◼️「マッキントッシュの男/The Mackintosh Man」(1972年・アメリカ)
監督=ジョン・ヒューストン
主演=ポール・ニューマン ドミニク・サンダ ジェームズ・メイスン
ボンド映画みたいなスパイアクションを期待すると、この映画に肩透かしを喰らうだろう。どちらかと言うと、ジョン・ル・カレ原作の渋くって生々しいスパイの実態めいた映画だとは言える。しかし、なんとも歯切れが悪い。アイルランドの荒涼たる風景にスパイ映画に僕らが求めてしまう派手さがないからだろうか。
それでも中盤からはカーチェイスもあれば、政界の大物に迫るクライマックスも用意されている。モーリス・ジャールの音楽も印象的だし、評価される要素はいろいろあるのに、どうも気持ちが盛り上がらない。スミス夫人を演ずるドミニク・サンダが映画に華を添えてくれるのだけど、一般的なスパイ映画に出てくる女性のようにキャーキャー助けを求めたりもなく、あの激しいカーチェイスに顔色ひとつ変えない冷静さ。
舞台をマルタ島に移すあたりから、彼女が主役でも面白いのでは…とだんだん思えてきた。そして賛否両論のラスト。やっと追いつめた悪役にはぐらかしの国会答弁のように言いくるめられてしまう、われらがポール・ニューマン。
え?え?ええー?お前、それはないだろう…っと思っていたら響く銃声。
最後までカッコいいのはドミニク・サンダだった。今どきのハリウッドの作風ならば、彼女の感情をもっと露わにさせて、ポール・ニューマンへの失望をもっと強調したところだろう。そこを「あんたも殺したいわ」のひと言で締めくくるクールさ。この結末だから、ますます歯切れが悪く感じるのかもしれないけど、この結末でなかったらこの映画の印象はもっともっと地味になっていたに違いない。それにしてもあの刑務所の囚人服、なんてカッコいいんだろう。