■「守ってあげたい!」(2000年・日本)
監督=錦織良成
主演=菅野美穂 杉山彩子 宮村優子
ひょんなことから女性自衛官となった無気力な現代っ娘が、教育隊の訓練を通じて成長していく様を描く青春映画の佳作。見終わって思ったのは、何故もっとヒットしなかったのだろう?ということ。おちこぼれの主人公たちが、あることをきっかけに目覚めて一般的には突飛だったりバカげていたりするようなことに一生懸命取り組む。そして何かをつかんで人間として大きくなる・・・。これは青春映画の定石なんだけど、そういう意味では「ウォーターボーイズ」と同列の映画だと言えるだろう。ともかく20年弱生きてきて、”オレって今まで何一つ成し遂げたことがないよな~”と自分の人生を振り返った事がある主人公と同年代の男のコ女のコは特に必見!。この映画はきっと勇気をくれることだろう。
自衛官に個性がないから、と集められた3班は元レディースはいる、元女子プロレスラーいる、ミリタリーおたくはいる・・・とおかしな連中ばかり。特に”飛鳥ラングレー”ことみやむーの浮いた演技には注目。冒頭の爆弾処理から始まって募集事務所の方とのやりとり、煙缶(エンカン)や独特な時刻の読み方などの自衛隊用語、そして教育隊での生活の様子など、一般ピープルには興味深い部分もたくさん描かれている。「合格ですよ!」って募集官が自宅に行って家族に「知りません」と言われる光景なんて、実際ありそうで納得。菅野チャンが夜ベッドでポケットボード出してメールしてたりして、あぁ携帯は取りあげられないのか、とか妙なところで感心したり。そういう意味では、お寺ライフの裏側を綴った「ファンシイダンス」に通ずる映画でもあるのだ。
一方で厳しい現実も忘れてはいないところは好感がもてる。土砂災害の現場に偶然遭遇してしまった主人公たちに、「なんだよ、女の自衛官ばっかり来やがって!」とか言われたり。でもこの場面ちょっとくどいのだけれど。あと好きだったのは、「G.I.ジェーン」並みに女捨ててんじゃない?と思われていた班長が、ふとオンナの表情を見せるクライマックスかな。日本の映画事情って変だと思うのだけど、良質な日本映画が観られるのは大都市圏だけなんだよね。地方都市在住だとこんな映画は劇場にかかることすらないし、ビデオ店でVシネマやTVドラマと同じ列に並んでいたりすると”劇場公開作”といくら書いてあっても有り難みってどこへやら・・・なんだよね。まぁここで言うことじゃないのかもしれないけど。
★
この文章を書いたのは2002年。最近シネコンで上映される映画は、この頃とは違って日本映画の比率が高くなっている。おまけにあの頃とは違って外国映画にメガヒットがなかなか出ない。さらにフィルム上映がデジタル上映に切り替わるのは画質や設備の点でよいのだろうが、観られる映画に制約が出ていたりもする。たかだか10数年の話だけど、時代は変わっているんだね。
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