創元SF文庫 2014年
「母のいる島」
SFとはリアルとのせめぎ合いとも言えると思うのだが、この
短篇の設定15人姉妹の女だけってのはいかにもムリがある。
ここまでいくと、まずその時点で話しに入っていけない。リア
リティは大事だ。いかに不思議なことをリアルっぽく書くかが
テクニックとして試されると思うのだが。ここは妥協して「六人」
くらいでも良かったのではないかと思うのだ。話しを過剰に
し過ぎるのが、この人の悪いところだ。悪ふざけが過ぎるというか。
そこがおもしろいところでもあるんだが。
芥川賞を獲られている。ネット上での評価はちょっと可哀想に
なってしまうほどひどいものだった。うーん。
「おやすみラジオ」
途中半ばまでは、これは、と思って、すごく楽しく読んでいたのだが
ラストでうむむ、と唸って、「?」となってしまった。
リアルの境界がなくなり、ネットで操作された人々が比奈子たちを
襲うってのも、むむむ、と思って、ムリがあるのでは、と思ってしまった。
ブログを子供が書いていて、その内容が成長するラジオなら、そこいら
へんをもっと引き延ばされた方がよかったのでは、と思う。いくらでも
ストーリー展開の選択肢はあったはずである。
これが新感覚のSFなのか、と思って、そうかそうか、と言って、手放しで
喜ぶべきなのか? これは新たなホラー小説的な? いや、違うな。
SFはいつも新たな挑戦をしていくべきなのだからして、これでいいのだ。
と、結局は納得してしまったおれっちだった。……合掌。
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