■「エリザベス:ゴールデンエイジ/Elizabeth: The Golden Age」(2007年・イギリス=フランス)
監督=シェカール・カプール
主演=ケイト・ブランシェット ジェフリー・ラッシュ クライヴ・オーウェン
98年の「エリザベス」は未見、というか映画館で見逃した。観るぞぉ!と思い立ったあの日、突っ走ったのだが本編上映開始に間に合わず・・・。まぁビデオで観ればよかったのだが。メアリー1世の死後、エリザベスが25歳で女王となってから”国との結婚”を宣言する物語が前作だった。今回のメインはプロテスタント(英国国教会)であるイギリスと、厳格なカトリック国であるスペインとの対立を背景に、スペイン無敵艦隊と戦う英国最大の危機に立ち向かうお話。予告編を観たときに、歴史劇をなんで活劇エンターテイメントにする必要があるんだ?と疑った。
僕はこの映画をかなり楽しめた。チューダー朝の歴史が好きだからというのもある。だがこの映画の魅力は、一人の女性としての自分と、国王としての立場の狭間で揺れる心情がつづられる人間ドラマにある。クライヴ・オーウェン(この人が007になることを僕は心底望んでいたのだが)扮するウォルター・ローリーに対する恋心。城の中にはいない荒々しく頼もしいタイプであるローリーに、興味を持つエリザベス。冒険話にわくわくする様子が伝わってくる。時に権威を示して自分に従わせようとする。でもそうではなく、女性として彼に接したい・・・。「死んでもいい・・」と小さくつぶやく、二人の短いキスシーンはとても切ない。国王という立場がなければ、もっと素直に心を伝えられるだろうに。それだけに、付き人ベスがローリーの子供を身ごもったことを知って、取り乱す場面が強く印象に残る。
この映画は英国人にとって”国威高揚映画”なのでは?と思えた。それは宗教対立で国をも従わせようとするスペインに対して、エリザベス(というよりもイギリス)は「信条で人を罰しない」とカトリックにも理解を示す。黒服のスペイン人たちはどこか不気味な印象さえ与える。アルマダの海戦が描かれる場面は予告編からの想像よりも短いけれど、迫力は十分。そして黄金時代を迎えたのでしたという結末を経て、エンドクレジットが流れる頃には、きっとイギリス人は拳を握りしめて勝利の映像に酔いしれているのではなかろうか。ついでに、このシェカール・カプール監督はパキスタン出身。かつて大英帝国に支配された国の監督が、絶対王政期のイギリス映画を撮るなんて、ちょっと面白い。エリザベス暗殺をもくろむライバル的存在のスコットランド女王メアリー・スチュワートは、サマンサ・モートンが演じている。
エリザベス : ゴールデン・エイジ ケイト・ブランシェット, ジェフリー・ラッシュ, クライヴ・オーウェン, サマンサ・モートン, シェカール・カプール ジェネオン エンタテインメント 2008-08-06 売り上げランキング : 653 Amazonで詳しく見る by G-Tools |