■「カメラを止めるな!/One Cut of The Dead」(2017年・日本)
監督=上田慎一郎
主演=濱津隆之 真魚 しゅはまはるみ
自主製作でゾンビ映画を撮っていた現場で、本物のゾンビが襲いかかる。
犠牲者となった者は次々とゾンビ化していく。
映像にリアルを求める監督はそれでもカメラを回し続ける。
狂気に満ちていく惨劇の場。
彼らの運命は・・・。
監督俳優養成スクールのワークショップとして製作された低予算映画に世間が熱狂している。
確かにかつて例がないヒット作だ。
ネタバレなしでこの映画の面白さを語るのは困難。
だけど、この映画が他の映画と何が違うのかと言えば、作り手の情熱が見えることではないか。
もちろん映画全体の独特な構成や展開も、伏線回収、観客に訴えるタイミングの良さは見事。
しかも最後にはジーンとさせる場面も用意されている。
だけどそれ以上にグッとくるのは、
スタッフやキャストのアイディアや工夫が、
巨額の費用を投じて技術に頼った映画に負けない面白さを発揮することの爽快感。
今や編集技術でワンカット(途切れなく撮影すること)のように見せることは可能だ。
最近なら映画全編をワンカットに見せた「バードマン」の例もある。
だけど、手持ちカメラとアイディアだけで長回しのシーンを撮るには、
並々ならぬ努力と綿密な計画とそれを実行する度胸が必要だ。
「カメラを止めるな!」の37分に及ぶワンカットのシーンは、
カメラのレンズに血のりが飛んだり、
それまで走り回っていたカメラが突然横倒しになるハプニングも残している。
それが意味するものを知った時に、僕らはそうだったのか!と納得するだけでなく大笑いさせてもらえる。
ハリウッド大作やイケメン並べたお気軽日本映画よりも、この低予算映画が動員や支持を集めてるのは、
なーんか公立高校が大活躍する高校野球みたいで面白いじゃない。
確かに見方によっちゃチープな映画かもしれないけど、
暑い今年の夏に、なんか"頑張ってる映画"観たという記憶が多くの人に刻まれるのは嬉しいことだ。
とにかくこの映画は、予備知識なしでスクリーンに向かって欲しい。
映画の撮影はアイディアなくしてできない。
ワンカット撮影がこんだけ話題になったので、
アルフレッド・ヒッチコック監督の密室サスペンス映画「ロープ」を是非観て欲しいな。
フィルムの入れ替えが必要だった時代に、長ーいワンカットに挑んだ意欲作だぞ。
映画『カメラを止めるな!』予告編