◾️「シャイニング/The Shining」(1980年・イギリス)
監督=スタンリー・キューブリック
主演=ジャック・ニコルソン シェリー・デュバル ダニー・ロイド スキャットマン・クローザーズ
初めてこの映画を知ったのは中学生。映画館で予告篇を観たのが最初だ。エレベーターから血が流れ出してフロアを染める無言の予告編。何じゃ、こりゃ。震え上がった。何年か経って本編を観て、ジャック・ニコルソンの凄み、恐怖にゆがむシェリー・デュバルの表情、キューブリック作品のお約束である一点消去の構図に引き込まれた。他のホラー映画とは全然違う。ショッキングでグロテスクなビジュアルで観客を追い詰めるのではない。主人公一家と同じく閉鎖的な空間に閉じ込められて逃げ場がない。観客を精神的に追い詰める映画。だが今思うとこの映画がいちばん怖かったのは、"訳がわからない"ことだったように思う。言うまでもなく、キューブリックは映像で語る映画作家で、当時の僕はまだ「博士の異常な愛情」しか監督作を観たことがなかった。「シャイニング」では、明快な答えは示されず、不気味な音楽と鼓動のようなビートが通奏低音のように響きき続け、たただただ不安な気持ちにさせられる。それがただひたすらに怖かったのだ。
原作からの大きな改変があることは後に知った。家族を守るために悪霊の犠牲となる原作に対して、徹底した悪として描かれるジャック。ラストのオチは映画だけに付け加えられた。スティーブン・キングの原作派の人々からは嫌われているし、キューブリックがそもそもホラー映画撮ったことがないからこの映画を認めないという方もいらっしゃる。僕はホラー映画を熱心に観る人ではないから、「シャイニング」がホラー映画の文法に沿っているかどうかはわからない。でもこれだけしっかり怖い思いをさせるし、そのくせ観終わった後で強く印象に残る場面の数々はとにかく絵になる。映画として優れた作品であることに間違いはない。
イオンがキューブリック映画作品のデザインの衣料を販売していて、「2001年宇宙の旅」「時計じかけのオレンジ」「フルメタルジャケット」のシャツをこれまでふーん…と眺めていたのだが、先日「シャイニング」がデザインされた男性下着を発見。ボクサーブリーフにあの"斧"がデザインされた、縮んじゃいそうな(笑)微妙な悪趣味感が気に入って買ってしまった。「バリー・リンドン」か「ロリータ」デザインのTシャツ出してくれたら絶対買うけどなww