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キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

アガサ・クリスティー ねじれた家

2019-12-08 | 映画(あ行)


◾️「アガサ・クリスティー ねじれた家/Crooked House」(2017年・イギリス)

監督=ジル・パケ・ブランネール
主演=グレン・クローズ マックス・アイアンズ テファニー・マルティニ テレンス・スタンプ ジリアン・アンダーソン

クリスティ原作の映画はピーター・ユスチノフ主演のポアロものを中心にあれこれ観ているけど、不勉強なことに原作は未読が多い。本作は初めて映画化されているようだ。

ギリシア移民から成功した大富豪レオニダスが毒殺された。孫娘ソフィアは元恋人の私立探偵チャールズに捜査を依頼する。莫大な遺産を巡って欲と妬みと憎しみが渦巻く館。誰しもに殺害の動機がうかがえる。そんな中、次の殺人が起こる。

キャストが多いミステリー映画は相関関係を頭に入れるのに戸惑うことがよくあるが、かつての「××殺人事件」と題されたクリスティ映画の派手なオールスターキャストは、観客の理解を助けてくれて、その迷いはあまり感じないものだ。この「ねじれた家」は過去のクリスティ映画化作品のような豪華キャストではないけれど、登場人物たちそれぞれの個性と物語上での言い分がハッキリと描かれているため、字幕で名前を見て「誰のことだっけ?」と迷うことはなかった。

犯人が殺人に至った動機とそこに至った気持ちを考えると背筋が寒くなる。ねじれた人々が共に暮らすねじれた家の空気、緊張がほどけない日常。タイトルの出典はマザーグース「Crooked Man」。谷川俊太郎さんはCrookedを「ひねくれた」と訳している。それぞれの損得しか頭になく、お互いの気持ちを察することもできないこの一家の様子を見ていると、「ひねくれた」という表現がひどくしっくりくる気がする。また、エリア・カザン監督がギリシア移民を描いた「アメリカ アメリカ」を最近観たものだから、眼をギラつかせてなりふり構わず主人公が生きてきたその先を、レオニダスに重ねてしまう。そして決して救いがあるとは思えない物語の結末が待っている。

一家を仕切る大伯母を演ずるグレン・クローズはまさに貫禄。「Xファイル」のジリアン・アンダーソン、久しぶりのジュリアン・サンズ、テレンス・スタンプが登場すると空気が変わる。主人公チャールズを演じたマックス・アイアンズは、名優ジェレミー・アイアンズのご子息。

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