◼️「マネキン/Mannequin」(1987年・アメリカ)
監督=マイケル・ゴッドリーブ
主演=アンドリュー・マッカーシー キム・キャトラル G・W・ベイリー ジェームズ・スペイダー
アンドリュー・マッカーシーは、80年代に"ブラット・パック"と呼ばれた青春映画スターたちの一員として括られる存在だ。しかし出演作のどれもが、タイプの違う誰かと比較される対象だったり、グループの中でもどこか独自路線だったり、悪く言えばやや浮いてる存在に見えた。主役の映画でも共演者の誰かの熱演で印象に残らない。ちょっとかわいそうなイメージがある。だけど僕はけっこうアンドリューが好きで、「セント・エルモス・ファイアー」の文筆家に憧れる帽子がトレードマークの地味な青年に、ちょっと自分を重ねていたのだ。
さて。そんなアンドリューの主演作「マネキン」。今回は対等の立場になる共演男優がいない。やんちゃなエミリオ兄ちゃんもいなければ、なりきり演技で場をかっさらうなんちゃらJr.もいない。レギュラーメンバー的な共演者は、ちょい悪上手のジェームズ・スペイダーくらい。さあアンドリュー!弾けちゃってくれ!そんな僕の期待どおりのアンドリューが見られる。公開当時、僕は硬派な映画ファンを貫いてこの手のラブコメを避けていたから、今回が初鑑賞だ。
これまでアンドリューが演じてきた優等生タイプとは違うちょっとダメ男。しかし、芸術家志望で変なこだわりがあるもんだから仕事もうまくいかないキャラクターは、周囲の人々と違った感覚をもつこれまでのキャラとも通ずる。映画冒頭のチープなエジプトの場面から、お気楽80年代映画の空気感。改めて今観ると微笑ましくて楽しいじゃない。唐突に人間になるマネキンのエミーは、彼の前でしか人間の姿になれなくて、他の人にはただのマネキン人形にしか見えない。彼は人形を恋人にする変わり者として周囲から見られるのだが、気味悪がられるどころか周囲が受け入れてる感じがちょっと違和感。同僚のオカマが性的嗜好の一つとして認めてくれる描写はいい。今のジェンダー感覚でリメイクしても面白いかも。
後に「SATC」で人気者になる若きキム・キャトラルも見どころの一つ。夜のデパートを舞台に衣装も取っ替え引っ替え、踊ってはしゃいでイチャイチャして。閉店後のデパート店内デートって、古くはチャップリンの「モダンタイムス」にも登場する。誰にも邪魔されない素敵なシチュエーション。朝目覚めて注目を浴びる…って展開も同じだな。
あの頃の僕なら冷めて見てたお気楽な結末も、今なら微笑ましく思える。そんなラストシーンを飾るのは、Starshipの大ヒット曲Nothig's Gonna Stop Us Now(愛は止まらない)。いい曲だ。