Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

ボルベール 〈帰郷〉

2007-11-04 | 映画(は行)

監督=ペドロ・アルモドバル
主演=ペネロペ・クルス カルメン・マウラ ロラ・ドゥエニャス ブランカ・ポルティージョ

 僕がペドロ・アルモドバル作品を初めて観たのは「トーク・トゥ・ハー」。人間を見つめる優しい視線が感じられて、他の映画作家では作り得ない映画であった。不勉強な僕はその後アルモドバル作品を観たい!と思いつつも結局これが2本目。これもペネロペちゃんのお陰であるな。この映画でのペネロペ・クルスは実に輝いている。でもそれは共演の女優たちの輝きあってのもの。

 「ボルベール 帰郷」では、次々に銀幕の中で人が死んでいく。でもそれらの死には必ず”秘密”がつきまとう。ペネロペ扮するライムンダの夫がキッチンで刺殺。これは15歳の娘に関係を迫ったために起った事件。ライムンダはこの事実を隠そうとする。故郷に住む叔母の死。ところが叔母の家で、死んだはずの母の姿を姉ソーレは目にする。その母と父はかつて火災で死んでいたのだが、向かいに住むアグスティナの母親の失踪が関係しているということまで絡んでくる・・・。夫の死体を冷凍庫に隠し、友人の手を借りて川原に埋葬したり、母が生きていた真の理由・・・と社会的には許されぬことばかりだが、それらは男たちのインモラルな身勝手に端を発していることばかりでもある。「許して欲しくて戻ったの」という母の言葉。そして”秘密”の真相が明らかになるラスト。絆を深め合った彼女たちは、ひっそりと力強く、美しく生きていくのだ。

 スペイン映画で描かれる人間ドラマは、どうしてこうもとんでもなく濃いのだろう。しかしそれらはドロドロしてはいても、どこかあっけらかんとしたユーモアで包まれている。この「ボルベール」も然り。まるでヒッチコック映画を観ているようなユーモアがあって、緊張が続く物語に安堵がもたらされるラストまで全く目が離せない。これはミステリー仕立ての家族愛についての映画。女優陣全員に女優賞をあげちゃったカンヌの心意気もこれを観れば納得がいくはず。こんな映画、アルモドバルにしか撮れない!。



コメント (4)
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