2008年頃。講談社の青い鳥文庫をうちの子はよく読んでいた。「ちち(注・"ちち"と呼ばれている)も読んで!」と言われて、この「若おかみは小学生!」や「黒魔女さんが通る!!」シリーズを読んだよな(懐・詳しくはこちら)。「黒魔女さん」の感想をブログにアップしたら、コメント欄に小学生からの書き込みが相次いでリアクションに困ったことも(笑・こちら)。ともかく、「若おかみ」シリーズは当時小中学生女子を中心に絶大な人気作だった。
その「若おかみは小学生!」の劇場版アニメ。京アニ作品で知られる吉田玲子の脚本は、ロングセラーの児童文学を、単なる頑張り屋さん女子の話にとどめず、全世代に刺さる感動ポイントを散りばめる。温泉郷に受け継がれていく古き良きものと変わりゆくものの対比は見事だし、世代の違う登場人物が心を通わせていく様子は何より心温まる。「神から与えられた湯は何者をも拒まない」というポリシーが物語の最後まで貫かれて、観ている僕らの予想を遥かに超えた過酷な状況さえも幸福な感動をもたらしてくれるのだ。涙腺直撃。
主人公おっこがなぜ老舗旅館で働くことになるのかが語られる衝撃的な冒頭から、登場人物の性格描写までとにかく無駄がない。また、途中出てくるPTSDの描写やクライマックスの心理描写にも逃げがない。おっこと仲良しになり成長を支えてくれる幽霊たちや、大旅館のピンフリ令嬢(水樹奈々さすがの好演)なども、アニメだからできる素敵なキャラクターたち。
一見明るい物語に「死」に向かい合う現実が織り込まれて、大人の鑑賞にしっかり耐えるだけの秀作。幽霊たちのファンタジー色があるからといって、ナメてはいけない。こういう作品があるから、アニメ観るのをやめられない。