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分身 (集英社文庫) 東野 圭吾 集英社 このアイテムの詳細を見る |
集英社文庫の企画で、この本は、北方謙三氏推奨の本ということになっていました。
未読のものだったので、読んでみました。
作品としては1993年、ちょっと古いのですが。
ここには二人の女性が登場します。
1人は函館生まれ、札幌で暮らしている女子大生、氏家鞠子。
もう1人は東京で暮らす小林双葉。こちらも女子大生。
何のつながりもないはずのこの二人、実は、瓜二つ。
この謎は、二人の出生のいきさつにさかのぼるのですが・・・。
二人はそれぞれの疑問を探るため、
お互いの存在も知らないままに、それぞれの地へ旅にでます。
ここまでではいろいろ考えられますね。
実は父親が同じとか、母親が同じ・・・。
または双子が生まれてすぐに引き離された・・・。
そこがやはり東野圭吾なのですが、下敷きに「科学」があります。
現代医学の危険な領域・・・。
といえばピンとくるでしょうか。
実はこの二人、ある人の細胞を元に作られた、クローンだというのです。
全く同じDNAを持つ二人。
まさに分身なんですね。
この物語は、そういう、医学の脅威をテーマにしたものではあるのですが、
それ以上に、自分自身がクローンと知ってしまった二人の女性の心。
自分の存在自体が否定されたようなショック、
ゆれる心を細やかに描いた作品となっています。
現実には、今、倫理的問題から人間のクローンを作ることはご法度ですね。
・・・でも、この物語のように、どこかでこっそり行われているのかも・・・。
こうしたときに、そうして生まれてしまった人のアイデンティティはどうなるのか・・・。
これはやはり神の領域で、人が立ち入る場所ではないようです。
ラストの舞台が富良野なんですが、
なるほど、最後の情景を書きたいために、
あえて、富良野に持ってきたのがわかります。
良いシーンです。
満足度★★★★☆