◼️「ハイジ/Heidi」(2005年・イギリス)
監督=ポール・マーカス
主演=エマ・ボルジャー マックス・フォン・シドー ジェラルディン・チャップリン ダイアナ・リグ
ヨハンナ・スピリの原作の実写映画化。アルムおんじは名優マックス・フォン・シドー、ロッテンマイヤーさんはジェラルディン・チャップリン、クララのおばあさまが元ボンドガールのダイアナ・リグという大物を配したキャスティング。ハイジ、クララを演じたお嬢様方もイメージ損なうことなく好演しており、堅実なつくりの実写化になっている。
されど2時間弱の尺に、デーテおばさんに連れてこられるところから、歩けるようになったクララが父親と抱き合うクライマックスまでが、ギュッと詰め込まれている感はどうしてもあるので、じっくり見てきた高畑勲ハイジ世代には、駆け足でストーリーを追っているように思えて仕方ない。
だが、アルプスやデルフリ村の様子はハイジの物語の世界に観ている僕らを引き込んでくれるし、夢遊病になってしまうハイジの痛々しさ、アルムおんじの素性やフランクフルトから戻ってきたハイジにも冷たく接する頑なさは、実に丁寧に描かれていて好印象。
全体としては期待どおりで、それ以上ではない映画かもしれない。「クララが…立ってる!」はおんじが言ってはいけないと思うし、乳しぼりはしないし、ペーターがやたら暗いのがちょっと残念。だけど、おんじが自分の死後を口にするところには現実味があるし、ハイジが「おじいさん、愛してるわ!」と言うラストシーンは成長を感じてなかなか素敵。
スピリの原作の後日談を他の作家が書いた続編があるようだ。その映画化でチャーリー・シーンがペーターを演じた「アルプスを越えて」を観てみたい。