■「ハナ 奇跡の46日間/Korea」(2012年・韓国)
監督=ムン・ヒョンソン
主演=ハ・ジウォン ペ・ドゥナ ハン・イェリ チェ・ユニョン
1991年に開催された卓球の世界選手権に、韓国と北朝鮮が統一チームで出場したという事実に基づく人間ドラマ。最初は仲違いを繰り返していた両国の代表選手たち。だが、次第に互いを認め合い、真にひとつのチームになって中国代表に挑む姿を感動的に描かれている。この統一チームはその後再び組織されることはなく、友情で結ばれた選手たちは93年の試合以降、再会を果たせていない、という現実がエンドクレジット前に示される。しかしこの映画を観た後で、胸に残るのは民族分断の悲しみよりも、人は理解し合うことができるのだ、という爽やかな感動。この映画が訴えるメッセージも国境を超えるものであって欲しい。
突然組織されることとなった統一チームに南北の選手たちがとまどう姿が描かれる。隊列を組んで行動するような北の選手たちに対して、自由奔放な言動の南の選手たち。北の選手たちは外部との関わりを厳しく禁じられている。両国の違いを対比させて描写している前半は、人と人を隔てる壁を取り払おうとする努力が描かれる。統一チームを成功させたい政治的な事情もあり、両国の監督やコーチは選手たちを近づけようと努力する。二人三脚めいたことをやったり、バスや食事の席をシャッフルしたりして選手同士の結束を固めようとする姿はおかしくもあり涙ぐましくもある。そして選手たちは次第にお互いを認め合うようになり、こっそり酒を酌み交わしたり、淡い恋心も芽生え始める。ところが、それを再び隔ててしまうのも政治的な事情。韓国選手が渡した品物が問題視されたり、韓国選手の友人であるフランスチームコーチと接触したことが、亡命への行動だと疑われてしまったり、女子選手の恋心は国境という壁につぶされてしまう。準決勝に進んだ統一チームだが、政治的な圧力で北朝鮮選手がホテルから出られなくなり、韓国選手だけで戦うことになってしまう。ここで終わらせるわけにいかない、と奮起する選手たち。それまで冴えなかった選手の大活躍で、いよいよ強敵中国との決勝へ。しかし北の選手たちはいまだに動けずにいた・・・。
決勝戦へ向かう前、韓国選手たちが雨の中座り込みをする場面。強く意志を伝える手段としては、わかりやすい行動だし自然かなとは思うのだが、韓国時代劇で王宮殿前で座り込みする場面をよく目にするだけにどうしても重なってしまう。手に汗握る決勝戦は最大の見どころだ。代表選手の傍若無人ぶりや、審判と中国チームの不正が盛り込まれたり、中国はかなりステレオタイプの悪役。「チェオクの剣」と「恋する神父」以来僕のお気に入りハ・ジウォンは、アクションもこなせる女優さん。スポーツ選手役はまさにイメージのままで素敵だ。北朝鮮のエースを演じたペ・ドゥナは、ニコリともしない無愛想な役柄なのだが、次第に心を開いていく様子が実にうまい。統一チーム優勝から2年後の世界選手権で対戦する場面、二人の表情が何よりも印象的だ。それは選手としてお互いの人と実力を認め合った二人が、卓球台を挟んで試合と再会を楽しんでいる気持が伝わってくるからだ。演出もかなり直球でベタな映画という感想もあるだろうが、これくらいストレートに描かないと、人はお互い認めあえるというせっかくのメッセージと、小さな統一が成し遂げられたという感動が薄れてしまうのかもしれない。
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