◼️「ライトスタッフ/The Right Stuff」(1983年・アメリカ)
監督=フィリップ・カウフマン
主演=サム・シェパード スコット・グレン フレッド・ウォード エド・ハリス デニス・クエイド
宇宙開発競争で米ソが火花を散らしていた1950年代、アメリカのマーキュリー計画の舞台裏を描いた大作。80年代育ちとしては観ておくべき作品だと思うのだが、今回が初鑑賞。屈強な野郎ばっかりの映画だもの、当時の僕はそこで敬遠したんだろな(恥)。
ソビエトに先を越されてばかりの宇宙開発に、焦り始めたアメリカは有人宇宙飛行を実現させるべく、プロジェクトに参加する宇宙飛行士を集める。音速の壁に挑み続けてきたテストパイロットから志願者を募る。選ばれた7人は、困難な任務に挑むと決まっただけでまだ何もやってないのに英雄視される。その一方で開発者たちは彼らを宇宙船を操縦する役割だとは思っていない。そのギャップは次第に埋まり、計画の裏側で男たちが思い悩みつつもタフに向き合う様子が感動的だ。
シリアスな場面も多い中、散りばめられたユーモラスな場面が楽しい。初めての有人飛行の発射前に、尿意を堪えるパイロットに管制室は我慢しろと言い続けるのだが、そこにはウォーターサーバーで水を汲んだり、コーヒーをすする職員の姿が重なる編集のセンス。メキシコ人をからかうコメディアンを真似るパイロットの一人が、メキシコ人のスタッフから逆襲される場面も面白い。
「スペース・カウボーイ」でクリント・イーストウッドが「グレン議員も飛んだゼ」と高齢の自分たちが認められないことに反論する場面がある。「ライトスタッフ」でエド・ハリスが演じたのが、マーキュリー計画の一員で、後に77歳でスペースシャトルに搭乗する若き日のジョン・グレン。
ところで、この映画が製作されたのは冷戦真っ只中の1980年代。「ライトスタッフ」の後数年間には、名だたる反ソビエト的な作品が登場する。同じ年には防衛システムが少年にハッキングされる「ウォー・ゲーム」、翌年はソビエトがアメリカ本土に攻めてくる「若き勇者たち」、その翌年が少年がミグを撃ち落とす「アイアンイーグル」、ボクシングの米ソ対決「ロッキー4」。そして「トップガン」と続く。「ライトスタッフ」では、ロケットの炎を向こうで高笑いをするソビエト人がなんとも不気味な印象で映される。これも時代か。
ラストのイェーガーの勇姿。一事を貫く男のカッコよさにシビれる。