Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

マネキン

2022-04-29 | 映画(ま行)

◼️「マネキン/Mannequin」(1987年・アメリカ)

監督=マイケル・ゴッドリーブ
主演=アンドリュー・マッカーシー キム・キャトラル G・W・ベイリー ジェームズ・スペイダー

アンドリュー・マッカーシーは、80年代に"ブラット・パック"と呼ばれた青春映画スターたちの一員として括られる存在だ。しかし出演作のどれもが、タイプの違う誰かと比較される対象だったり、グループの中でもどこか独自路線だったり、悪く言えばやや浮いてる存在に見えた。主役の映画でも共演者の誰かの熱演で印象に残らない。ちょっとかわいそうなイメージがある。だけど僕はけっこうアンドリューが好きで、「セント・エルモス・ファイアー」の文筆家に憧れる帽子がトレードマークの地味な青年に、ちょっと自分を重ねていたのだ。

さて。そんなアンドリューの主演作「マネキン」。今回は対等の立場になる共演男優がいない。やんちゃなエミリオ兄ちゃんもいなければ、なりきり演技で場をかっさらうなんちゃらJr.もいない。レギュラーメンバー的な共演者は、ちょい悪上手のジェームズ・スペイダーくらい。さあアンドリュー!弾けちゃってくれ!そんな僕の期待どおりのアンドリューが見られる。公開当時、僕は硬派な映画ファンを貫いてこの手のラブコメを避けていたから、今回が初鑑賞だ。

これまでアンドリューが演じてきた優等生タイプとは違うちょっとダメ男。しかし、芸術家志望で変なこだわりがあるもんだから仕事もうまくいかないキャラクターは、周囲の人々と違った感覚をもつこれまでのキャラとも通ずる。映画冒頭のチープなエジプトの場面から、お気楽80年代映画の空気感。改めて今観ると微笑ましくて楽しいじゃない。唐突に人間になるマネキンのエミーは、彼の前でしか人間の姿になれなくて、他の人にはただのマネキン人形にしか見えない。彼は人形を恋人にする変わり者として周囲から見られるのだが、気味悪がられるどころか周囲が受け入れてる感じがちょっと違和感。同僚のオカマが性的嗜好の一つとして認めてくれる描写はいい。今のジェンダー感覚でリメイクしても面白いかも。

後に「SATC」で人気者になる若きキム・キャトラルも見どころの一つ。夜のデパートを舞台に衣装も取っ替え引っ替え、踊ってはしゃいでイチャイチャして。閉店後のデパート店内デートって、古くはチャップリンの「モダンタイムス」にも登場する。誰にも邪魔されない素敵なシチュエーション。朝目覚めて注目を浴びる…って展開も同じだな。

あの頃の僕なら冷めて見てたお気楽な結末も、今なら微笑ましく思える。そんなラストシーンを飾るのは、Starshipの大ヒット曲Nothig's Gonna Stop Us Now(愛は止まらない)。いい曲だ。

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夕陽に向って走れ

2022-04-29 | 映画(や行)

◼️「夕陽に向って走れ/Tell Them Willie Boy Is Here」(1969年・アメリカ)

監督=エイブラハム・ポロンスキー
主演=ロバート・レッドフォード ロバート・ブレイク キャサリン・ロス スーザン・クラーク

キャサリン・ロス目当てで初めて観賞。生粋のハリウッド生まれのキャサリン・ロスは、ネイティブアメリカンの娘を演じている。役者の出身や血筋まで配慮を求める今のハリウッドと違って、こうしたキャスティングが可能だった時代だ。

ウィリー・ボーイと呼ばれる青年がネイティブが暮らす居留区に戻ってきた。かつて恋人ローラの父とトラブルを起こしたウィリー。再びローラに近づくが厳しい視線が注がれ、銃口が向けられる。居留区を見守る立場の監督役のエリザベスはローラの身を案じていた。保安官クーパーは、エリザベスと男女の仲であったが、それはあまりにも一方的で彼女には屈辱的な関係だった。ローラが真夜中に逢引きしているところを襲われたウィリーは誤って彼女の父親を殺してしまう。逃げる二人をクーパー保安官が追い詰める。

名作「明日に向かって撃て!」と同年に製作された映画で、ロバート・レッドフォードとキャサリン・ロス共演というだけで嬉しくなるのだが、こんなゲス野郎のレッドフォードを初めて観た。それに加えて恋人を思ってるのかプライド重視なのかわからんロバート・ブレイクにもイライラさせられる。それでも破滅に向かって突っ走るような、当時のアメリカンニューシネマ的結末は悪くない。特にクライマックス、どこから撃ってくるのかわからない緊張感は、他の映画では味わえない名場面。

ネイティブだけでなく、女性に対する差別も盛り込んだ作品。そして、窮屈な生き方しかできなくなった時代の西部劇でもある。ここには、赤狩りでハリウッドを追われたポロンスキー監督の思いが込められているのかもしれない。



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