誰かに重きを置くわけでもない。同じ人として平等に扱われるように、どのエピソードも丁寧に描かれていく。この映画が素晴らしいのは、そこだ。差別してしまう側、差別される側の立場をきちんと描いていること、人は善人にも悪人にもなる、ということ。

 一般的なハリウッド映画はわかりやすい。それは善と悪、敵と味方とハッキリした線引きがされているからだ。善人は徹底的にいい人に描かれ、これが人間としての理想だぞ、と言わんばかりの描かれ方をしがちだ。正直、押しつけがましいのだ。「クラッシュ」に登場する人々が温かいのは、両面が描かれているからに他ならない。差別主義者のマット・ディロン巡査も、一方では父親の介護に懸命だ。サンディ・ニュートンを車から助け出す場面はスリリングだが、それは危険というスリルと、お互いの感情がぶつかり合うスリル。現場から離れていくサンディ・ニュートンの視線には、彼の違った面を見た複雑な心境がある。名場面だ。ドン・チードルだって母親を思う一面をみせながらも、一方で相棒の女刑事を苛立たせる言葉も口にする。ライアン・フィリップ巡査のエピソードも忘れがたい場面だ。そこに”あなたはどう?”という問いを突きつけられているようでもある。

 映画の冒頭、ドン・チードルの台詞は印象的だ。
「この町の人間は金属やガラスで囲まれて生きているから、ふれ合うことはない。だから”衝突”したがっている。」
ここで描かれる人種差別や偏見がもたらす憎悪、銃社会の恐ろしさ・・・普通なら避けたくなるような重々しいテーマのはずなのに、映画が終わる頃、僕らはこの人間模様をもっと眺めていたいとさえ感じる。それは、きっと僕ら自身も人とのふれあいを求めているからなのだろう。ステレオフォニックスの「メイビー・トゥモロー」が流れるラストシーンで、そう考えた。「透明マント」のエピソードはちょっとできすぎ?とも思ったが・・・正直、泣いた。

クラッシュクラッシュ
ポール・ハギス ボビー・モレスコ サンドラ・ブロック


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