Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

内海の輪

2012-09-17 | 映画(な行)
■「内海の輪」(1971年・日本)

監督=斉藤耕一
主演=岩下志麻 中尾彬 三国連太郎

2012年夏、小倉北区の松本清張記念館では「松本清張と映画」と題した企画展をやっている(10月31日まで)。清張作品は多くの映画やドラマとなってきた。「砂の器」などの傑作もあるけれど、一方で原作者の意図しているのと違うものができあがることもあった。そこで、清張自らプロダクションを設立して「疑惑」など多くの良作を世に送り出した。この展示は清張原作映画の歴史が見られるとともに、清張が育った北九州の地で観て、影響を受けたであろう映画の数々を、当時の資料とともに展示しているのが興味深い。



これと同時に小倉の老舗映画館である昭和館は、清張作品の特集を組む。今回僕が足を運んだのは「内海の輪」。原作は週刊誌に「霧笛の町」のタイトルで連載された小説で、中編集「内海の輪」に表題作として収録された作品。僕はこの原作は知らなかったのでストーリーの予備知識は皆無だった。四国の呉服屋に嫁いでいるヒロイン美奈子は、大学で助教授目前である宗三と逢瀬を重ねていた。宗三は美奈子の義理の弟だったが、夫が他の女に走って別れを告げた晩に結ばれ、その後も関係を続けていたのだった。美奈子は同窓会があると夫を偽り、宗三も岡山での発掘調査を理由に瀬戸内各地を旅行する。ところが旅先で友人に会ってしまった宗三は不倫の発覚と助教授となる自分の身に不安を覚え、また美奈子が宗三の子を身籠もったことを告げられたことで激しく動揺することに。そして・・・というお話。

2時間サスペンス枠でも何度かドラマ化されているお話だが、劇場映画向けのスケール感があるかと言われればそれは今ひとつ。もちろん「砂の器」や「天城越え」などと比較してはいかんと思うが、それでも二人の姿を通じて人の行き過ぎた欲望とエゴの醜さが描かれて、飽きさせる映画ではない。「内海の輪」の見どころのひとつは瀬戸内海の美しい風景。クライマックスの舞台である兵庫県の蓬莱峡(ほうらいきょう)や広島県の尾道、仙酔島など。人目を忍ぶ数日の逢瀬のつもりが結果としてずるずると各地をさすらうことになる二人、次第に険悪なムードになっていく。「愛する人に殺されたら幸せなのかしら」と冗談を言っていた美奈子が、次第に宗三の殺意を感じ取っていく緊張感。しばし姿を消した宗三を探して、切り立った蓬莱峡の崖を泣き叫んで滑り降りる美奈子の姿は強く印象に残る場面だ。若き中尾彬、最後は情けない役柄だけど誠実さの裏にちょっとワルそうな感じがよく出ていて好感。一度彼女の元を立ち去ったくせに戻ってきて、「忘れ物をしたゼ」と(スギちゃんに似合いそうな)キザな台詞の後、岩下志麻の唇にブチューッと豪快なキスをする。そこはシリアスな場面のはずが何故か笑いがこみ上げてきた・・・失礼。



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