■「奇跡のシンフォニー/August Rush」(2007年・アメリカ)
監督=カーステン・シェリダン
主演=フレディ・ハイモア ケリー・ラッセル ジョナサン・リス・マイヤーズ ロビン・ウィリアムズ
音楽と映像が一体化した瞬間の感動。これまで観た多くの映画で、その瞬間に身が震えた。この映画は、物語自体に音楽が大きな要素として絡んでくる。そこがこの映画の素晴らしいところ。ストーリー自体はやや陳腐だし、ご都合がいい話ではある。普通ならきっと観ている途中で冷めてしまうのだろうが、合格点をつけられるような感動に導いてくれたのは、何よりも音楽が持つ力の偉大さだ。
ロックミュージシャンの男性とチェリストの女性が一夜の恋におちる。ふたりは幸せな夜を過ごして運命に引き裂かれてしまう。彼女は妊娠、さらに交通事故に遭う。昏睡状態に胎児は助けられたが、父親の手によって施設に送られてしまう。ビジネスマンとして働く男性も、彼女の面影を忘れられずにいた。11年後、子供は成長し、おまけに音楽に関して天才的な感覚を持っていた。施設から飛び出した彼をめぐる波瀾万丈のお話だ。彼は”音楽に導かれて”運命を切り開いていく。
街で知り合った浮浪児と仲良くなった少年は、浮浪児をストリートミュージシャンとして稼がせる元締め(ロビン・ウィリアムズ)と出会う。ここで音楽の才能を呼び起こす場面がいい。一晩中ギターの弦を叩き続けて曲を奏でることができるようになり、周囲を驚かす。ストリートで、押尾コータローばりに超絶テクを軽々とこなす演奏には圧倒される。警官に追われて逃げ込んだ教会で彼はゴスペルを聴き、パイプオルガンを弾きこなし、楽典の知識を得る。そしてジュリアード音楽院で奨学金を得て学ぶことになるのだ。このあたりの展開は冷静に考えると都合が良すぎるのだが、それでも音楽に対する純粋さと、フレディ・ハイモア君が「チャーリーとチョコレート工場」以上にイノセントな輝きをみせる演技で、不思議と許せてしまうのだ。ラストはまさに”音楽に導かれて”奇跡が起る。
ロックとクラシックをうまく重ねた音楽の使い方も無理がない。90年代にtotoやELPのアルバムでも活躍したキーボード弾きマーク・マンシーナが音楽を担当。これまでも映画音楽のキャリアは長いが、これはよい仕事。ケリー・ラッセルも彼女らしい役柄で魅力的だし、ジョナアン・リス・マイヤーズは「マッチポイント」のとは違って好印象。実の親子とは知らない二人がストリートでギターセッションする場面に僕はやたら感動した。自分の子供と音楽で通じ合えるって、いいなぁ・・と改めて思ってしまった。原題のAugust Rushは、ロビン・ウィリアムズが少年につけた芸名。
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