■「17歳の肖像/An Education」(2009年・イギリス)
監督=ロネ・シェルフィグ
主演=キャリー・マリガン ピーター・サースガード ドミニク・クーパー ロザムンド・パイク
●2009年英国アカデミー賞 主演女優賞
●2009年インディペンデント・スピリット賞 外国映画賞
※結末に触れています。未見の方は注意。
男たるもの、気に入った女性にいろいろと指南して自分の考える"いい女"に育てたいと思うもの。ピグマリオン的な願望と人は呼ぶ。17歳の勉強しか知らない女子高生が年上の男性と知り合って世界が広がっていく・・・というこの映画のあらすじを聞いて、僕はまず「あぁピグマリオン的なお話なのかな」と勝手に思っていた。予備知識をほとんどもたずに映画館に行った僕は、そういう先入観でいたこと、いやそういう物語を期待したこと自体が男のエゴなんだろうか、と思った。
勉強ばっかしのお堅い家に育って、成績も優秀、大学進学を期待されている主人公ジェニー。ある雨の日に知り合った男性デビッドに誘われて、ジャズクラブなど大人の世界を体験することになる。フランス文化に憧れていたジェニーは、同年代女子からするとちょっと大人びた趣味をもっている。次第に彼女は知的でスマートなデビッドに夢中になっていく。ところが彼には秘密があった・・・。ほろ苦い結末の青春映画。
ネタバレ防止のためにあいまいな結論だけ申し上げると、彼女はとんでもない大失恋をすることになる。しかし彼女は立ち直り、復学して大学入学も果たす・・・そう言ってしまえばなんとも優等生的な映画だと思うだろう。ラストでは女の子のクールな強さを感じさせてくれる。この映画の原題は「教育」。机上の勉強と大人になるために彼女が学んだこと。日本題がいかにも青春映画なのに対してこちらはクールな印象。
この映画を観た友人はこう言った。
「女の子って、みんなこんな経験して大人になっていくんだもんねぇ。」
ハリウッドで同じ題材を撮ったら、きっと大学合格の場面はもっとド派手な感動シーンになってるだろうし、エンドクレジット前には生き生きとしたヒロインの笑顔を見せてくれるに違いない。でもそこはイギリス映画。徹底してクールなのね。新しい彼氏に「パリは初めてなのっ♪」って言い切ってしまうジェニーに、女の子の強さ、ちょっと怖さを感じてしまった。
ジェニーを演ずるキャリー・マリガンがどんどん綺麗になっていく。恋は人間を動かす原動力。特に影響を受けやすい十代女子を魅力的に演じて、オスカー候補にもなった。デビッドを演じたピーター・サースガードは、最後まで観るとちょっと怖い。二度目にこの映画を彼中心に見てみると、プチホラーとは言わないがちょっと怖いことだろう。父親役のアルフレッド・モリナが不器用で実は人のいい父親を好演しているし、校長先生エマ・トンプソンも保守的な大人な意見の代表として貫禄をみせる。ジェニーに暴言を吐かれながらも、彼女が変わるのを待った担任教師を演じたオリヴィア・ウィリアムズがいいね。「この言葉を待っていたのよ。」と言う柔らかい表情はとても印象的だ。他にも「マンマ・ミーア!」のドミニク・クーパー、「007/ダイ・アナザーデイ」のロザムンド・パイク(相変わらずお綺麗!)。60年代イギリスが舞台だけど、この後のビートルズ出現がこんなお堅いムードの中にいた若者達には、さぞかし革命的だったんだろうと思えてならなかった。
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