■「宇宙戦争/War Of The Worlds」
(スティーブン・スピルバーグ/2005年・アメリカ)
主演=トム・クルーズ ダコタ・ファニング ティム・ロビンス
子供の頃、小学校中学年向け位の少年少女文学全集みたいな本が家にあった。けっこう本好きな子供だったので親が奮発して買い与えてくれたのだ(感謝)。妹は「秘密の花園」や「若草物語」を繰り返し読んでいた。その中で僕が夢中になって繰り返し読んだのは3冊。ジュール・ベルヌ「海底二万里」と「空飛ぶ戦闘艦」、そしてH・G・ウェルズ「宇宙戦争」。夏休みの読書感想文の宿題で自由課題だったときに、迷わず選んだのも「宇宙戦争」だった。僕としてはとても思い入れのある原作。これをCG全盛の今、スピルバーグがどう映像にするのか。そこにまず興味があった。
スピルバーグはウェルズの原作がおそらく大好きに違いない。結末は大胆に変えられちゃうのか?「インデペンデンス・デイ」みたいになったらどうしよう?と心配したけれどそれは杞憂だった。「ジョーズ」や「ジュラシック・パーク」、「未知との遭遇」がうまかったのは危難が次第に近づいていくことを表現するところ。ところが今回は大した予兆も見せない。確かに嵐とか雷とか起るけれど、以前の作品と比べると、唐突な印象を受ける。突然得体の知れないものが出てきて、いきなり街が破壊されて・・・。この変化は何だろう。これはやはり同時多発テロの影響。逃げまどう市民、崩れ落ちる建物はあの記憶を呼び起こすはず。観客は異星人への畏怖と怒りに満ちることになる。戦い続ける州兵たちの姿も痛々しいが、原作を尊重したラストには時代が時代だけにエコロジカルなメッセージを見るかのようでもある。ともかくアメリカ万歳!みたいな映画になっていないところが好感。
トム・クルーズは叫ぶ、走る、泣く、わめく・・・これまでのヒーロー像はどこへやら。しかも不器用な父親役ってところが面白い。ダコタちゃんが歌ってと言う子守歌を知らないトムが、ビーチボーイズのLittle Deuce Coupeを歌う。ここに僕はかなりグッときました(つーか涙腺ゆるみました)。子供にこれまでかかわってこなかった遊び人の父親。子守歌も歌えない彼が歌ってあげられるのがお気楽なビーチボーイズの曲。でも歌詞にもあるように”お前は僕の宝物”。そこを娘に伝えたいその一心ってのがいいのね。しかし最後は三本足に手榴弾投げ込んだりと大活躍。あ、やっぱりトムの映画だ。
地下室に隠れているときに触手のようなものが探ってくる場面、原作でもとても印象的なところだ。僕は原作でここを読むのがすごく怖かったのだが、スピルバーグもおそらく同じ思いがあるのだろう。地下室のシーンの緊迫感はこっちまで息が詰まりそう。そういえば「マイノリティ・リポート」に出てくる追跡メカ”スパイダー”も目が追いかけてくるもの。その原点って、実は「宇宙戦争」にあるのかもね。そうそう、見終わって思ったことがもうひとつ。「インデペンデンス・デイ」で侵略者がウィルスに(ネタバレ・反転させてね)にやられちゃうのも、実は古典たる「宇宙戦争」に対するオマージュだったのかな?。
(追記)・・・原作やジョージ・パル監督の映画版が前提としてあることを知っておかないと、古くさい映画に見えちゃうだろうな。でもハッキリ言う。そこがいいんです!。
↓文中に登場した映画とビーチボーイズのLittle Deuce Coupe
スペクタクルの迫力に見入ってしまいましたが、最後まで見た感想としては、うーむ、ちょと・・・
やはり、原作やジョージ・パル監督の映画版を体験していないので、お勉強しなきゃいけないかな。