Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

カセットテープ・ダイアリーズ

2021-04-10 | 映画(か行)





◼️「カセットテープ・ダイアリーズ/Blinded By The Lght」(2019年・イギリス)

監督=グリンダ・チャーダ
主演=ヴィヴェイク・カルラ クルヴィンダー・ギール ミーラ・ガラトナ ネル・ウィリアムズ

イギリスで暮らすパキスタン人一家の少年が、ブルース・スプリングスティーンの歌で自分に目覚める爽やかな成長物語。繁忙期の慌ただしさでちょっと疲れてたから、ちょうどやってた映画館で観られなかったのが悔しいーっ!新作DVDで鑑賞。

ポップスやロックの歌詞を聴いて、この映画の主人公のように何か啓示を受けたような気持ちになったことが幾度もある。それを日々を送る為の聖エルモの灯みたいに思って生きてきた。だから、この映画の主人公にはとても共感できる。それに文筆業に憧れるところも、あの時代の自分が重なって見えてしまう。

映画の舞台となった1987年の僕は、まさにそのど真ん中にいた。バックに流れる当時のヒット曲(Cutting CrewやLevel42、一瞬だったけどa-haを使ったセンス、素晴らしい!)カレッジラジオ気取りの校内放送、壁に貼られたポスターにも当時の小ネタが満載で、80's洋楽好きなら楽しくて仕方ないだろう。
「ワム野郎にバナナラマ女子」
「Tiffanyがゴミなのは私も知ってるわ」
もう笑い転げそう。

でも映画は厳しさを描くことも忘れない。サッチャー政権下の大不況。移民問題にからむ対立が当時からいかに根が深いものだったのか。父親に代表される異文化の壁を乗り越えようとする主人公のもがきと挫折、反抗と気づき。もし自分が若い頃にこの映画に出会っていたなら、純粋に主人公たちとストリートを駆け抜けたい!と思っただけだったろう。でもこの年齢で観たからこそ、父と息子、家族目線にもじわーっと感動できた気がする。この手の青春映画にはお約束とも言える、いちばんの理解者である一歩引いた女子の存在も大きい。彼女のその後も気になるけど、こういう存在の女子はその後が描かれないんだよね。

ブルース・スプリングスティーンの「Born In The U.S.A.」は、高校時代だった。「ベストヒットU.S.A.」の録画であの曲のPVを見ているタイミングで、親父が居間に入って来た。そう、この映画で主人公がThe Riverをテレビで見ながら歌ってる場面とまったく同じ。

👨🏻「勉強もせんでなん見よんのか」
😏「ブルース・スプリングスティーン。」
ちょうど"サイゴンに黄色人種を殺しに行った"とかいう歌詞が出てきた。
👨🏻「なんちゅう詩だ。とんでもない歌手だな。」
🙂「これはベトナム戦争の帰還兵を歌ったものなんだ。そんな国に俺は生まれちまった、という悲しみを歌ってるんだよ。」
👨🏻「…そうか」
しばらく一緒にPVを見て、親父は言った。
👨🏻「…いい歌だな。」

「涙のサンダーロード」を歌うミュージカルめいた場面、最高。



映画『カセットテープ・ダイアリーズ』予告編


コメント
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